梅雨

置いていかないよ、ひとりにしないよ、を何回貰っても信じられなかった。命あるもの、いつ死んでしまうかわからないのにどうして「ずっと一緒」なんて言えるのか分からないでいた。それと同時に、だからこそ「ずっと一緒」って言ってくれるのがたまらなく嬉しかったの。

旦那も、友達も、大事な人みんなみんな、このままがいい。ごはんを食べて、遊んで、眠って、起きたらまた今日がするりと始まっていく毎日がいい。特別嬉しいことなんていらなくて、ただ、雲を見て季節を感じるような日々でいい。夕方の街に晩御飯の匂いが流れて、いいにおいだなーって思うような、そんな。

好きな人がいなくなる夢を、未だに見る。いなくならないでって、眠っていた旦那を起こして、私が眠るまで背をさすってもらうことも、未だにある。埋まらない寂しさと、保証されない「ずっと」への不信とが、ふとしたときに暴れだしてしまう。いつか本当にあなたがいなくなったら、輪郭も匂いも声も思い出せなくなっちゃうんだって、空想に振り回される。どうして、こんなに近くにいるのに寂しいのかなあ。もすこし歳を取ったら感じなくなるの?と誰かに聞こうとする前に、寂しさすら感じなくなったらそれもそれで、なんかやだなってなった。

たとえば。もし旦那が予定よりずっと早く先立つ未来があったら。目が覚めて、ひとつ枕の上がからっぽなんだ。おそろいのお茶碗も、色違いの歯ブラシも、まだ余ってるコンタクトも、からっぽなんだ。あのねあのねってうれしかったことを1番に話す人が、それを聞いて小躍りしたり頬を包んでくれたりする人が、どこにもいなくて、家の中だけじゃなくて心までからっぽなんだ。そっか、そっか。

だれも、いなくならないでいて。ここにいて、ここにいるから。ひりひり痛むのに気づけないくらい、楽しい話をしよう、好きな歌を歌っていよう。ずっと一緒って、かわいくていじらしいおまじない。

今日はなんかだめな日かも。

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