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スパークリングワインは伝統工芸

今回は暖かくなってきたこれからの季節にぴったりなスパークリングワインについて取り上げたいと思います(次回、家飲みスパークリングのおすすめを紹介予定)

泡といえばシャンパーニュがあまりに有名ですね。あ、ちなみにChampagne(英語だとシャンペイン)は、業界の方たちの前では日本語でもシャンパーニュのほうがよろしいかと。シャンパンやシャンペンよりも、フランス語読みのシャンパーニュ。ワインの世界ではフランス語の地位が高めです。

シャンパーニュは、フランスのシャンパーニュ地方で作られています。フランスの厳しいワインの規制(原産地呼称統一制度:AOC法)の条件を満たした瓶内二次発酵ワインです。この瓶内二次発酵(secondary fermentation)かどうか、ということは、ワイン醸造家、買い手双方にとって重要です。値段も変わってきますから。

伝統工芸か、工場生産か、みたいな違いがあります。

ちなみにシャンパーニュに使用できるブドウの品種は3種類のみ。白ブドウはシャルドネ、黒ブドウはピノ・ノワールとピノ・ムニエに限定されています。いろいろと厳しいんです。

通訳の仕事では、シャンパーニュ地方以外の醸造家に会う機会も多くあります。それぞれの地域にご自慢のスパークリングワインがあり、そこで出てくるのが「これは瓶内二次発酵だから」というセリフ。ここには「あのシャンパーニュと同じように手間暇かけて作ったワイン」という気持ちが込められています。

それもそのはず。瓶内二次発酵のスパークリングワインを作るのはとても手間がかかるからです。まず、ブドウの果房から果粒を摘み取り、茎を除きます(除梗:destemming)。果粒を圧搾したのち果皮を取り除き、無色の果汁のみを集めます。この果汁をアルコール発酵させ、ブドウの果汁に含まれている糖分をアルコールに変えます。これが一次発酵(primary fermentation)です。

多くの場合、古いヴィンテージ(ブドウの収穫年のこと)のワインとブレンドします。これは毎年均一なスタイルを維持するための努力です。スパークリングワインにノンヴィンテージ(製造年の明記なし)が多いのは、ブレンドするからです。

ブレンド後、瓶詰めされたワインに、天然酵母と糖液が添加されます(補糖: chaptalization、考案したジャン・アントワーヌ・シャプタルに由来)。この後、瓶内二次発酵をします。密閉した瓶の中で炭酸ガスが発生して、ワインの中に溶け込んでいきます。そうです!瓶の中であのシュワシュワが生まれるのです。

そしてなんと数年かけて熟成します(ヴィンテージは3年以上)。最初は横に寝かせて、そして徐々に少しずつ瓶を回しながら、瓶の口が下になるように瓶を傾けていきます (動瓶: riddling)。この作業によって、酵母の死骸であるオリ(yeast lees,sediment)が、瓶の仮栓のところに集まります。

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そして瓶の口を急速冷却して、仮栓を抜くと、凍ったオリが飛び出します(オリ抜き: disgorgement)。さらにコルクで栓をする前に、ワイン原液と糖分を混ぜた「門出のリキュール」を補充します。どうですか、この手間!ですから「このスパークリングは瓶内二次発酵なんだ」と言われたら、その言葉の重みを受けとめることが大事なのかなと思います。

この製法は、一般的にはトラディショナル方式(Traditional Method)と言います。

ちなみにコストがかからず大量生産できる方法としては、一本一本の瓶の中ではなくタンク内で二次発酵を行うシャルマ方式(Methode Charmat)、瓶内二次発酵を終えたワインを加圧したタンクに入れて、オリ抜きをまとめて行うトランスファー方式(transfer methode)、スティル・ワインに人工的に炭酸ガスを注入する炭酸ガス注入方式(gasification, ワインはcarbonated sparklingwine)などがあります。

瓶内二次発酵の呼び方も各国でさまざま。traditionelle(仏)、cremant(仏:シャンパーヌ地方以外)、Flaschengaerung(独)、Metode Classico(伊)、Cap classique(南ア)などと言われますがですが、「トラディショナル」「クラシック」という響きがあれば瓶内二次発酵と思って大丈夫です。

用語をいくつか英語で併記しましたが、フランス人でなくても特にヨーロッパの方や、日本人でも業界の方はフランス語の用語の方が通じる場合もよくあります。アルコール発酵(フェルマンタシオン)、ブレンド(アッサンブラージュ)、動瓶(ルミュアージュ)、オリ抜き(デゴルジュマン)、門出のリキュールを入れること(ドザージュ)などという言葉も飛び交います。

世界には良い瓶内二次発酵ワインがたくさんあり、どんどん進化しています。
スペインのカヴァ、イタリアのフランチャコルタなどが有名です。価格もシャンパーニュと比べるとお手頃なのでオススメです。

お肉やチーズ、バターなどを豊富に使った濃厚なお料理の時には、赤ワインのスパークリングもいいですね。イタリアのランブルスコもキリリと冷やして飲むのがおすすめです。

次はネットで手に入るお手軽なお家飲みワイン🍷を紹介します。

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