【決め手はディテール】セリエA21−22第7節サッスオーロ-インテル レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はセリエA第7節サッスオーロ-インテルのマッチレビューです。
●選手起用
・サッスオーロ選手交代
64分デフレル▶︎ラスパドーリ
75分ジュリチッチ▶︎トラオレ
86分フラッテージ▶︎スカマッカ
・インテル選手交代
57分チャルハノール▶︎ヴィダル
57分ドゥンフリース▶︎ダルミアン
57分バストーニ▶︎ディマルコ
57分コレア▶︎ジェコ
89分ラウタロ▶︎ダンブロジオ
●前半-封じられなかったビルドアップ
セリエA界の『ポゼッションプロフェッサー』的な地位を確立したデゼルビ監督が旅立ち、ディオニージ監督へバトンタッチされたサッスオーロ。
デ・ゼルビ流は最終ライン4枚+CH1枚。最終ライン3枚+CH2枚で狭いW型を作り、進軍するのが特徴。
一方でディオニージはこのW型を踏襲しつつも、マキシム・ロペスの動的配置成分を増やしています。
簡単に言えば、ポジショナルプレー色を強めてディテールを醸し出している印象。
見ていきましょう。
✔︎ロペスがCB横に落ちる頻度高
✔︎代わりにロジェリオが上がる
✔︎W型は踏襲
特に再現性があったのはこの形。
ユニークというか、相変わらずサッスオーロらしいな!と思ったのは、ロペスが降りて、ロジェリオが上がる際、単純な縦の入れ替えが目立つ点。
つまり、ボガは関与せず大外に張ったままが多い(もちろん絡む場合もあり)。
インテル含め、この手のポジショナルプレーってトライアングルをローテーションさせるケースが主流。
と個人的には思うのですが、ボガという単騎で守備網を壊せるドリブラーは静的に配置。
「そこにいて欲しい」んでしょうね。
ここは昨季と変わらずの傾向。
で、インテルはと言うとこの試合、前からプレスに積極的な姿勢を見せましたがホームチームの進軍は止められませんでした。
狙われたのはバレッラのところ
下記はサッスオーロのボールタッチ分布図です。
青が自陣、赤が敵陣を示します。
セリエA公式より引用。
ビルドアップのフェーズでは明らかに左サイド(インテル目線では右)でのボールタッチが多い傾向にあり、ホームチームがここを突破口にしていたと推察できます。
なぜか?
これはインテル側に根本的な理由があると考えます。
というのも、前からプレスにおいてドゥンフリースの優先順位が対面のロジェリオではなくてボガであったように見えました。
嵌めれそうな時やサイドに追い込んだ時などは前に出てロジェリオに圧をかけますが、ベースは『シュクリニアルと一緒にボガを警戒する』だったかなと。
ドゥンフリース、明らかにペリシッチよりも低めの位置で、ボガも警戒しているシーンが多かったです。
個人どうこうではなく、チームとしての設計。
CLレアル・マドリード戦と同じアプローチですね。
なので、バレッラが実質2人見ないといけないので大変大変(一応、その代わりにコレアとラウタロがロペスのパスコースを切るけど)。
ボガを警戒する気持ちは非常に理解できます(実際やられたし)。
が、『サッスオーロのビルドアップ』という、もはやセリエAのブランドものになっているクオリティに対して、前からプレスの積極性を出すならば中途半端なことは逆効果。
右に歪みが出て、剥がされて、前に付けられる。
無理に引っ掛けてもサッスオーロは陣形が整っているのでセカンドボールを拾いやすい。
レアル・マドリード戦に続いての事象で、ここもまたクリアにしなければならない課題。
とはいえ、サッスオーロもお見事。
スカウティングか試合のフィーリングかは分かり兼ねますが、試合印象的にもスタッツ的にも確然たる意図があったことは間違いないでしょうから。
自分たちの形だけでなく、相手由来で再現性を発揮できるのはなんともしたたか。
●前半-封じられたビルドアップ
対して、サッスオーロの前からプレスは効果的でした。
最近フォーメーションの噛み合わせをやたら取り上げている気がしますが、今回もピックさせてください(それだけ噛み合うように来られている=前からプレスを仕掛けられている証拠でもある)。
3−5−2と4−2−3−1はこれ以上ないくらい噛み合う陣形。
