掌編小説:うなとさみ


さみちゃん、これ見て。すごくきれい。
指さした先には、砂の中にキラと光る青っぽいガラスの破片。拾おうとするともぞもぞと動いて、ガラスの下から触手が顔を出した。
わぁっ!とうなちゃんが驚いて手を引っ込める。
だめだよ剥がしちゃ、ヤドカリはお家と一緒じゃないと生きていけないんだから。
ガラス破片に砂をかけて逃がしてやる。宝物をそっと埋めるように。


一卵性双生児、というらしい。
ただし二人三脚、腰がくっついている。
本来2人別々に生まれてくるはずが、未熟児だったためにお医者さんがくっつけてしまったのだ。
「どんな時も二人で力を合わせてやっていくんだよ。」
ママとパパはいない。ママはうなとさみを産んだ時に死んでしまったし、パパは「合体した」うなとさみを見て青ざめてしまって、それから会ってない。

頭は2個、腕は4本(うなはさみの手を動かせないし、さみもうなの手は動かせない。)、腰で身体が癒着して、脚は3本である。
寝る時もご飯食べる時も、おしっこやうんちする時も、ずっと一緒なのだ。


砂漠、一面砂で覆われた丘。
私たち以外誰もいない。

お口が痛いの。
見せて。
乾燥したピンクの舌、少し砂がついている。
唾液を溜めて、べろんと舐めてみる。
んふふふ、
なぁに、さみちゃん。
ううん、うなちゃん、かわいいね。
さみちゃんもおんなじ顔でしょ?私たち鏡みたいね。

手に触れる、指を絡ませてすこし握ってみる。あつい。
うなちゃんが足をつんと当てるので、つんつんと突き返す。くすぐったいのがおもしろくて繰り返す。行き場のない3本目の足が寄りそうみたいに添えられる。

この砂漠を抜けて、街の方へむかっている。
普通の子供は、「がっこう」に通うものらしい。

ねぇさみちゃん、少しつかれちゃった。
うん、あそこの洞穴で休もうか。

文字通り、二人三脚。3本の足で砂をかき分けて歩いていく。
どんな時も二人で一緒に生きていくのだ。


★テーマは「小さな旅」「二人三脚」「知覚過敏」

2024/7/28