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柑橘と珈琲

オレンジとコーヒーはあわない、と宮内さんが笑いながら仰った。半覚醒の脳みそはむくりと起き上がる。

そもそも今日なんて、昼寝をしてから向かった四谷の街は、眠気まなこの頭で歩けば棒に当たるくらいの気弱さで、ただ真っ直ぐ太い道が続く新宿の大通りに、冬の寒さが現実を溶かしてしまったように滲んでいた。そんな日だった。

小さな四谷のギャラリーに飾られた写真は、宮内さんの少女のような笑顔がたくさん縁取られ、家族の風景と進む時間軸の頼りなさを誇らしく感じるような、そんな写真たちが柔らかく切り取られていた。空気のひんやりとした冷たさに反して、太陽がいっぱい、だった。

お空の上に置いてきた脳みそは、身体の緊張なんてお構いなしにゆっくりと惰眠をむさぼりつつ、まだまだ、なんて言っていたのに、オレンジと珈琲はあわない、の一言で確信して起き上がる。

オレンジは太陽で珈琲はお月さまだからそりゃそうなんだぜ、とか言ってて。

オレンジと珈琲は会えない、いつまで経っても追いかけっこを終わらせる気はない。いつか会う時はこの世が終わる時なんだぜ、とか言ってて。

#詩


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