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【希望と試練】セリエA20-21第32節スペツィア-インテル レビュー

いつも通りの強みをみせながら、課題に対する回答も提出した。
足りなかったのは結果だけ。
しかし、それこそが今季のインテルにとっては厄介な試練なのかもしれない。

こんにちは!TORAです🐯

セリエA第32節スペツィア-インテルのマッチレビュー。

今回はお得意の前半フォーカスレビューです。
かつてないくらい特定事項に焦点を当ててますw

●スターティング

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・スペツィア選手交代
46分、フェレール▶︎ヴィニャーリ
62分、ピッコリ▶︎ガラビノフ
79分、マルキッザ▶︎デルオルコ
79分、ファリアス▶︎ギャシ
84分、マジョーレ▶︎セナ
・インテル選手交代
73分、ペリシッチ▶︎ヤング
74分、エリクセン▶︎サンチェス

●前半-スペツィアの前からプレス

前節ナポリ戦のレビューで

インテルビルドアップ隊に対する許容外のハイプレス

という課題を指摘したのですが、本節のインテルはひとつの回答を提示しました。

そもそもエリクセンフィット後の選手配置を厳密に表すと、3-5-2というよりも、タスク由来の3-4-1-2という表現が的確かな、と考えているのですが本節はその濃度を上げてきました。

今回はもう(変則の)3-4-1-2って言っちゃっていいと思います。

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✔︎エリクセンは低めスタートで完全にビルドアップ隊入り。
✔︎したがってブロゾヴィッチとの横関係は明瞭。
✔︎けど、バレッラはいわゆるトップ下ではなく、右IHとして動的なポジションを取る。

さて、予想通りスペツィアは前からプレスを積極的に仕掛けてきます
設計というか本来の狙いは以下の通りと見ました。

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✔︎前線3枚はインテル中盤3枚のパスコースを切りながらインテル最終ライン3枚を監視。
✔︎両IHも対面のバレッラとエリクセンに張り付く。
✔︎CHリッチはブロゾヴィッチまで距離があるので、状況に合わせてケアしたり、引いて最終ラインに数的優位を確保。

ナポリのように深くまで差し込んでくるようなハイプレスではありません。

スペツィア前線はインテル最終ラインがPA外までボールを持つのは許容。
インテル中盤へのパスコースを切りながら、ある程度までは最終ラインを引き付けるようなスタンスで監視します。

この際、エステヴェス、マジョーレの両IHも対面のIHにしっかり付いていくので、スペツィアはWGとIHでバレッラ、エリクセンを挟むようなアプローチを取ります。

前線と2列目を圧縮させる、前からプレス

シュクリニアルかバストーニが持ち運んでくるようなら対面のWGがプレッシャーをかけます。

ここがスペツィア「圧縮式前からプレス」のメリット
上図で例えると、選手配置が近い分、マジョーレとピッコリが位置取りのアジャストだけでバストーニのパスコースを面で防げます。

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実際、3:00付近のシーンではこのアプローチがスペツィアの意図通りの出力にはなっていたと思います。

しかし、インテルはしっかりと策を講じていました。

●前半-いつも通りで前からプレスを攻略

前項で例に挙げた3:00付近のシーンの続きを見てみましょう。

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✔︎エリクセンのパスコースは切られ、ペリシッチへと誘導されるも…
✔︎ラウタロが降り、イスマイリが釣れたことで生まれたスペースに縦一閃のパスが通る。

スペツィアは「圧縮式前からプレス」の構造上、両SBもしっかりとインテルWBに付いていかなければならないので、どうしてもCB-SB間のギャップは生まれがちです。

その環境下でインテルツートップのラウタロとルカクはスペツィアIHが前に出たスペースにどちらかが降りて、斜めの位置関係を創造。

これにより、降りなかった方のトップが使いたいスペースを大きく確保できます。特にフィードの精度が抜群のバストーニ。スペースがある状態でボールを持って前を向くことが最も真価を発揮できるルカクにとっての恩恵は大きく、スペツィアからすれば非常に厄介だったでしょう。

この手段は再現性があり、間違いなくインテルがスペツィア攻略の共通認識として装備をしていたと想定していますが、お馴染みの型でもあります。

戦術的なメインディッシュはここから、と僕は思っています。

●前半-いつも以上が新しい形に

インテルはお馴染みの装備の他に、スペツィアの前からプレスをスカす、新装備を準備していました。
冒頭の特定事項はこちら。今回のレビューは新装備にスポットライトを当てます。

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✔︎ブロゾヴィッチかエリクセンが最終ラインへ落ちる。
✔︎デ・フライ、ブロゾヴィッチ、エリクセンで小さなトライアングルを形成。
✔︎その分、シュクリニアルとバストーニはワイドに膨らむ。

