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【読書】狐蝶の城  桜木紫乃

おかまの小説。おかまって正確な定義って何なのだろう。この小説の主人公「カーニバル真子」は,もともとは男だったが,ゲイバーに勤めだして大人気になり,テレビや雑誌では引っ張りだこ,最終的にモロッコで性転換手術?まで受けて,女性の体になってしまった。こんな人は何と呼ぶのだろう。

あまりにもリアルというか,多分これは伝記的な作品ではないのか…と思い,読み終わって「カーニバル真子」で検索したら,なんとあのカルーセル麻紀をモデルにした小説という事だった。しかもこれは芸能デビューした後から始まっているが,前編として子供の頃を描いた小説も同じ作者が書いているらしい。読むべきかどうかは迷うが。

この桜木という作者は今まで二冊ほど読んだ。直木賞取ったホテルローヤルと蛇行する月。どっちも変わった雰囲気の内容で,何となく心がざわざわする感じの作風だったのだが,この狐蝶の城に関しては,一人の男というか女というか,とにかく人間がいかに生きてきたかを生々しく描いた渾身の作になっていると思う。

カルーセル麻紀って今79歳らしい。ウィキペディアには,「日本人として初めて性別適合手術を受けた人」、「戸籍を男性から女性にしたパイオニア」と称される…と書かれている通り,今で言う,ジェンダーフリーとかLGBTQの先駆けとでも言いますか。私もテレビで見た事がある位だから,全盛期は人気もあったろうし,そこそこ美人だったのであろうか。

芸能界で生き残っていくには,話題が必要という事で,次々にワイドショーネタを打ち出す。その頂点が性別適合手術かと思いきや,それからもどんどん仕掛けないと忘れられていく。ある意味強迫観念とでも言いますか,泳ぎ続けないと死んでしまうサメみたいな感覚なのだろう。(これはカルセール麻紀がどうこうというより芸能界全体の話だと思うが)。モロッコで性別適合手術受けた時の描写や術後の様子などが本当に詳しく書かれています。体や気持ちの変化まで。本人が話したことをまとめたのだろうが,医者とのやり取り,失敗して別の医師に処置を頼み,何とか生き延びて日本に帰って来て,舞台でラインダンスを披露するまでの流れは,こっちも拍手を送りたくなる。

とにかく麻薬を持ってて捕まったが証拠不十分で不起訴だった実在のの事件の本当の真実迄書かれている事にも驚き。マネージャーに反発し事務所一の売れっ子演歌歌手の失踪を手伝ったのも実話なのだろうか? あのあたり,男気を感じる。初恋の幼馴染の男の子が相撲取りの親方になって再会,手術をしていきなりひとめぼれした作家との恋愛,別れ…。あの作家は誰だったのだろう…。

とにかく,フィクションだと言われて読んでもとんでもなく面白いので,これがノンフィクションというなら面白くないわけがない。寝る間も惜しんで一気に読んでしまいました。

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