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【作動と作用】セリエA20-21 第24節 インテル−ジェノア レビュー

シームレスなスポーツであるサッカー。
何かが”作動”すれば、何かに”作用”するのは論なきものかもしれない。
本節はそう感じさせる一戦だった。

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第24節インテル−ジェノアのマッチレビューです。

本節は前半にトピックスがギュギュッと詰まっていたと考えています。
僕のレビューあるあるですが、前半重めで進行いたします。というか、後半ははぼ触れません笑

●選手起用

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・インテル交代
76分ブロゾヴィッチ▶︎ガリアルディーニ
76分ラウタロ▶︎サンチェス
84分ダルミアン▶︎ダンブロジオ
84分ペリシッチ▶︎ヤング
84分バレッラ▶︎ヴィダル
・ジェノア選手交代
46分ストロートマン▶︎ベーラミ
46分ラドヴァノヴィッチ▶︎オングエネ
62分スカマッカ▶︎パンデフ
62分ギリオーネ▶︎エルドル
71分メレゴーニ▶︎ポルタノーヴァ

●前半−本格作動の左

開始32秒、早々にルカクが先制点を決めます。利き足と逆、右でのシュートでしたが完璧なコースでしたね。

立ち上がりのプランだったのか。
直ぐさまの失点に火がついたか。

ジェノアのボール非保持は強打の高いハイプレスで幕を開けました。
右IHメレゴーニが上がってバストーニに圧をかけ、右HVゴルダニガがエリクセンを縦に捕まえに行く、インテルよろしくの形。

が、5分頃まででしたね。
その後は5-3-1-1のミドルブロックをメインにインテルを迎え撃ちました。

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✔︎CFピアツァはブロゾヴィッチをマーク。
✔︎その分、CHロヴェッラはブロゾヴィッチを見つつも、全方位をフォローして局地的な数的優位をつくる。
✔︎ゴルダニガはブロック時も割とアクティブ(ボール保持に起因、後述)。

この守備に対してのインテルの攻めは…身も蓋もないんですけど【色々】でした笑
語彙力!!って感じなんですけど、事実なのでしょうがありません笑

中でも再現性があり、かつ個人的な琴線に触れたのは2点。

ⅰ)バストーニがアウトレーンに開いて上がり、幅取り役に。ペリシッチはハーフレーンに絞る。
もちろんバストーニがハーフレーンをシンプルに上がり、ペリシッチが幅取り役の場合もあり。

ⅱ)バストーニからラウタロへの縦パス。

そう、どちらも左からの仕掛けです。

ⅰは言ってしまえば当然のプレーなんですけど、その”当然”が出来ないのがシーズン序盤でした。
当時はネガティブなレーン被りが多発して渋滞。バストーニが全くペリシッチにパスしない(しても意味ない?)なんて試合もありましたね。

ここは間違いなくペリシッチの成長(順応)由来で、ようやく昨季のようにダイナミックに攻め上がるバストーニが見られるように。

ⅱは一見、どシンプルに見えますが工夫が内包されています。特にエリクセンとバレッラのギャップがミソ。

当レビューでも既に触れていますが、エリクセンは保持時にブロゾヴィッチの隣まで降りてボールを引き出し、バレッラは逆に高め、シャドー的な位置取りをします。

なので、ジェノアのIHも単純に付いていくと立ち位置のギャップが生まれる。
特に右IHはエリクセンをどこまで追うのか?をしっかりチームとして線引きしなければいけませんが、ジェノアは最後までそれが曖昧でした。

否。

インテルのアクションが曖昧にさせた

●前半−チームとしての再現性

9分のシーンを紹介させて下さい。

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✔︎右で一旦溜めて、左でどフリーのバストーニへ。
✔︎メレゴーニが引っ張られる。エリクセンはその背後にするすると移動。
✔︎同一レーンのゴルダニガが前に出て捕まえに行かざるを得ない。
✔︎ラウタロへのパスコースが空く。すかさずバストーニが楔を入れる。

