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【風林火山】インテルのスタートダッシュを支えた守備を紐解く

こんにちは!TORAです🐯

セリエA 23-24シーズン。

我らがインテルは3連勝!
得失点差考慮で単独1位、さらにリーグ唯一の無失点と最高のスタートダッシュを切りました!

あくまで私見ですが、開幕時の質の高さは20年以上応援している中でトップですね。断言しちゃう。

現状インテルに必要なのはソリューションではなく継続性

開幕3節で判断するならば必要なのはどこまで安定して長いシーズンを走り切れるかが重要。まぁ、それが一番難しいんだろうけど

ということで、CL準優勝や37・90の乱を経て、一つレイヤーを上げた間のあるインテルを紐解いていきたいと思います。

3試合5得点(しかもPKなし)のラウタロ、ルカクとジェコどちらのタスクもこなしてくれるテュラム等々、攻撃面ももちろん見逃せませんが、本記事で取り上げたいのは守備

ボール非保持やトランジションにフォーカスして進行していきます。

今季の非保持を例えるなら下記の熟語がよく似合う。

「風林火山」

一文字ずつ説明していきます。


●風のように早く

ネガティブトランジション時のカウンタープレスを指します。

カウンタープレスはシモーネ監督が前任流から変化を出したい特記項目の一つに思えます。事実、昨季序盤も着手していました。

詳細を考察しようとすると一記事分のボリュームになってしまうので割愛しますが、結局のところ昨季はフェードアウト、諦めました。

記事内でも言及しておりますが元から(PSMから)質は疑問符を付けざるを得なかったですしね。

対して、今季はトライに対して充実の収穫

最大理由は詰まるところ配置の質と考えるのですが、話を膨らましづらい(配置が整っている、距離感が良い)のでスルー。

代わりに最大ではないが欠かせない理由として挙げたいのがツートップの機動性

前からの守備において、従来はラウタロがチェイサー。相方はジェコが起用されようが90番が起用がされようがパスコースの制限&誘導役が基本軸でした。

ラウタロが動ならば、後者は静

もちろん静である彼らも人を猛烈に追っかけたり、必死にプレスバックしてチャンスの芽を潰すシーンもありますが、それは好条件で嵌めるチャンスだったり、誰かが上がったポジションを埋めるためのムーブ。言ってしまえばイレギュラーです。

誤解を恐れずに書くと、フィールドプレーヤーの中で最も運動機動性が低いのが彼ら。

カウンターの起点となるためや相手CBに睨みを効かせピン留めさせるなど、別の目的に由来するので悪ではありません

しかし、

撤退守備を攻略(=押し込んだ)

攻撃失敗

相手がビルドアップで反撃 or クリアで脱出

みたいな局面において、その反撃や脱出に対するピンポイントなリアクション。つまり、

ⅰ)ビルドアップやクリアの質を落とし、再度トランジションを発生させるための阻害

ⅱ)繋がれた後、背中でコースを消しながらホルダーを囲うプレッシャー

この強度がどうしても出ない。

※ヴィオラ戦のレビューできなかったので、図解のサンプルになってもらいます

従来は特性上しょうがないこと。

というか、昨季はコンテよろしくの『引き付け疑似カウンター』が最終着地だったので本局地での強度は求めてなかったんですよね。

一方、加入時の考察記事でも触れておりますが、テュラムは"追える"タイプです。

記載するまでもないですが、猪のようにただ追うのではなく、インテリジェンスを持ってしてのチェイジングは、その後のカウンタープレスの質を高める下ごしらえ。

これまで凸凹の補完システムでやっていたので凸と凸の関係性は不安、と上記記事で言及していましたが、少なくても3節時点では完全に杞憂でした。

●林のように静か

非保持において今季最もキャッチ―なのはここだと見ています。

前からプレス時の可変。

明らかに静的になりました(プレスが激しい激しくないではなく、可変っぷりが静かになった)。

もはや噛み続けて味がしなくなってしまいましたが、インテルの前からプレスはバレッラが一列上がる形がスタンダード。

対4バックは左SBに、対3バックは左CBに圧をかける

しかし、今季は“最初から”上がる回数を減らしています。

フィオレンティーナ戦は対策としてなのか、ミラーリングの同数プレスを仕掛けていたので、いつもの『バレッラ上がるモード』は不要だったかもしれません。

対面をそのまま捕まえる同数プレスは意外と?珍しい

が、第1、2節も同様であったこと。そして、そもそもインテルにとっては珍しい同数プレスの形を採用することの源泉が『バレッラ上がるモード』をスタンダードにしなくなったことだと考察します。

