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【ハンドル】セリエA 23-24 第17節インテルvsレッチェ レビュー

メリークリスマス!TORAです🐯
今回はセリエA第17節インテルvsレッチェのレビューです。

次節はレビューできないのでこれが年内最終です!今年もご覧頂きまして本当にありがとうございました。


●スターティング

●前半-ビセック劇場

スタッツサイトFBrefによると、16節時点でレッチェのポゼッション率はリーグ14位の45.8%。ピッチにワイドに使う+縦志向でダイナミックに攻めるレッチェはボールを保持し続けるチームではありません。

必然、インテルがボールを握るが大局に。対するレッチェの前からプレスを見てきましょう。

レッチェの前からプレス

✔︎チャルハノールには左IHウダンが前に出て番人に
✔︎バレッラにはDHラマダニがスライドしてマーク
✔︎両WGは背中でインテル中盤を切りつつ、対面のCBを監視
✔︎バンダは多少背中切りの練度に劣る

定番のアプローチですが、中盤自慢なインテルと戦う際にはその定番度が増すやつですね。

バンダはまだ立ち位置などの繊細さが不足しているように見えましたが、ラマダニが色々と無理が効くので設計としてはむしろ良かった感。というか、アルムクヴィストやクルストヴィッチに話題を持ってかれがちですが、ラマダニ凄すぎません?

あのヒュルマンドが抜けた属人的な穴をここまで完璧に埋めるとは!と僕は評価していますが、ビッグクラブに置き換えるとセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチの穴を”そのままセルゲイタスク”で別の人が埋めているってことですからね。レッチェ目線で言えばそれだけのバリューがあると断じます。

閑話休題。

続いて撤退守備。テーマは縦にコンパクト

レッチェの撤退守備

ポジション間がソリッドで、ピッコリもカウンターの先鋒ではなく明確なブロック要員のタスクでした。トランジション時はピッコリが中継点になってバンダが先鋒に。WGが先頭を残すはミランっぽい仕様で、レッチェのスタンダードです。

両フェーズに共通するのはインテル目線で左右CBが攻め上がりやすい余地があったこと、それが前進と攻略の鍵となること。

ということで、ビセックを取り上げさせて下さい。

大車輪だったウディネーゼ戦同様に自身のストロングを発揮しやすい土壌だったこの試合。しっかりとプレゼンスを見せつけました。

運ぶ。縦パスを付ける。そのままポジションをローテションして先でもプレーできる。と思ったらポゼッションもしれっとこなす。

プレシーズンから分かり切っていたことですが、彼は非保持よりも保持で輝くディフェンダー。特にキャリーに関してはバストーニのような異質さがありますね。

37:52〜に見せた剣道の突きみたいなブロックを貫くドリブルは圧巻。それで得たセットプレーで無理ある姿勢からボレーでバーを揺らすと、続くセットプレーでは「なんでそうなった?なんで決まった?」と凄いを通り越して最早笑えるバックヘッドでネラッズーリ初ゴールを記録。

ちょいちょい軽過ぎる守備をしちゃうこと(特にネガトラ時)は「こら」ですが、前半はビセック劇場だったと言っていいでしょう。彼はいろんな意味で目立ちますね!ヒーロー素質あり。

●後半-システム変更の意図は

前項で取り上げた通り、レッチェは前からプレス時に左IHがジャンプするので4-2-3-1ぽくなりますが、後半はボール保持においても4-2-3-1に。ソフト面だけでなく、ハード面を変更してきました。

後半は基本配置が4-2-3-1に

意図は「ビルドアップがどうたら!」などではなく、トランジションの改善でしょう。

重複ですがレッチェのアタックはピッチをワイドに使う+縦志向。具体的なメインウェポンは両WGのドリブルで、彼らを活かすための連携と走力はダイナミズムがありますが、故に裏返りで”会心の一撃”を喰らいやすいリスクを内包します。

本節相対したインテルのカウンターの威力は言わずもがな。特に個人戦術・技術・走力の三本柱による厚みは欧州視点でも指折りと自負できるもの。

前半のレッチェは4-3-3⇄4-2-3-1の可変タイムラグにそのダイナミズムゆえ苦しんでおり、ポジションがごちゃついてセカンドボールを回収できなかったり、カウンターに転じることができなかったり。また、致命的なスペースを提供してしまう温床に。

「だったらもう可変しない!4-2-3-1、一本で戦おうぜ!」としたのがダヴェルサ監督によるテコ入れの背景と考察します。

結論、効果的だったかなと。

後半の立ち上がりは整理したことでイケイケな”らしさ”も前面に出てました。この時間帯で得点が決まっていたら一気に面白くなったと思いますが(面白くない)、カルロス・アウグストのあれはあまりにハンドじゃなさ過ぎて逆に笑えました。

●後半-質的優位が浮き彫りに

可変のタイムラグが無くなったレッチェですが、マークがハッキリしたことでの弊害も発生しました。

中盤の質的優位

特に前半にイエローカードを貰ったジョアン・ゴンザレスの代わりに入ったカバは身体能力の高さと、意外と?足元の技術があるのは窺えるものの個人戦術はまだまだ勉強中の印象で、ムヒタリアンの老獪なムーブに後手を回ってしまうシーンが散見。

また、後半10分を経過したあたりから目立ったのは今季インテルの象徴であるアジャスト力。マークが明確になったことを察し、それならば!とソフト面の微調整を図りました。具体的には2点。