必然マンツーマン風味となり、設計や強度が伴えば今のインテルが嫌がるのは素人目から見ても明らかです。
サッスオーロの選択は『設計』ですね。
前からプレス自体は積極的でしたが、人への圧をかけ方は実は強いとは言えず、ホルダーの選択肢を削いでいき、追い詰めた先で引っ掛ける方策。
2節ヴェローナのアプローチと非常に似ています。
・サッスオーロのプレス回数
全体のプレス回数:99回(リーグ平均134回)
アタッキングサードでのプレス回数24回(リーグ平均32回)
サッスオーロは確実に前からプレスを仕掛けてきましたが、FBref基準の『プレス=ボールホルダーに圧をかける』スタッツは実は非常に少ないことが分かります。
(ちなみにサッスオーロもインテル同様、この試合に限らずプレス回数が少ないですね)
FBrefを参照。
特に14分頃から10分程度、インテルは緑色の包囲網を全く抜け出せず、サンドバッグ状態に。
詳細は割愛しますが、この時間帯はディテールに至るまで良質でした。
そしてPKを献上するわけですが、直前のバレッラが2人に囲まれて引っ掛けれるシーン。
こちらは状況を正確にお伝えしたいので画像で失礼いたします。
インテルのビルドアップ不全の象徴
ⅰ)2人に囲まれる。
ⅱ)ボールホルダー(バレッラ)のパスコースが1つしか存在しない。
ⅲ)そのパスコースも守備側が対応しやすい縦方向。
この状況、ロストしない方が不思議。
こういった基本的な選手配置の練度が引っかかるシーンが多すぎます。
可及的速やかに整えて欲しいですね。
さて、修正が必要と感じたのか、あるいはペースアップのためか、いや両方か。
インテルは失点後から縦方向に面舵いっぱい。
上述の通り、サッスオーロはマンツー風味なので前線に届けて、収めたり、セカンドボールを拾えれば、擬似的なカウンターに持っていけます。
実はこの辺は割とハマっていたと考えていて。
「相手の喉元にあと少しで噛み付けるね!」的な『ゴール一歩手前期待値(そんなのない)』は、むしろインテル側に分があるような印象を受けました。
●後半-4枚替えの効果は
前半の『ゴール一歩手前期待値』の貯金を一気に吐き出すが如く。
立ち上がり、非常に旗色が悪かったインテルは57分になんと4枚替え。
シモーネ監督、勝負に打って出る。
直後のジェコのゴールはペリシッチのどんピシャクロスとジェコの動き出しの妙。個人由来が強めなゴールでしたが、ここから4枚替えの効果が如実に現れます。
「交代直後に交代選手が同点弾を決める!」という精神的にアガるバフもあるでしょうが、ピッチには具体的な事象もありました。
取り上げたい点はいくつかございますが、長くなるので2点に絞ります。
■ディマルコの攻め上がり
バストーニの代わりに左CBに収まったディマルコ。
投入直後から積極果敢な攻め上がりを見せます。
基本はブロゾヴィッチとこの選手交代の影響で左IHに移ったバレッラが降りて、ディマルコを解き放つスキーム。
✔︎ブロゾヴィッチが最終ラインに降りてビルドアップを担保
✔︎バレッラが降りて、ブロゾヴィッチタスクを担保
✔︎攻撃性能が高いディマルコが攻め上がれる
見逃せないのが仕組みだけではなく、そのあと。
ジェコに当てて、ディマルコがそのまま中央に絞り、バレッラが膨らむ動きを見せます。
そのため、ちょうど交差するような動きとなり、縦の入れ替わりの後に、横にも入れ替わっている。
つまり、サッスオーロの守備基準点をさらに乱そうとしている点がGOOD(ジェコのところをファールで潰されちゃったけど)。
さらに、アクセントとして目を惹いたのはこの直後。
✔︎ペリシッチが降りて、ビルドアップの逃げ口となる
✔︎ワンツーで抜けたディマルコがジェコにパスを付ける
✔︎バレッラボールを引き取りにアウトレーン寄りに移動
✔︎ディマルコが中央寄りにインナーラップ
今度はペリシッチが降りる動きを起点としたローテーションパターン。
WBが降りてビルドアップに加担する形、前半はほとんど見られませんでした。
コンテ政権以上にシモーネ政権ではWBが高くを位置取る仕様なので、これ自体は悪いことではありません。
しかし、前半あれだけビルドアップ苦しんだわけですから、手札があって、それが機能したことに評価点が存在する。
※尚、上記2つのスキーム、62分→64分と連続で見れるのでアーカイブおすすめです!