要はボランチの最終ライン落ち

「擬似的なサリーダ・ラボルピアーナ」と表現すればいいでしょうか(以下、便宜上”擬似的サリー”と表記)。

ゆえ、3-4-1-2の選手配置表記が咀嚼しやすい

上述で「本節のインテルは3-5-2ではなく、(タスク由来の)3-4-1-2」と記載したのはこの”擬似的サリー”に起因します

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お気づきの方も多いと思いますが、ブロゾヴィッチが一時的に4バックになる手段は、昨季のインテルは割と頻繁に行っています。

昨季はブロゾヴィッチが抑えられたら、ビルドアップが機能停止になりがちだったので彼の位置的優位を生み出すために施行されていました。

一方、今季は流れの中で「一時的4バック事象」が起こることはしょっちゅうですが、事前プランとして「”擬似的サリー”で戦うぜ!」というのは僕の目が節穴だったり、記憶が抜けていない限り、今季初です。

「一時的4バック現象」はコンテ監督のファンサービスの一環として自身のSNSでも取り上げていましたね。

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コンテのInstagramから引用。

「流れの中で事象っぽく起きる」と「最初から擬似的サリーで戦うぜ!」は、実は似て非なるものと考察していてここはしっかりと深掘りしたいです。

前者、表現としては”ダウンフォー”が適切だと思っています。

文字通り、ブロゾヴィッチが降りて最終ラインが4枚に(厳密に言えば、ダウンスリーが正しいと思いますが、話が長くなるのでここでは割愛、ここでは咀嚼しやすさ重視でフォーにします)。

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最大目的はブロゾヴィッチの位置的優位の確保と、それを埋めるために相手選手が出てくれることを期待する、つまり”釣る”ことにあります。

後者も位置的優位の確保が主ですが、その対象がバストーニとシュクリニアルと睨んでいます。ここがポイント。

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✔︎デ・フライ、ブロゾヴィッチ、エリクセンがスモールなトライアングルを形成することで中央に怖さが生まれる。
✔︎その為、ワイドに膨らんだバストーニとシュクリニアルが位置的優位を得られる。

この二つのファクトはどちらも重要です。

スモールなトライアングルは相手のプレッシャーにかかりやすく、適切な判断力とそれを体現するプレー精度が不可欠です。その点、ブロゾヴィッチとエリクセンは取り上げるまでもないですが、デ・フライもまた見事でした(デ・フライだって取り上げる必要ないでしょ!のツッコミは無しでお願いしますw)。

本節で目を惹いたのは身体の向きや角度付けの上手さ
パスを受ける際の身体の開きやアングルで相手を誘導して、次のプレーに繋げるスキル。

何度かありましたが、振り返りやすさで言えば、上述で紹介している3:00のシーン。

その直前でデ・フライは身体の向きでアグデロを誘導し、その裏を取ることで自身とバストーニへのパスコースを捻出しています。
(本当はより分かりやすい「コレコレ!」ってシーンがあったんですが、時間を忘れてしまい探しきれませんでしたw)

こういった判断力とスキルという土台あっての機能になるわけですが、それはバストーニとシュクリニアルに関しても同様。そもそも彼らの持ち上がりに対する戦術理解度と体現する技術がなければ機能しません。

今季のレビューで何度か書いてますが、改めて。シュクリニアルはこの点で本当に成長しました。素人目でも断じれるほどに感じます。

非保持、つまり守備に関しての批判もありましたが、個人的にこれは元々心配していなくて、保持が良ければ非保持も良くなる。その逆も然りはシームレスなサッカーあるあるで、シュクリニアルの不調そして復調はやはり保持の部分に思えます。

話を戻しますが、この二つのファクトの機能でスペツィアのプレス基準点が乱れます。改めて先程の図を見ていきましょう。

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✔︎スモールなトライアングルが機能しているので、両WGが膨らんで付いていくことができない。
✔︎マジョーレとリッチが最終ラインに落ちるエリクセンとブロゾヴィッチをどこまで付いていくかが不透明。

特にビルドアップの起点となったのはバストーニ。

これはシュクリニアルよりもバストーニの方が持ち上がりに長けているから!とうう理由ではなくて(若干それもあると思うけど)、本節は左WBペリシッチがハーフレーンに絞って位置することが多く、大外に膨らんだバストーニが使えるスペースが広大であったことに起因します。

ここまでシーズンを追ってきたインテリスタにとって、その意図を汲み取るのは実に容易ですね。

インテルの崩しの核である右サイド
特に逆サイドのWBハキミのアイソレーションを活かすため、です。

5:40〜のシーンはその代表例でしょう。

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✔︎スモールトライアングルでスペツィアのプレスを寄せる。
✔︎大外に膨らんだバストーニ、運ぶドリブルで攻撃参加。
✔︎ペリシッチがハーフスペースから大外に。ラウタロもボールホルダー側にやや落ちる。
✔︎スペツィア、それに対応するためにスライド&微調整。
✔︎ハキミのアイソレーションが活きる。

