Back to 0.7%は英経済次第(2023年6月執筆)
今月20日に行われたCleverly MPへの質疑スクリプトが出てました。 最近全くIDCの質疑追えておらず経過は知らぬところではありますが、IDCの質疑は今回が初じゃないでしょう か。スクリプトだけで質疑の動画見てませんが、発言内容と経歴拝見する限りLiz Trussに代わり大臣に就任した のがこの方でDEV界隈的には良かったんじゃないでしょうか。Andrew MitchellがDevelopmentのMinisterに帰っ てこられたこともありますし、Trussがズッコケ45日間のPM体験してくれたおかげで良い人事異動が起きました ありがたや。
DEV人事はさておき中身に入っていきますが、スクリプトを出してくれるのはありがたい。IDCの質疑は割と聞 いておりますが、8割「ちょっと何言ってるか分からない」状態なので内容理解に苦心しておりました。読むの に時間かかるのでchatGPT君にスクリプトぶん投げたい気持ちを抑えて読んでいきます。今回はFCDOの Secretaryというところで、細かいaid programよりもODA Budgetの縮小や今後のUK aidについての質疑でし た。以下抜粋です。
Chair: …Does that mean that the FCDO has deprioritised development in, say, Africa and the Middle East?
James Cleverly: No. We have seen how inherently interconnected the globe is. … I think it is completely right to say that as a Euro-Atlantic nation obviously our immediate neighbourhood should rightly remain a priority, but we must also recognise that that means stability in Africa, the Asia Pacific, the Indo-Pacific and Latin America. All these things are interconnected and we do not have the luxury of ignoring challenges or problems around the world just because they are not in our immediate backyard.
決まり文句ですね。ちょくちょく自身の現地経験を話されているのでpoorestに対する援助の重要性は理解してる ことを強調している模様。英ODAはGNI比0.5%とされてるものの、ウクライナ難民の支援分を差し引くと0.3%ま で縮小される算出もあることを考えると、「とはいえその”out immediate backyard”にないところへの支援にリ ソース割きすぎやろ」ってところですかね。
Mrs Pauline Latham: Secretary of State, could you tell us how the UK is making progress in tackling global poverty through its international development work?
James Cleverly: This is one of the areas—I know that members of this Committee were critical of it at the time—where I feel the merger has been vindicated not just in the UK but globally in the light of constrained resource. I have made this clear: that within the FCDO not everyone is a development professional, but I expect everyone to be passionate and vocal about development. That means that I have a much larger cadre of people who are thinking about, talking about and helping to deliver the development priorities set out in the IDS.
For example, I had a recent conversation with HMA Tokyo. That is not a post that would traditionally have development issues at the top of their talking points. I know that our ambassador in Tokyo is having conversations about our development priorities and co-ordination with Japan in a way that she or that post would not have done pre-merger.
ふむふむ。併合してできたこともあるんですよってやつですね。HMAはHer Majesty’s Ambassadorの略で東京 FCDO 1/3/24, 6:21 PM Back to 0.7%は英経済次第 https://intldevlog.com/2023/06/129/ 4/8 の大使のことですね。なおこの後具体的に本邦にどんな変化があったかについては具体的な答えは無かった模 様。併合のODA予算への影響については、併合が削減の要因ではなくCOVIDのインパクトっていうのがCleverly MPの言い分のようで。本件に関してはParliamentでも話してきたのもあってか、しつこく詳細を追求されなか った模様。
Mrs Pauline Latham: The International Development Strategy shifted the focus of UK development towards aid for trade. How can you make sure that alleviating poverty is at the heart of ODA spending, not simply serving the UK’s interests?
James Cleverly: It is important that what I am about to say is unambiguous. Our development priorities are to help the world’s poor. […] Using trade to help countries and individuals lift themselves out of poverty is incredibly important because you can put more money into a till than you can into a charity box. If we are going to unlock the kind of money that we need we need to help develop those economies.
ODAの存在意義については日本というか各国のODAにも言える話ですが、貿易フォーカスしてるのはそれが効果 があるからやってるわけで自国利益追求のためではないことを言っており、是非は今後の投稿で審議していきた いところですが、trade-centred でbilateral重視なのはトラスさんから変わってないみたいですね。2023年に閣 議決定された日本の開発協力大綱にも「日本の国益の確保を図る」ことが明記されいます。8年ぶりの改定とな っていますが、「国益」の記載は今版が初めてではなく、改定前の2015年版の本文にも「開発協力を通じて我が 国の国益の確保に貢献する」旨が記載されています。「国益」を明記したのは2015年版が初めてであり、当時の 閣議決定後の質問主意書には、「② 人道支援を行う場合、大綱に記載されている「国益」と、緊急・人道支援 の基本概念は矛盾することにならないかどうか、政府の見解は如何に。」と問いかけられており、当時の安倍晋 三首相は以下のとおり返答しています。
新大綱においては、開発協力を通じて「我が国の平和と安全の維持、更なる繁栄の実現、安定性及び透明性が高 く見通しがつきやすい国際環境の実現、普遍的価値に基づく国際秩序の維持・擁護といった国益の確保に貢献す る」と定めている。我が国が、人道支援の基本原則を尊重しつつ、人道支援を実施することは、国際社会の平和 と安定及び繁栄に資するとともに、我が国に対する国際社会の信頼を確固たるものとするものであり、新大綱に 記載されている「国益」と矛盾するものではないと考える。
きれいな言葉が並べられていますが本命は「国際秩序の維持・養護」であり、それが中国の一帯一路構想に対す る警戒であることは、構想が習近平主席によって提案されたのが2013年であり、安倍首相が2017年に「自由で開 かれたインド太平洋戦略」を提唱したことからも無理な理由付けでは無いように思えます。中国への警戒に加 え、日英含め先進国の停滞(除くアメリカ)は、経済成長余地のあるアジア新興国やアフリカ諸国でのプレゼン スを高めるようODAを利用する向きがあると思うのは邪推ではないでしょう。
GNI比はかろうじて0.5%維持して本邦(0.39%)より上位に位置してる英国ですが、netドルで見ると本邦はお ろかおフランスにも抜かれ5番手に陥落。本邦はそもそも経済規模に比して少なすぎると言いたいところです が、少子高齢化に抗えず上向かない国内経済の中で少しずつではあるものの増額してきたのは評価してあげたい。
デフレマインドに浸りきった国民にそのせいもあってヨワヨワな日銀は総裁交代という絶好のチャンスにもはや 何のためにやってるか分からないYCCの修正をせず、外部要因による円安、物価高というワーキングプアにクリ ティカルヒットな状態を許容してることにカチンときますが、すべての責任を日銀に負わせるのは筋違いでもあ りますし、これら筆者の愚痴や今夏のボーナスが雀の涙だったことは本題とは無関係なのでこのくらいに。
何が申したいかといいますと、物価が上がらない本邦とは背景が違うものの、英国は絶賛スタグフレーション不 可避な状態に陥ってるわけでありまして、インフレ(コアCPI)があまりにもしつこいので今月22日にBOEが 50bpsの利上げを決めたことからも、インフレが落ち着いて国内経済が上向かない限り、0.7%への復帰は現実的 ではなさそうです。
とはいえ、0.7から0.5の縮小は「COVIDとロシアのせいです。FCOとDFIDのmergerは関係ありません」と言われ ても、mergeしてなかったらどうなっていたかは誰にもわかりませんし、元DFID職員の辞めちゃったり(元FCO の職員が何人辞めたのかは不明)しているので、diplomacy>DEVという指摘に対してCOVID理由一辺倒で勝負す るのは分が悪いように思います。
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