【真の敗北者】セリエA 23-24 第10節インテルvsローマ レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はセリエA第10節インテルvsローマのレビューです。
●スターティング
●前半-様式美を感じるほどに
主力の負傷離脱、CLではなくELを戦うが故の過密日程。
10月ここまで全勝のローマですが、本節を迎えるにあたって台所事情は決して良くはありません。
そこにカウンターに重きを置く彼らのスタイルを鑑みれば、インテルがボールを持つ展開になるのは容易に想像がつきますが、とはいえ想定外だった、というのが本試合のミソ。
「まさかここまでドラスティックに引いてくるとは」
前半のシュート数は0、クロス数0、コーナー0。
ゴールに近づくことができなかった、いや、近づこうとしなかったローマ。
自陣で耐えて耐えて、蜂の一刺し、いや狼の一噛みを狙う。
率直に言ってしまえば彼らの勝利は勝点を得ることそのもの、その値は3か1かを問わない。
ということで、ゴール前にバスを停めたローマをインテルがどうやってどかせるか?が大局となりました。
インテルのビルドアップスタートに対してはクリスタンテが一列上がる設計。
マンツーマンっぽく見せますが、前からプレスをかけるトリガーは非常に非常に渋く、引いて相手を迎え入れ、ミドルサード以下で戦う迎撃に徹底。
クリスタンテも一列上がったとて、自身が上がった裏を常に気にしており、少しでも前進されたら中盤に戻って5-3のバス化となりました。
とはいえ、”気が利く”という言葉が皮を被って歩くような彼が上がる設計は、ローマ唯一のリスクの取りどころ。
彼を釣ったり、逆にこちらが突っかかって混乱を与えるのがインテルにとってはコスパ良い殴り方だったと考えます。
が、どちらかといえば右で持ち上がることが多かったインテル。
今日のバレッラは斜めに落ちて『第二の心臓』となるタスクでしたが、ドゥンフリースがインテリスタも「誰?www」と疑うほど好調だったことに加え、パヴァールの連携向上(ポジショナルプレーの浸透度)でフィニッシュ隊への出向も増えたことで”彼がこれをやる価値”を感じられました。
しかし、ローマの徹底リトリートを崩すには至らず。ただドン引くだけではない、緻密な設計も存在する守備は美しさすらありました。
特徴的だったのは”絞り方”
イレギュラーはもちろんありますが、原則はこのスタンス。
この設計だと現代サッカーでも最も危険なスペースのひとつである”ポケット(=ニアゾーン)”が空くのですが、そこはIHが埋める構造です。
エルシャーラウィはもう一人のFWよりもアップダウンできるので、インテルの右重心と噛み合ってしまったのも痛かった。この観点からも左がコスパ良さそうでした。
最終ラインの5枚の内、4枚は中央とハーフレーンを埋めて守る。
設計、相互理解、潔さが紡ぎ出す守備に古き良きカテナチオを想起した方もいるでしょう。僕は様式美を感じました。
ローマは代償として逆側の大外を空けることには目を瞑ったので、インテルとしては活路を見出したかったのですが、そこに届けるボールの質がいまいちだったのが前半のもやもやポイント。
前半のシュート数は0、クロス数0、コーナー0。
それでもゲームプラン通りだったのはローマでした。
●後半-アクセルを踏んだインテルともう踏めないローマ
インテルはHTに選手交代。前半にイエローを貰ったパヴァールに代えてダルミアン。
得点が欲しい中、フィニッシュ関与が効いていたパヴァールの交代は懸念もありましたが、一方で”左から作る”が増えることでクリスタンテを引っ張れることにも期待できる難しい交代でした。
結果、やはり左重心が増え、必然バストーニの攻め上がりも前半より明らかに目立つようになりますが、得点が欲しいインテルはさらにアクセルを踏みます。
ⅰ)右CBダルミアンの両上がり
ⅱ)右IHバレッラの左サイド加勢
前者は後半開始早々に見られました。48:10~の一連など。左CBバストーニが上がったまま、右CBダルミアンも攻め上がる両フック。
当然、後半よりもラインを上げたことが由来しますが、チャルハノールが低めを担保しなければいけないのがネックではあります。攻撃面でも守備面でもね。
仕掛けとして方策感が強かったのは後者。
直近だとベンフィカ戦でかましにかましてやった手法で、試合によって濃淡はあるもののオプションとしては確立したと見ていいですね。
https://note.com/interamara/n/nb556085ce49a
個人的なお気に入りは53:30~の一連。
左で持ってやり直し→右や中央に振って再び左へ→バストーニの縦パスを受けたムヒタリアン→の前方に走り込む出張バレッラへ。
ここはカバーに入ったジョレンテに引っ掛かりましたが、最終ラインの中央CBジョレンテを釣った上で同数を演出できた素晴らしいビルドアップでした。
