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とけていく

お盆の時期に帰る赤い電車には
真っ黒に日焼けした子供が
五十人乗っていて
皆一様に体より大きい
ボストンバッグをさげている
電車は普段より揺れながら
東京から真っ直ぐ逃げている
後ろに続いているのは
真っ直ぐ伸びる死だ

鉄橋を囲むように整列する
マンションたちは
同じような仄かな灯りを
同じように身体につけて
同じ瞳でこちらを見ている
あの中に暮らす人々の生活は
東京との境界上で
ゆらいでいる

鉄塔へと疾走する赤い電車で
五十人の子供達は
次第に溶けて行く
速さに耐えられないのか
逃げる事に耐えられないのか
さっぱりだ
変わらず椅子に座って
携帯をいじっている

母からのメールはいつも通りで
彼女は未だに父の骨を
泣きながら食っている
に、違いない

彼女が隠した過去や嘘を
知りたいので罵倒しよう
感情を揺らした方がいい
パンケーキのたねみたいに
とっぷり沈んで
柔らかなままでいては
変われない

電車はいつもより揺れながら
真っ直ぐ海沿いを目指す
鉄塔が呼んでいる
まだまだ長い旅路なので
私は電車でこっそり泣く
つられて五十人の子供達も
泣きながら溶けて行く


#詩

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