背景に関してはまだ対3バックのサンプルを積み重ねて考察したいのですが、やはりツートップがどちらも追えるタイプになったことが大きいと見ています。

おそらくやりたいことの大枠はこんな感じ。

2人が追いかけ、中盤が機を見て一列上がる。後の先。

要は開幕戦のこれなんですよね(下記、開幕戦のレビューを抜粋)。

「IHが一列上がる」を左右でやりたい
しかもハード面じゃなくてソフト面の機能性で。
ということなんでしょう。

主観では、対モンツァは周囲が評価するほどの勝利ではないと見ています。快勝だけど完勝ではない

その際たる事由が上記のアプローチによるプレスのかかり方(=練度の問題)なんですが、続く2試合は紛うことなき完勝だったので、引き続き「どうなるか見てみよう」ですね。若干浮かれつつ。

●火のように激しく

やや分かりづらさはあるものの、最も個人的な琴線に触れたのは本項。

タックルが明らかに増加しています。

タックルが増加。

なんだか少し薄っぺらく聞こえるかもですが、「デュエルが増加した」だと定義が曖昧なんですよね。デュエルって便利な言葉だなと思うんです、だから僕も使うんですけどw

具体性を持たせるためにタックルとしました。つまり、足を出してボールを奪うプレーを指し、対人色が強い。

有名どころで言えば近年のミラン、マンツーマンをぶいぶい言わせていた時のアタランタ(3,4年前)なんかと比べると一目瞭然なんですが、インテルはタックルが少ないんですよ。

これまた記事で擦り切れるくらいに扱っているトピックスですが、インテルは人ではなく配置重きの守備

人から直接ボールを奪うというよりも「追い込んで収束させて絡め奪る」という表現がよりマッチするでしょうか。

今季は一味違う。

前項に挙げたカウンタープレスの取り組みとも紐付きますが、5-3ブロックの撤退守備のフェーズでも人に対して出ていく速さ、距離の短さが上昇した印象です。

もちろん、上昇した=良いではありません。

出て行く分、距離を詰める分のリスクは孕みますが、スキルフルなボールプレーヤーにスペースと時間を与えてやられてしまうのは”インテル失点あるある”の一つ。

ベースは配置だけど、ここぞではガツンと対人守備を仕掛ける設計にシフトチェンジを図ろうとするのは応援したいですね。

ということで、FBrefによると3節までのインテルさんのタックル数はなんとリーグ1位

昨季がリーグワースト4位といえば、その増加っぷりが分かるでしょう。

●山のように不動

特に思いつきませんでした。動かないとダメだよね。

●まとめ

まとめるとシモーネ監督は「臨機応変さ」を推し進めたいんでしょうね。

ソレっぽく表現するなら局面対応力。

舵を切って向かう先はやはりTHE・トレンドなんでしょう。

重複ですが昨季もトライして、そして失敗しています。で、行き着いた先はコンテのリバイバル。

勝てば官軍。

トレンドもリバイバルも良し悪しはないんですが、昨季はトレンドの最高峰に位置するクラブに負けてビッグイヤーを逃したので思うところがあるのが本音です。

最近(も)カッサーノにぶった切られたシモーネ監督を擁護すると、昨季に関してはやりたかったことがやや高望みでしたね。結果論だけど。

90番がそのシンボル。

彼のポテンシャルを引き出そうとすると、どうしてもサッカーそのものを彼に寄せないといけない

なのに負傷離脱→真価を発揮するまでにシーズン終盤の最終コーナーまで時間がかかった訳ですから心中お察ししますね。その後も含めて、ね。

また中盤の厚みも足りませんでした。

推しの僕自身も結果オーライだったかと思いますが、当初駒が足りていない右CBよりもサマルジッチを優先したことが答えで、シモーネインテルの肝はやはり中盤だと思うのでローテーションしてもある程度の品質を保ち続けないといけない。

