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ねりからし

神戸の洋食店のハンバーグには、デミグラスソースと一緒にそっと練り辛子が付けてあった。それがおいしくて、からしチューブを冷蔵庫に置くようになった。

昔はそんなに好きなわけではなかった。コンビニで肉まんを買った際に酢醤油とともについてくるイメージしかなかった。このセットは九州のものらしい。

上京して、近所のコンビニで肉まんを買ったとき、黄色いあの袋がついてこなかった。少し考えて「あの、練り辛子いただけますか?」と店員さんに言って「え?ないです」とドライに返される。こうやって九州出身者は都会で炙り出されてしまうのだ。

からしチューブを買うようになってからというもの、からしの程よい刺激が好ましいものに思えてきた。だが、そっと添え物の類を出ず、一番小さいサイズで買って、たまに会ういい感じの人みたいな距離感でいた。

そんな調味料だったのに、とうとう今日は大容量サイズを迎え入れた。消費量が増えたのだ。それは茹でた青菜と合うことに気づいたからである。

練り辛子一押し、だしと醤油。あればねりごまも合わせて茹でた青菜、それは菜の花、ほうれんそう、春菊、どちらかと言うとほんのり苦味のある春の野菜が適している。

私のバイブル「きょうの料理」の雑誌に載っていた、ほうれん草と練りからしのそのレシピ。大人な副菜でありながら不足しがちな野菜と程よい刺激。喉と胃腸を痛める感じがなく、花粉症の鼻詰まりをつーんと抜けさせるスッキリ爽快感。私の体がからしを求めている。

私は、いつの間にこんなにからしのことが好きになったのだろう。季節が変わって夏になったとき、春野菜から卒業した時にわたしはからしに飽きてしまうのだろうか。それとも、他の調味料を見つけてしまうのだろうか。

今日も私は春菊を茹で、からしを和えまくった。
新しく開けたからしの箱にはそっとQRコードが印刷されている。

どれも美味しそうに見える。からしを使ったホタテのグラタンやコールスロー。からしピクルスを試してみようと思う。これから、私とからしとの付き合いは長くなりそうである。ありがとうからし。

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