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【実話】命をかけた伝令


今映画館でやっている、アカデミー賞候補になった映画のまさに実話がこの日本で起こっていたとは…

うちの会社は、年に3-4回ゴルフコンペがある。幹事は前回の優勝者。という事で今回は私が幹事なのだ。1月の初めに3月21日と決定。工場や店舗がシフト制なので早めに決めておかねばならないのだ。

そして2月に入って正式に募集を始めて、約30名からエントリー。ただしその頃からコロナウィルスの悪いニュースが入ってきていた。参加者からも「本当にやりますか?」という問い合わせも入るようになった。

事態はますます悪化し、全国の小中高が全面休校、イベントごとは自粛要請…。うちの会社も3月の会議はすべて中止。新卒採用の説明会も延期…。こんな中でゴルフとかやっていいのか…と皆が思っていたが、本心はやりたいのだ。ただし、社長が怖い。もし強行したとして、後で社長にばれたらどんなに怒られるか分かったものじゃないということで、延期の判断をしようかという時に、ある人から「幹事が社長に聞けばいいじゃないか」という身も蓋もないフリが…。そう幹事は私なのである。

社長に聞かずに「中止」を宣言する事も考えてはみたが、それでは幹事としての役目を果たしたとは言えない。私は勇気を持って、それこそ「命をかけて」社長室をノックし、「社長、ご相談があります」と…。(ちなみに私は会社のお客様相談室の責任者をしております)

このご時世に、お客様相談室の責任者がわざわざ社長に直に質問に来るのだから、社長も「何事か…」とぎょっとしたに違いない。「会社にとって何か一大事でもあったのか…」と。

そして私がおもむろに切り出した。

「社長、会社のコンペやっていいですか」

その時の社長の顔。20年くらいお付き合いしているが、初めてこんな顔を見た…。

今までの経験からすると,激怒して一喝され「何を馬鹿な事を言ってるのだ,このご時世に…」を予測していたのだが,社長は「外やしねぇ…。経済も回さないと困るしねぇ…」「でも万が一とかあったり,風評被害とかね…」とまんざらでもない反応…。
そこで私は用意していた切り札を出した。

「今回スルーで回るので,食事でレストランに行く事もありません。終わってからのパーティも中止してそのまま解散します」

「それならいいか~。がんばってね~」

圧倒的勝利であった…。
これで幹事の面目もたち皆から褒めたたえられること間違いなし。命をかけた伝令,めでたしめでたし。

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