名鑑の作成途中ではインテルに所属していたサマルジッチ(勝手に漏洩)

前者はテュラムの存在がそのままソリューションになりそうな期待。

PSMはまだ発色がなかったですが、開幕してからはルカクとジェコのハイブリット味がありながらも両者にない色も滲んでおり、さらなるフィットが楽しみでなりません。

中盤も最終的には6+1の枚数構成を実現。

お財布事情的にやや贅沢な気もしますが、怪我やフィットなど目論見が外れても保険が適応される点はシーズンを走り切る上で甚だ大きい。

紆余曲折があり過ぎましたが、なんだかんだ昨季よりも土壌が整っていると思うので、シモーネ監督は勝負の一年ですね。いろんな意味が込められたリベンジだ。

最後に「勝って兜の尾を締めろ」の意味を込めてあえて懸念点を挙げて締めます。

スカッドの完成度は上積みの匂いがぷんぷんしつつも、不安も内包しています。

風林火山における、風と火の頻度が多い。

端的に言えば、ちょっと強度が高すぎかな、と。

もちろんうまく流しているところは流していますけど、風と火の頻度が多いし、瞬間火力も高い。

定量的に見るために走行距離のスタッツをご紹介します。

ⅰ)中盤の走行距離
中盤は誰かしら3試合とも12kmオーバーを走ってます。開幕戦に至ってはなんと3人とも

ちなみにテュラムが本節における最高速をマーク

毎試合スタッツを追っている身として発すると、(セリエAにおける)走行距離は11kmと12kmに壁があります

と言っても、12kmは決して珍しい値ではなく中盤が頑張るインテルにおいてはよく見る数字。

が、”3人とも”となると話は変わります。中々見ない。そもそも中盤3枚いたら誰かしら途中交代するしね笑

さらに言えば、おそらく2、3節も途中交代がなかったら12kmオーバーで着地していたでしょう。特にフィオレンティーナ戦は間違いないかと。

結論、中盤は「むしろ7枚ないと困るかもしれない」です。ミッドウィークの試合が始まった際にどうローテーションするかの手腕は見物。

ⅱ)前線の走行距離

もっと心配なのがFW陣。
凸と凸でやり方を変えたので、明らかに昨季よりも走っています

サンチェスは追うタイプと断じれますが年齢的に限界があるでしょうし、アルナウトヴィッチはジェコよりも機動性に優れていますが、そもそも追うタイプじゃない。

ラウタロやテュラムが出場していない時、考えたくないですが負傷離脱してしまった際にアジャストできるのか。それとも異なる出力で戦うのかは重要なチェックポイントになりそう。

特にラウタロ。3節はチームの走行距離4位にランクイン。

彼自身がフル出場し、物理的に走行距離が積み重なる中盤やWBの交代が多かったとはいえ、10.37km走った挙句、1.078kmのスプリント量を記録したのは気になりますね。

あ、3節もテュラムがトップスピードを記録してる

多いですね、ハッキリ多いです。

特にプロヴィンチャだとFWもめちゃくちゃ汗をかくのは珍しいことではないのですが、少なくてもインテルのFWが10km走って、内1kmがスプリントというのは働き過ぎ

しかも、彼、キャプテンでエースという付加価値がつく人材ですからね。パフォーマンスの低下の影響は甚大です。

例えば、ストーミングという言葉が最高潮にヒートアップしていた時のリヴァプールでさえ、その後はポゼッションの時間を作ることに舵を取り、90分の中で出力する時間とそうでない時間の棲み分けを目指しました。

我が軍もスカッドの厚みをフル活用しつつも、うまく負担をコントロールする狡猾な術を身につけることが、自他ともに認める今季最大目標『スクデット奪還』の鍵になるかもしれません。

以上!
最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

次節は最序盤の山場!ミラノダービー!
絶対勝利!超がんばれインテル⚫️🔵




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