当レビューの便宜上の表現、”ダウンフォー”と”擬似的サリー”の決定的な差異はこのシーンにおけるバストーニの攻撃参加の部分

サイドバック(のタスク)を最後列から解き放つ

そもそもサリーダ・ラボルピアーナは一般的に4バックにボランチが落ちて、3バック化することを指します。

したがって、インテルのように3バックにボランチが落ちて4バック化するのは若干ニュアンスが異なる
触れませんでしたが、”擬似的サリー”というワードが出た時点で首を傾げた方もいると思います。

ゆえ、インテル従来の最終ライン落ち「は」ブロゾヴィッチ落ちを”ダウンフォー(ダウンスリー)”と表現していました。

しかし、サリーのメリットは配球役の位置的優位、そして、SBを前に押し出すことで生まれる高い位置での数的優位

これを考慮すると本節の最終ライン落ち「は」、”擬似的サリー”と表現したくなる!というのが僕の意見です。

これを後押ししてくれるのが40分に上げたシュクリニアル。右サイド深くからのマイナスのグラウンダークロスです。
惜しくもカットされましたが、シュクリニアルがここまでサイドを深く抉って、しかも得点に繋がりやすいマイナスのグラウンダークロスを上げたこと、かつてありましたでしょうか

一過性のプレーかもしれませんが、それでも僕は驚きました。

・参考
シュクリニアルの今季クロス回数は3。内、1回が上述のクロスです。
FBrefを参照。

というわけでインテルの新たな試みを深掘りしました。

スペツィア対策なのかハイプレス対策なのかはまだ判断し難いですし、この新たな試み自体も一過性の可能性は現段階で少しも否定できません。

が、そもそもインテルって今季だけなく、オールタイムでハイプレスが苦手な傾向にあるので、一インテリスタとしては本節のようなアクションはしっかり考察したい。

価値があるな、希望になり得るな。

大袈裟かもですが、そう思っています。

だって、デ・フライ、ブロゾヴィッチ、エリクセンのトライアングルですよ?

・スコア
スペツィア1-1インテル
(12分ファリアス、39分ペリシッチ)

●雑感-というか、試合展開のまとめ

はい、レビューぶった切りましたw

すでにここまでで4500字を超えています。僕のレビューは5000字を目安にしているのでストップをかけましたw

本当は先程の”擬似的サリー”でペリシッチやラウタロにも言及したかったんですけどね。

加えて、前項の最後を「ですよ?」とか肯定を煽るかのような問いかけをしといてなんですが、ネガティブ・トランジションなどの懸念事項も頭に入れなければなりません。

まぁ上述の通り、まだ単発な出来事なので再現性が見られたら後々触れていきましょう。
逆を言えば、単発だったらこの話題はなかったことにします、いいね?

冗談はさておき、試合に関しては早い時間帯でのゴラッソが痛恨でした。

これにより、スペツィアの前からプレスがマイルドになった点。副次的に先制点までハマっていた”擬似的サリー”の効果も少し薄れてしまいました

それゆえにペリシッチの同点弾も値打ちもの。
これで僕は後半、スペツィアは再び前からプレスを初期状態に戻さざるを得ないと思ったのですが…

イタリアーノ監督はその熱量とは裏腹に盤面を正確に判断していたんでしょうね。勝ち点を目指すためにむしろ引くことが懸命である、と。
結局、後半になっても前からプレスのマイルドさは継続でした。

とは言っても、それでインテルがチャンスメイクに苦しんだわけではありません。むしろ、複数得点に繋がってもおかしくないほど、チャンスを創りました。

その展開は下記画像が全てを表している、と思っています。

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足りなかったのは実得点だけ

失点も被シュート立ったの1がネットを揺らしてしまった。しかも得点期待値はたったの0.03。これは3%しか得点の可能性がないとシュートシーンだったということです(他のデータサイトもイコールもしくはニアリーイコールでした)。

スペツィアファンの方には大変恐縮ですが、戦術的な観点では間違いなくインテル勝利が妥当な試合でした。

こうなると”不運”というワードも使いたくなりますが、前節ナポリ戦で多用したので今回は控えておきます。レビューが元も子もなくなる側面も出てきますしw


さて、インテル。

内容がやや追いつかなくても結果を出してきた

から、直近2試合は

内容が伴うのに結果が出せない。

傾向が変わってきました。まるでシーズン序盤のよう。

間違いなく、シーズン終盤の最大試練

ゴールテープを切るために乗り越えなくてはいけない壁はシーズン序盤にも立ち塞がった暗い試練です。

次の相手はヴェローナ。
セリエAファンに「今季のセリエA難敵チームと言えば?」と問えば、返答率は高いのではないでしょうか?(褒めてます!)」。

しかし、直近5試合は1勝4敗。現在、3連敗中と不調気味

次こそしっかりと叩いて、この悪い流れを断ち切って欲しいものですね!

FORZA INTER!!⚫️🔵

最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯




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