見返してみると、ムヒタリアンがボールを受ける前にバレッラのランニングに気づいており、バストーニに「ここに出して」と指示出しているのがたまらん。よろしければアーカイブある内にご確認ください。
アクセルを踏んだインテルに対し、ローマはもう踏めませんでした。
すでに閂をしっかりかけた上、目的を果たすためのバランスは取れており、これ以上傾倒するのは逆にリスクを孕む可能性が。
例えば、FWを1枚削り5-4-1にすれば守備力的な側面は向上する”かも”ですが、ただでさえしんどい陣地回復がさらに絶望的になり、連打を浴びる回数が増加する恐れも内包。結果、裏目になるでしょう。
また、守備力は向上する”かも”、としましたが人数が増えることでネガティブな渋滞を起こすこともありますし、ドロー着地が許容から狙いになると流石に選手たちのモチベ―ションにも影響するかもしれません。
デッドロック状態だったローマが取ったアクションは時間の針を進ませたこと。
ロマニスタの方の反発を承知で書きますが、接触を増やす、わざと転ぶ、オーバーに痛がる、審判に詰め寄る、リスタートを遅くする。
つまり、マリーシアという手段で時間を殺しにかかりました。歯に衣を着せず書きましたが、まぁこれは事実として否定できないでしょう。
ただしこれもサッカーです。
インテル目線で言えばボローニャにもやられました。逆にインテルもこの試合の終盤はラウティがライン際で身体を張って、時間を消費させましたしね。ファンとしてぶーぶー!とは言えど、そのものを否定することはできません。
マレスカ主審が何度かマレスカしたこともあり、両チームともフラストレーションもあったでしょう(どっちも被害はあった)。状況が焦げ付く中、試合は60分過ぎからややオープンになります。
●後半-珠玉の物語
ようやくローマにもシュートが生まれます。65分にFK、これは壁に当たりますが、直後スローインからクロスを入れられるとクリスタンテに合わせられました。
コースはやや甘かったものの至近距離。スタッツサイトFBrefによると、GK目線の被得点期待値は0.4。
あくまで額面上は「平均的なGKであれば40%失点する」と読み取れる比較的難度の高い場面。そう見せないしれりセーブのゾマー。今日も健在。
選手交代も進んだ終盤、ファンが固唾をがぶ飲みする中、焦げた空気を切り裂いたのはインテリスタ寵愛のアスラニ。完璧なスウィッチをディマルコに送ります。
からの極上クロスはジャストなパスをジャストにトラップしたことで生まれる余白あってこそ。
最後に切って落としたのは僕たちのNo.9。
彼がいたら背中の数字は違ったでしょう。
彼がいたらこんなに使われてなかったでしょう。
彼がいたら偉大なレコードは残せていなかったでしょう。
新しい9番がドローという名の敗北を覚悟する終盤にウノゼロの決勝点を挙げる。
これ以上ないエクスタシーなストーリー。
マルクス・テュラム、ここにあり。
珠玉の物語とびきりの笑顔で結びました。
●雑感-真の敗北者は
今季のインテルvsローマは怨嗟響めく一戦。
試合前も大層話題になりましたね。僕自身、器が小さいものでダービー並みに負けたくない一戦でした。
さて、話題と言えば取り上げなくてはならないのがホイッスル。
「例の彼がボールを持つたびに鳴らし、愛憎表裏一体の怖さを身をもって知ってもらう」ことが目的。
5万本を用意する!から始まり、3万本に本数が減ったり、吹いたら罰金やクラブへの処罰があるからやらないんじゃない?アプリで代用?などなど。
様々な情報が交差しましたが、最終的には4万本の配布がファイナルアンサーかな?で、実際、試合中にも吹かれてましたね。
全く大したことなかったけどw(個人的な感想)
というのも、彼のボールタッチ数はフル出場した選手の中ではワースト。いや、なんなら途中交代の選手より少ないです。
だもんで、そもそもの機会が少ないという状況に痺れを切らし、やむを得ず”触りそうになったらでもOK!”と鳴らすボーダーが下がり、なんだかチープに。
というか、そもそも普通に口でブーイングしてた割合のが多かったのでは…?
尚、こちらのホイッスルが1個当たり88円なので、4万個というスケールメリットであれば1個20~40円になるでしょうか。知らんけど。
仮に30円だとすると…1,200,000円。ふぁ!?120万円!?
フライヤーも印刷していましたが、4万部印刷したらバカにならないですよ。
にも関わらず、吹く機会に恵まれず、雑な存在になるホイッスル。試合後も完全に忘れられてましたもんね。
生まれてきたレゾンデートル。
真に負けたのはこの漆黒の弾丸かもしれませんね。
最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯
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