固定残業制の注意点

工場で8時間生産ラインを動かせば、8時間分の製品をつくることができます。
10時から17時までが営業時間の実店舗を運営するには、準備時間も含めて9時から18時までは社員が絶対にいなければ困るという場合、忙しい時間帯はあるかもしれませんが、店を開けている時間は仕事をする人がいないと困ります。

長時間働けば働いただけ仕事をしているわけですから、そのぶんの給料は上がって当然といえるでしょう。

一方、デザインなどのクリエイティブな仕事は、長時間働いたからといって高い成果があげられるとはいえません。また、連絡がとれさえすれば必ず仕事をする場にいなければならないものでもありません。そこでいろいろな会社では、労働時間について特殊な制度を導入しています。

固定給にあらかじめ残業代を含めて1か月に払う(もらえる)賃金を定額にするというのが「固定残業制」(定額残業制ともいいます)です。

固定残業代制は、就業規則や雇用契約書などにその旨を明示し従業員の合意を得てはじめて実施できます。
また、青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)で、固定残業制を採用する事業主は、募集・採用にあたって固定残業代に関する労働時間数、金額等を明示することが義務づけられています。

よって、求人票に掲載する際には次の内容を明示する必要があります。

1 固定残業代を除いた基本給の額
2 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
3 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

基本的な部分(最低賃金以上の額を設定する必要があります)と、どれが時間外の割増賃金分にあたるのか、それがどういふうに計算したものかを明確に区別しておかないといけない、ということです。

そして、「固定」といっても実際の残業時間から計算した時間外手当より残業代部分の手当が低い場合は、法律上、不足分を支払うことが必要です。

一定の給料が保証される仕事の早い人にとっては有利な制度である反面、求められる労働量に手当が見合わない可能性があり、労使トラブルの起こりやすい制度でもあります。

固定残業代を採用している会社への就職を検討するときには、金額や時間数だけでなくその具体的な内容、あわせて勤務の実態について確認することが大切です。

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