その後はラウタロのヒールパスがラドヴァノヴィッチに当たってなんてことないシーンに終わりましたが、インテルの仕掛けがこれでもか!と詰まっていました。

■右で溜めてる際、バレッラは高めの位置取りなのでロヴェッラは1+1のフォローに入る。
ルカクもいるのでジェノアのリスク管理の優先度は高い。

■左に振ればエリクセンが低めに位置していることも相まって、右IHのメレゴーニがどうしても引っ張られる。

■すかさずエリクセンはその背後でボール引き出し。
右HVゴルダニガが前に出るもそれこそがインテルの真の狙い。ぽっかり空いたスペースはさながら空洞化。

ポイントになるのは「メレゴーニが引っ張られる要因」

ⅰ)右に振っているのでバストーニがドリブルで運べるコースが空いていること。

ⅱ)そもそも左が機能して脅威になっていること。

ⅲ)立ち位置のギャップ

この因子が揃っているのでメレゴーニはどうしたってバストーニに引っ張られる。
連動して前に出るゴルダニガも自分のタスクを真っ当しており、プレークオリティは別として、判断そのものに非はありません。

インテル由来のデザインされたアタック

つまり、何が言いたいのかと言うと、シンプルな楔に見えますが、インテルは崩すべくして崩しているということです。

こうなると所謂「再現性のあるプレー」に発展し、チームの引き出しが確立されます。

ゆえの【色々】
左が本格作動したことで、中央にも右にも作用を及ぼした。

もちろんルカクやラウタロの質的優位、破壊力があってこそですが、この手段を単に”依存”とか”◯◯頼み”だけで表現するのはめちゃくちゃ勿体ないでしょう。

いつぞやのレビューでも書きましたが、コンテ監督はタスク由来の選手配置で自分たちのシチュエーションをつくるのが本当に上手いです。

●前半−なぜゴルダニガなのか?

さて、ここからは話を変えて、ジェノアのボール保持に目を向けます。本節のアウェイチームはめちゃくちゃ分かりやすい設計でした。

最終ラインで丁寧にボールを揺さぶって、前進のトリガーになるのは右HV(右CB)ゴルダニガ

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✔︎後方でボールを回し、ゴルダニガにハーフレーンを上がらせる。
✔︎代わりにストロートマンは最終ライン落ち。
✔︎ゴルダニガにボールが渡れば、すかさずアウトレーンとハーフレーンで多角形を構成。
✔︎流動的なパス&ゴーでアクセルを踏んで崩しにかかる。

まぁはっきりとしたアシンメトリー型の保持ですね。

ボール非保持にゴルダニガが積極的なのはスムーズなポジティブトランジション、ボール保持に繋げる目的もあるでしょう。

HT時にツイートしましたが、これはデータにもしっかり現れていました。

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・選手の平均的な立ち位置を可視化した図。
ゴルダニガ(5番)は高めでプレーしていることが分かります。サパタ(2番)と比べると一目瞭然。
またストロートマン(20番)はロヴェッラ(65番)よりも低い位置でプレーしていることが多く、最終ラインの担保をするタスクであることが窺えます。
SofaScoreより引用。

しかし、効果的かは別のおはなし。率直に言って厳しかったと思います。

■多角形を作るところまではいいが、そこから先は個や連携頼り。組織的な崩しには見えなかった。

■ストロートマンの担保が効いておらず、バレッラに振り回され続けてしまった。

ギアが少ない上に裏返しの恐怖にも晒され続けたジェノア。その攻撃に怖さは全く感じられませんでした。

気になったのは「何故、ゴルダニガなのか?」(なぜ右から攻めたのか?)

考察というか妄想の域ですが、ゴルダニガに意味があった以上に、”右サイド(インテルから見て左)での崩し”というハード面そのものに意味があったんだと解釈しました。

ラツィオ戦のマッチレビューでブロゾヴィッチとエリクセン併用のデメリットを不安に思ったのですが…

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ラツィオ戦マッチレビューより引用。

これは、

バレッラ+ハキミ(+ブロゾヴィッチ)

エリクセン+ペリシッチ(+ブロゾヴィッチ)

では、後者の方がまず間違いなくトランジションの強度が低いので、ジェノアに限らず、インテルと対峙するチームは、右で作って崩した方が攻守両面で効果的な気がする、というものです。

がしかし、インテルの左サイドが輝いたのは攻撃だけではありませんでした。守備もまた、です。

●前半−エリクセンの”配置の守備”

本項でスポットライトを浴びるのはエリクセン。

同じく妄想ですがインテルはジェノアのバッラルディーニ政権をしっかりスカウティングできていたのではないかと。

前回のミラノダービーで、エリクセンは状況に応じてSBのカラブリアに圧をかけるシーンも散見されましたが、今回はHVゴルダニガに深くまで付いていくシーンは前からプレスのスイッチが入ってる場合くらいで非常に限定的でした。