大枠の『プランB』ではなく、ディテールの『手段B』
フレキシブルなポジションチェンジを敢行するが、瞬間的にレーンを埋めて、大枠となる配置そのものは保つ。
シモーネ流の最大の特徴と考えていますが、体現するに具体的な手段にパターンがあって、それがハマった。
これが本節を見る上での最大ポイントと考えています。
研ぎ澄まされた左サイドが槍と化し、ようやくサッスオーロの前からプレスを無効化する術が定まるのでした。
■プレスが増える、戦うようになる
一方こちらは抽象的な表現となりますが、選手交代後(得点後)明らかにインテルの選手たちがエネルギッシュになり、人への当たりが強くなりました。
抽象的だからからこそ、交代前後のプレス回数をスタッツ比較で主観だけでなく、多角的な視点を取り入れたいんですが、お世話になっているFBrefは1試合の結果しか確認することができません。
そこで、今回は時間帯ごとに表示可能なWhoScoredを引用します。
・〜57分までのスタッツ
・57分以降〜のスタッツ
細かい説明は省きますね。僕が気になった点を箇条書きにいたします。
ⅰ)タックル試行数がたった1差
ⅱ)インターセプトは増えている
ⅲ)クリア回数が大幅に減っている
ⅳ)ブロック(シュート、クロス)は増えている
大前提として、上画像(〜54分まで)の方がプレー時間が長いので、全体的に数値が上回っていて当然となります。
にも関わらず
タックル試行数が変わらない=54分以降〜の方がタックルを仕掛けている。
インターセプト、ブロックはさらに上回っている(成功している)。
相対的に相手を前目で止めているのでクリア回数が減っている。
つまり、
「戦えている。それも比較的、前で。」
と推察できます。
・本節のインテルプレス回数
全体のプレス回数:197回(リーグ平均134回)
アタッキングサードでのプレス回数61回(リーグ平均32回)
5節までのプレス回数平均は107回(リーグワースト)、6節アタランタ戦はそれを下回る91回。
FBrefを参照(ぜひ時間帯ごとに見たかった)。
尚、以前どこかでも書きましたが、インターセプトって「人への当たりが強い」からというよりも、「組織的に誘導して配置で嵌める」的なイメージがありませんか?