ⅰ)中盤のポジショナルプレーがフレキシブルに。膨らんだり、引っ越したり、ローテーションしたり。

ⅱ)左サイドアウグストとバストーニの縦の入れ替わり

もちろんどちらも前半にもやっていますが前者はより色濃く、後者はより大胆にディテールチェンジ。これを試合が動いている最中行い、盤面を掴むことができることこそ練度が高まったという所以。

58:00手前ではバレッラとムヒタリアン、アウグストとバストーニがWポジションチェンジ。直後、GKのクリアをカットしたムヒタリアンがカバの背後を突くパス&ゴーを決めています。

58:15〜のシーン

トランジション発生で配置が崩れている大前提はありますが、ラマダニが中途半端な立ち位置+カバが中途半端などっちつかず対応でアルナウトヴィッチのパスコースが開通。瞬時に把握したムヒタリアンの突撃を許してしまいました。

このシーンでは左の入れ替えは別に変わっても変わってなくてもですが笑、基準点を乱さなくても小さなストレスを与えるは脳の消耗に繋がります。でもって、バストーニ、パス欲しかったねw

意図を感じられる仕掛けで殴ったと思いきや、この試合はいつもの理不尽キャリーが鳴りを潜めていたテュラムが突如目覚めて敵陣を侵略し、通常配置からバレッラとアルナウトヴィッチのハーモニーで追加点を上げるんですからエグいですね。笑

セレブレーションも最高でした。最高。チームの一体感の現れですね。

それまでの文脈で決められるし、突如、組織的な脈絡なしでも殴ることができるインテル。これもまたアジャスト力。そして、しつこく言っている「良い意味で再現性がない」です。

試合はその後、出てこなければいけないレッチェの攻勢が続きます。一見、押し込まれ、シュートも許しますがゾマーが余裕を持てる範囲の難度。見た目よりも守れており、守護神が確実にシャットアウトするには守備陣が火力を削ぐことの重要性を再確認させます。

例えるならコレ

終盤にバンダが主審への暴言により一発レッド、タイムアップを待たずして試合は閉幕。

尚、バンダが激昂したビセックのタックルはパーぺきにノーファウルでしたねwそこに至るまでにフラストレーションが溜まりに溜まっていたということでしょうが、それは見た目よりも殴られていないことの証左でしょう。

全体を振り返ると、最後にチョンボをしてしまったもののやっぱり左WGバンダは嫌だったし、反対岸にアルムクヴィストがいたらと思うと恐怖を感じます(負傷中で本節出れず)。

と書くとストレフェッツァが下位互換的な感じになってしまいますがもちろんそんなことはありません。アルムクヴィストとバンダが並ぶとブースト全開ですがその分リスクも増しますし、ストレフェッツァも…って、このくだりは別にいいや。笑

単騎力の上で、対インテルで勝ち点を掴むためにやれることはやった、導入したソリューションは正だったとも思いますが、その先々でホームチームがハンドルできた点が勝敗の全てでしたね。

完勝でしょう。インテリスタは素敵なクリスマスプレゼントを貰いました🎅🎁

●気になったスタッツ紹介

それではスタッツを見てほくほくするお時間です。

まずは言わずもがなですが、ビセックの得点とアルナウトヴィッチのアシスト、控え組の黄金数字は結果のバリューをグッと上げてくれました!89試合連続出場中のエースキャプテンが不在となったタイミングですから尚更。

続いて、得点期待値とGK目線の失点期待値。

レッチェの得点期待値一覧、FBrefを引用

FBrefによるレッチェの得点期待値は1.2と悪くない数字を積み上げましたが、内訳は前半最後にあった決定機が半分を占めます。完勝とドヤ顔しましたが、あれはね、うん、やられましたね笑
完全に一点モノでしたがストレフェッツァがふかしてくれて事なきを得ました。

2つ手前でバンダが楔として絡みましたが、ダルミアンは流石に疲労なのか今日はバンダにやられ気味でしたね。インスタでビセックとテュラムが「休んで」とコメントしてましたw

後半は期待値が低いシュートが続いており、やはり守れていたことを示唆しますが、意外とGK目線の期待値が高いですね(バンダのミドルシュートそんなにだった…?笑)。後半、計0.64点分の価値を持つ枠内シュートを抑えてくれたゾマーさん。いつもありがとう。

インテルの得点期待値一覧、FBrefを引用

ビセックのシュートも期待値的には0.1を下回る低数値。いや、そりゃそうですよね、あの姿勢と当たりどころでなぜ決まるんだって感じです。記念すべきインテル初ゴールはゴラッソ!

対して2点目は確信のゴールですね、見たままだけれども!確信を演出したアルナウトヴィッチのアシストにも万雷の拍手ですね。報われてくれて本当に本当によかった。

最後にスタッツというよりもレコードの紹介。

なんと我らがシモーネ監督とインテルがセリエA史上初となる記録を達成。これは…え、めちゃくちゃすごくないですか!?(”単一の監督のもと”に確実に含みがあるんだろうけどw)

しかし「勝って兜の緒を締めよ」、先制点よりももっとイージーにネットを揺らせたシーンがいくつかありました。「決めるべき時に決めないと痛い目に合う」サッカーの教科書に載るべき”あるある”、今季はもう授業料をお支払いしたので同じ轍を踏まずに今後も記録を伸ばしてほしいものです。

以上、最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

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