基本的には対面のIHメレゴーニを監視し続けますが、ゴルダニガが上がった際には対応するケースも。
その対応方法が実に繊細。30分のシーンを例に挙げます。

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・エリクセンの繊細な守備①
✔︎ポジションチェンジしたストロートマンの背後をゴルダニガが駆け上がる。
✔︎エリクセンはどちらにも対応できる位置に。
✔︎ストロートマンからゴルダニガへパスが通る。すかさずエリクセンは距離を詰める。

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・エリクセンの繊細な守備②
✔︎連動してギリオーネがペリシッチの背後へ。
✔︎ペリシッチはマークを渡して、ゴルダニガをマークする(ギリオーネはバストーニが見る)
✔︎この際、エリクセンはペリシッチと共にゴルダニガを囲いつつ、ギリオーネのパスコースも消す。

エリクセンがタックルを成功させたぜ!、インターセプトしたぜ!っていう分かりやすい貢献ではないんですけど、本節はとにかくこの繊細な位置取りが目立ちました。

局面局面でしっかりと状況把握をしてポジションアジャストを繰り返す、地味ながらも確実な積み重ね。
「誰かをケアしながら誰かのパスコースを消す」の繰り返しでジェノアのボール保持をホリゾンタル(水平、転じて横方向)に留め続けてくれました。

配置最優先で守るインテルの守備そのもの

と、エリクセンを主役に設定しちゃいましたが、ペリシッチもシーズン序盤とは明らかに改善されてますね。

ちょうどシーズン後半戦のベネヴェント戦くらいから継続しているので、もうそろそろ継続性を認めて安堵していいかもしれません。

●前後半−その他

ということで攻守ともに完全にインテルが上回っていましたね。

ジェノア戦術のキーとなったゴルダニガも僕が元々想定していた以上のモノは持っていて、それはそれで目を見張りましたが、絶好調のインテルを崩すアイディアやスキルは流石にありません。

ここに関してはバッラルディーニ監督も分かってはいるが、日程や勝点の可能性などを考量した結果の選択に思えます。あまり良い表現ではないかもですが、消去法的な。

というわけで、 HTにバッラルディーニ監督はゴルダニガシステムを諦め(薄めて)、テコ入れを試みますがフレームワークだけ。率直に言ってしまうと中身が伴っていたとは僕には思えませんでした。

これはもう印象もさることながらスタッツにも顕著に現れています。

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・本節の得点期待値
ジェノア(黄色)は後半、水平線の軌跡ですがこれはシュート数0ゆえ、です。
尚、前半のシュート数3本でもわずか0.1しか期待値を稼いでいない。
つまり、ジェノアのシュート3本は0.1点の価値しかなく、本試合は統計的に見てもジェノアの無失点は実に妥当であったことが分かります。
understatより引用。

一方、インテルサイドはスコアが示す通り、手段の変化がブラッシュアップに繋がった感。

取り上げたいトピックスもあるのですが、超端的に言えば「左が機能して、右がさらに活きる!」的な内容だったので、レビュー的には左をフォーカスすべきだな!という判断。

てなわけで、後半はすっ飛ばし!
インテルの圧勝です!

・スコア
インテル3-0ジェノア
(1分ルカク、69分ダルミアン、77分サンチェス)

●雑感−試金石は次に

いやはや。何というか。

本格的に仕上がってきましたね。

自身がインテリスタで贔屓目を抜きにしても強いですよ、今のインテル。

ジェノアが灯台ダービーを控えてターンオーバーをしているとは言え、好調なチームにほとんど何もさせずに、3得点を叩き込む。圧巻ですね。

ただ、僕は前節のミラノダービーレビューを下記のように結びました。

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ミラン戦のマッチレビューより抜粋。

堂々と予想しておいてなんですが、本節は僕が執筆当時に思い描いていたような試合展開ではありませんでした笑

ジェノアはバッラルディーニ監督の元、改新の歩を進めていることはもちろん理解してますが、それを加味しても、もっとパキッとした撤退守備で来ると思ったんですよね。

そんなわけで、上述の試金石的な一戦はパルマにスライドさせて下さい!笑

パルマ戦はもしかしたらインテルもターンオーバーするかもですが、むしろそれも含めて貴重な指標になりそうな一戦です。

徹底的に引いた相手に対して、縦に速い瞬間火力をどう出すのか?

シーズン前半戦は内容も結果も悪印象でしたからね。
しっかりと拭い切って前に進みましょう!

FORZA INTER!!⚫️🔵


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