プレスとは逆に位置するスタッツというか。少なくても僕は元々そんなイメージを持っていました。
しかし、詰まるところ。
インターセプトの瞬間を切り取ると、大小あれど「配置を崩してボールと受け手を寸断する」のがインターセプトなので、実は『配置<人寄りのアプローチ』と思案するようになりました。
したがって、スペース管理<人管理に重きを置くチームこそ、インターセプトの回数が多くなる傾向にある。
事実、昨季セリエAで言えば、インターセプトが最も多かったチームはマンツーマンのアタランタです。これはひとつの論拠となるではないでしょうか。
話が大きく逸れました。戻します。
この一連で印象的だったのはヴィダル。
上述の通り、「交代直後に交代選手が同点弾を決める!」バフもあったでしょうが、さらに交代選手がチームの戦う姿勢を先導してくれていた点が大きかった。
・ヴィダルの守備スタッツ
プレス回数:20回(チーム4位タイ)
タックル+インターセプト:3回(チーム2位タイ)
出場時間が34分だということを考慮すれば、実質どちらも1位です。特にプレス値は圧巻ですね。
FBrefを参照。
泥臭く力強いプレーそのものはもちろん、観客も煽っていましたし、こういうところで魂を表に出せる選手の貢献度は計り知れませんよねぇ。
逆転に向けての率先垂範となってくれた感は画面越しでも非常に伝わりました。
ヴィダル、いいぞ!
それと技術的なことを言えば、彼はボールの引き取り方が地味にイイですよね。
ボールホルダーに対して角度を付けてあげる微調整をサボりません。
のらりくらりした動きなので一見そうは見えないんですけどね笑
攻め上がるタイミングと後ろで控えるタイミングもいいですし、ベテランらしい気の利き方が光ります。
ただ、僕個人としては本節一のファインプレーは逆転ゴールのところ。
①ヴィダル「左(バレッラ)に展開しろ!」とジェスチャー。
②ブロゾヴィッチまさかのガン無視。極上スルーパスをジェコに送り、結果PKを獲得。
これはね、僕には分かりますよ。
これはね、敵を欺くためのフェイントジェスチャーですね?
決して、ブロゾヴィッチにガン無視されたわけではないのですよ。
超高度なサインプレー。いやぁすごい。これは超ワールドクラス。
こういうディテールも僕は見逃さないのですよ。
ヴィダル、いいぞ!
・スコア
サッスオーロ1−2インテル
(22分ベラルディPK、58分ジェコ、78分ラウタロPK)
●雑感-サッスオーロの選手に触れてみる
試合展開やインテルのことはもう置いてこれたので、少しだけサッスオーロの選手に触れたいと思います。
まずはマキシム・ロペス。
昨季はロカテッリ(実質アンカー)とジュリチッチ(フリーマン気味OH)を繋ぐリンクマン的な存在で、足元も頭もテクニカルな印象を持っていました。
それが今季はロカテッリタスクを担っている。
同じチームとはいえ、似て非なるタスクですからね。この順応はものすごいですよ。
というか、同じチームって言っても2年目ですよね、たしか。
やっぱりすごい。
2人目はフラッテージ。
サッスオーロが今季と昨季で異なる点。
監督以上に、「この選手がいるかいないか」と表現するのが分かりやすいかもしれません。(ディオニージ監督だからこそ起用されてるんだろうけど)。
技術的な選手が多い選手、特に中盤にあって強気なバトルを挑める選手ですし、何よりも縦の推進力がイイ。パスを前につけるスキルも○、自身で縦に運べるスキルも○。
これは間違いなく昨季のサッスオーロになかったもの。
エンポリを見てるとディオニージ監督がフラッテージを好む理由がよく分かります。
昨季のサッスオーロを踏襲しつつ、ディオニージ色を出すのにこの選手が必要なんでしょうね。
しかしながら…
本節はその特徴を発揮できなかったと言わざるを得ません。
後半、サッスオーロが強度を上げたインテルに対応できなかった点に、フラッテージのパフォーマンスは深く紐づいていると考えます。
※一応、他サポなので主観だけでは評価できず、スタッツも覗きましたが本節は全てでパッとしませんでした。。
インテル目線としては非常に助かりましたが、後半戦、よりフィットしてより調子を上げてきたら、と思うと今から怖いですね。。
最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯
代表ウィーク明けもFORZA INTER!!⚫️🔵
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