鼻先

夜の海は空と海の境界線がほとんど見えない。
浮いているような、死んでいるような感覚になる。
意識をしっかり保たなければ、そのまま潮になってしまうんじゃないかとさえ思うほど。

底無しの寂しさは奈落そのもの。
今もきっとその穴で落ち続けている。

誕生日をスケジュールに入れる。
会いたくなって連絡する。
会えない日々がつらくて泣いてしまう。
好きだと言っていたものに興味を持つ。
毎日でも会いたい。

これが恋の定義と同じなら、毎日誰かへの
恋心を募らせていることになる。
友達にしろ、旦那にしろ、上司にしろ。
軽やかな足取りで日々を歩けるのは、
好きな人達がいるから。
四季を過ごして、じゃあ次の季節には
どうのこうのと予定を立てて終わっていく1年。
年を越す度に、今年も生きててよかったと、
思えるのは、あなたがいるから。
たまらなく悲しいことに襲われて、また腕を切りそうになる時は今だってある。
けれど咄嗟に、傷を見てしまったときにあなたがなんて思うかが浮かぶようになって。浮かぶ人も、数年前は母だけだったのに今では何人も居て。
刃を閉まって、小さく、ごめんねと思う。

人一倍寂しがりだから。
あなたにはこんなひりつく気持ちを
感じてほしくない、と毎日思ってる。

今まで経験した悲しみや憎しみや呪いは全部、
あなたを大切にする為の通過儀礼だったのかな。

おいしいものをおいしいって、
きれいなものをきれいだって、
言える日々であってほしいと祈っているよ。

あなたがよく眠れますように。


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