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「空港管制側にやるべきことがあった」~羽田JAL・海保機衝突事故で元空自管制隊幹部が意見


【画像① 最大で1日1200便の離発着のある羽田空港の混雑ぶりは、そろそろ限界に来ているかもしれない。既に9年前「発着間隔2分はJR山手線の過密運行を超えた」と話題になったが、今では最盛時間で発着間隔45秒だ。】



◆「過密な離発着状況が背景」とのYouTube配信での指摘に反響


2024年は能登半島を中心とした震災、さらに2日の夕刻に起きた羽田空港における離陸待ちの海上保安庁機と着陸してきた千歳発JAL旅客機の衝突事故が発生するなど、事故災害で幕開けした感がある。新年の賀詞を述べることがためらわれる事態だった。


筆者のYouTubeメイン・アカウント「古是三春_篠原常一郎」では、1月3日にLIVE配信で「能登半島地震と日航機炎上事故」を取り上げたが、かなりの反響を得た。国会スタッフだった時に何度か航空安全問題をテーマに取り上げた経験と見聞に基づき、「事故の背景は羽田空港の当初計画を超えた過密な離発着状況(最大で45秒おき)」と指摘したことがあらためて驚きをもって受け止められたようだ。


筆者は航空安全に関わる諸法制の改正審議や国際航空条約(ICAO)に関わる問題について、限られた国会審議やそのための調査でタッチしたに過ぎないし、専門家ではない。だが、この度の事故でやけに報道ベースで「海保パイロット」「管制官」の個別職務者に対する「ミスの有無」「判断の誤り」などが焦点にされたのに違和感を覚え、国会での審議経過などを振り返り「航空事故は単一のミスや過失で起るものではなく、問題をはらんだ背景と条件の中で原因が複合して重なった場合に発生する」という過去の教訓を踏まえて、問題を”近視眼”的に見ることの危険性を指摘したかったのだ。過去、職務者の責任問題が警察捜査によって優先され、刑事告発が目的化して肝心の事故原因の真相究明が進まないということが繰り返されていたからだ。



(参考映像)「能登半島地震と日航機炎上事故」2024/1/3 古是三春_篠原常一郎

https://www.youtube.com/live/zKzuZ567KMk?si=2DBw1tdG6aHF-Cl6


幸い、航空安全に関して啓発・研究や提言を行っている現場パイロット・キャビンクルー・整備士・管制官や研究者の団体、航空安全推進連絡会議(議長・永井丈道=日本航空乗員組合)が声明で筆者とほぼ同様な懸念(刑事捜査が優先されるべきでない・情報発信で憶測や想像を排除し正確な情報のみを扱うべき)が表明された。この団体が指摘するように、ICAOの精神に立って大事故再発防止を最優先させるための多面的な真相究明こそ、最優先されるべきと思う。




【画像② 航空安全推進連絡会議が1月3日に出した「2024年1月2日に東京国際空港で発生した航空機事故に関する緊急声明】


そして、これらに触発されて、専門家として従事した経験のある人たちがさまざまな視点で声を上げ始めている。本note「インテリジェンス・ウェポン」にも、かつて航空自衛隊管制隊を指揮していた元幹部自衛官が意見を寄せてくれた。


この意見をそのまま紹介するが、要点は次のようなものだ



◎「人員の増員」だけでは解決できない


◎管制側による「管制間隔の設定」の重要性


◎関係機情報(直近の着陸機の有無や状況)の伝達が欠如することの危険性



以下、この詳細である(元空自管制隊幹部からいただいた内容をそのまま掲載する。理解を助けるため、小見出しだけは筆者の責任で付けた)。




【画像③ 大空港の過密な発着スケジュールを管理する管制官の業務はハードだ。】


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