微睡

優しいね、いい人だね、って口から出てしまう度に優しいとかいい人とか、何を持ってそう言うんだろうと思う。自分にとってその人が都合がいいみたいで、なんか嫌なのに。嫌なのに、私は誰かにとって、それも大好きな人には特に、優しい いい人だと思われたがっている。それは正しいこと、なのかな。

苦手なものや人や場所が、好きな人ひとり隣に居るだけで思い出になる。私は確かに、こうして夏を越えてきたよなと思い出す。思い出にしかならなかったあの人やあの人やあの人は、元気でいるだろうか。もう交わることがないであろう人のことすら忘れられないで、また次の夏を迎えようとしている。私は今どこにいるのかな、ちゃんと、今ここにいる?ここにいて、って繋いでいてね、あなたが。過去に引っ張られてしまうから、ここがどこだかまた不意に分からなくなってきているから。

夏は相も変わらず苦手、というか多分嫌いに近い。怖かったことを思い出すから。祭囃子も熱帯夜も、誰かが隣に居ないとだめで。トラウマはフワフワした心たちで包んであげないと、すぐ爆発してしまう。だからこの夏はたくさん遊ぶって決めたの。綺麗な浴衣も買ったし、スケジュール帳は真っ黒だし、ライブも行くし。不安な夜は、楽しみなことを考えて、楽しみで眠れないんだって錯覚したらいい。そんで、好きな人たちを浮かべて、あー好きだなーってフワフワして眠れたらいい。あわよくば好きな人たちも、不安な夜もいつかちゃんと眠れたらいいなって、祈りながら眠る。

おやすみまた明日ね。

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