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どんな顔して。

早くてだったか、このまま順当にいけばだったか、忘れたけれど、秋頃にだいすきな人がまた遠くへ行く。

今日も飲み会で会う、こないだも会った、店に行けばいつでも会える。がはがは笑うあの時間が愛しくてたまらなくて、たのしいなあとぼやく時、かならず「この時間ももうすぐ終わってしまう」と、誰にも共有しない心が実はある。

彼が遠くへ行ってしまうのを聞いた朝、家に帰るまでずっと泣いていた。朝日が憎らしくて、この街だけ時間が止まってしまえばいいのにとさえ思った。家に帰って、声を上げて泣き続けた。あんなに泣いたのはきっと数年ぶりで、私が鬱だった時くらい泣いた。嫌だ嫌だ、と泣くだけの私を、旦那が背中をさすってくれていて、いつの間にか眠っていた。どこにも行かないで、ここに居て欲しいだけ。でも止められるわけもないし、よくよく考えれば止める理由も権利も無い。二度と会えなくなるわけじゃないんだから、と第三者は言っていたけれど、違うの、そういうことじゃなくってさ。

彼が踊るステージをはじめて見た春を、瞼の裏で何度も再生する。曲を聴けばもっと鮮烈に思い出せる。それがなんだか苦しくて、私はよく分からないまま、笑っている。

どんな顔して、いつか来るその日、またねとありがとうを言えばいいんだろう。笑っていたいんだけど、笑えないのは目に見えている。行かないでって言いたいけど、きっとそれは困らせてしまうから、いつもみたいに大酒飲んで笑っていたい。おっきな感情をどこにもやれないでいるので、ひっちゃかめっちゃかな文章になっちゃった。とっちらかった私がちゃんと収まるのは、いつのお話なのかな。

余談。
昨日の飲み会でまた会って、たくさん話して笑った。みんな酔っ払ってて、彼がおいで〜!って腕を広げてくれたところに飛び込んで、そしたらみんなも集まって、抱きしめあった。楽しくて楽しくて、ずっと笑ってあったかくて、でもやっぱどっか寂しくて、帰りのタクシーの中で少し泣いた。寂しさを拭うには。