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【選手こそ呼び水】セリエA20-21 第5節 ジェノア−インテル マッチレビュー

3試合白星なし。嫌な流れを断ち切った今季初となるクリーンシートでの勝利。
結果は完璧だったがその要因を探るとやや切歯扼腕だ。

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第5節ジェノア−インテルのマッチレビューです。

●スタメン

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●前半−再現と膠着

前半を1つのセンテンスで表すなら

「インテルの右サイドとジェノアの左サイドの攻防」

であることに異論がある方はいないんじゃないかなぁと思います。
それだけインテルは右から攻めて攻めて攻めまくりましたし、ジェノアは左を守って守って守り抜きました。

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前半終了時点のプレーエリア。一目瞭然です。
sofascoreより引用。

インテル左サイドのビルドアップ機能不全に関しては当レビューで散々取り上げており、僕も好きな選手をこれ以上指摘するのはしんどいので本記事ではスルーいたします。

ただ前半の課題は左が使えないことでの右偏重ビルドアップであることに間違いはないでしょう。

2節のナポリ−ジェノア戦はトップのオシメーンがそのゴリゴリフィジカルで深さを出したことでラインコントロールがガタガタになった+CB−MFのライン間も空いた。
これによりナポリの小兵たちが躍動し6-0という大差になったと解釈してます。

思えば前回の対戦時もモーゼスのゴリゴリさにクリーシトが切って捨てられる形でしたし、ジェノアは苦手意識があるんですかね?

という訳で僕はルカクでナポリを再現して欲しいなぁという至極単純な思惑があったのですが、ルカクの右サイドばかりから組み立てるので必然的に深さが出せない事象が発生。

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✔︎右から組み立てるのでルカクのポストプレーが増える。
✔︎結果、奥に引っ張られないので深さが出せない。
✔︎ジェノアは終始リトリートモードなので背後にスペースもない。

ならせめてニアゾーンを攻略してファーのペリシッチに良いクロスを送ったり、ラウタロや2列目にキーパスを送りたかったところですが、ジェノアのドン引き5-3ブロックはそうさせてはくれませんでした。
ホームチームは非常に教科書通りのお堅いリトリートでしたがそれ以上にインテルの攻撃が単調です。

あまりに愚直。

互いにやることが限られている中、ひたすらサイドの攻防を再現し膠着する前半。
試合をご覧頂いてない方はxG(ゴール期待値)を見ると一目瞭然です。

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青のラインがホーム ジェノア。黄色がアウェイ インテル。 understat.comより引用。

前半のxGはジェノアがなんと限りなく0に近く、ポゼッションが70%近かったインテルも0.2程度とデータからもゴールを期待できる試合展開ではなかったことが分かります。

●後半−デジャヴのアプローチ

さて、ここで今回のジェノアのボール非保持をピックします。

基本的な構造は5-3ブロックを組んでのゾーンディフェンスですが、注目はブロックを組み切る前の前線のアプローチ。

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✔︎ロヴェッラが一時的に1枚上がりCBの前にブロックを構築。
✔︎CBにボールを持たせるのは許容。
✔︎その分、前線の壁は背中でパスコースを切りCHに1対1+1の監視を。
✔︎エリクセンのケアが弱まるがサパタが上がって対応する(深追いはしない)。

はい。デジャヴです。ボルシアMGと似ていますね。このアプローチは実は前半から取り組んでいましたが後半は全体的に強度を高めアクセルを踏んだ感があります。

これスカウティングされて効果的だと認識されてるんですかねー。だとしたら源流はラツィオでしょう。

これにアレンジを加えてると考察します。行き過ぎた妄想かも知れませんがインテルが今季、唯一得点期待値が1に届かなかったのはこのラツィオ戦なんですよね。あながちない話でもなさそう笑

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第3節ラツィオ戦のxG。understat.comより引用。

インテルは前回に続き今回もこのアプローチに苦戦。ジェノアはようやく自分たちの時間を作れました。

ジェノアのボール保持は率直に言ってアバウトです。雑でもいいのでツートップにボールを入れてワンチャンに賭ける!って感じでしょうか?
パンデフはボール収めが上手いのに加え、ファウル貰うのが抜群に上手いのでパスを付ければ陣地回復が期待できる。地味にいやらしかったですね。

●後半−きっかけは交代策 

勝ち点3がノルマとなっているコンテ監督は58分に動きます。
エリクセン、ペリシッチOUT→バレッラ、ハキミIN。本当は休ませたかったですがこの状況では致し方ありませんね。

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この選手交代により早々に得点が生まれます。
ハーフライン手前からブロゾヴィッチがボールを運ぶとマーカーの背後を取ったバレッラへ。
ミニマムなパス交換でルカクが抜け出すと、エースはカバーに入ったゴルダニカを冷静に躱しネットを揺らしました。

コンテ監督の采配は待望の先制点をもたらしました。が、それに負けず劣らずの効果もピッチに現れます。
バレッラ、ハキミの投入によりインテルのボール保持は改善されたのです。
なにより大きかった要因は左サイドが機能し始めた点。ポイントはバレッラとダルミアンでしょう。

バレッラは中盤のポゼッションに推進力をもたらしました。その運動量と戦術眼でマーカーから一瞬のフリーを生み出してはボールを引き出し、その反転の鋭さと馬力で前を向いてボールを運びチャンスを演出。これで中央に怖さが生まれるとダルミアンの左サイドも活性化し始めました。

彼はまだ連携不足が原因か、アウトレーンに駐在することが多かったですがとにかく分かりやすいんですよね。動きや位置取りが。意外性はありませんが今はそれがイイ。おかげで素人目に見てもバストーニがイキイキし始めました。

77分にはこの両者の良さが出たシーンが。

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✔︎静→動へ。マーカーの背後を取ったバレッラがピナモンティの楔を受け取る。
✔︎タイミング良く左サイドを駆けあがったダルミアンへ展開。
✔︎ダルミアンはシンプルにクロスを入れる。

クロスはジェノアDFにクリアされてしまいましたが、これです。これでいいんですよ。シンプルで特記すべきシーンでないかもしれませんが今のインテルの左サイドではあまりお目にかかれない形。

息を吹き返したインテルはこの後、一方的な展開。
79分にはCKをラノッキアとダンブロージオのCBコンビが決めて0-2と突き放しタイムアップを迎えました。

・スコア
ジェノア0-2インテル
(64分ルカク、79分ダンブロージオ)


●雑感-選手に由来

3試合ぶりの勝利。今季初のクリーンシート。結果は完璧でしょう。
しかしながら、その内容までも手放しで喜ぶのは危険かもしれません。

勝利の要因は選手に由来したものだから。

結果的には間違いなくコンテ監督のバレッラ、ハキミINの交代策がきっかけでした。
が、これは「交代策、戦術のテコ入れでチームが変わった」ではなく「選手によってチームが変わった」と表現するのが妥当でしょう。

前半の項に挙げたxGの推移、フルタイムのものがコチラです。

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選手交代を機にチームのチャンスクリエイトが明確に質を高めています。understat.comより引用。

うーん。やはり根深い。今現在抱えている課題はそう簡単にクリアにできるものではないということですね。

ただ、とりあえずは苦しい状況下において素晴らしい結果を出したことにフォーカスを当てたいですね!
この勢いのままシャルタール戦の臨んでほしい!

●雑感−選手をピックアップ

ということで、今回は選手個々のパフォーマンスが目を惹きました。何選手か取り上げさせて下さい。

まずはTwiiterでも絶賛の嵐。トレンドにも乗ったラノッキア。
彼はインテル守備陣に最も必要なスキルである予防措置のスキルをこれでもか!というくらい見せつけました。
具体的に中央CBというポジション上、予防的カバーリングが光りましたね。特に前半はダンブロージオが上がる回数が多かったのでそのスキルが目立ちました。

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このようにボール保持時の段階から、ネガティブトランジションが起こった際に自分がどこに入れば危険な芽を詰めるか、時間を稼いで他が撤退できるか?の判断とポジショニングが絶妙。
当然のプレーに思えますがモダンサッカーにおいて予防措置のプレーはその重要度を高まる一方だと考えています。

続いてはダルミアン。イイ(2回目)。スペシャリストではありませんが素晴らしいジェネラリストですね。
サイドを問わないし、CBとしても機能。上述の通り前半はダンブロージオが上がることで頻繁に上下を入れ替えてゾーンの基準点を乱そうと奮闘してました。
連携が仕上がってきたら・・・うん、楽しみです。

そしてバレッラ。ミラノダービーのレビューでも言及しましたが、唯一無二のタスクをこなしています。トップ下は彼の聖域になるかもですね…(ラジャが入ったら1列落ちてたけど)

対してペリシッチとエリクセンは引き続き厳しい状況が続きそう。ただ前者は守備、特にネガティブトランジションに改善が見られていますし、後者のパスはやはり他と一線を画しますね。
ここがフィットしてくると一気に上昇気流に乗れそうなんですが・・・!

次戦は昨季のELセミファイナルでも相見まえたシャフタール。前回はELセミファイナルのレコードとなる大差で勝利しましたが、先日のレアル・マドリード戦でその強さを証明しています、厳しい相手ですがなんとか今日の勝利を繋げて欲しいですね!

FORZA INTER!!⚫️🔵

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