ある凡人の数学者人生が始まるまで 7

中学生編 2

この塾は私に決定的な影響を与えてくれた。割とスパルタ的ではあったが、繰り返し問題を解くことによって中学数学が以前よりも分かるようになった。


そして、数学が楽しいということを知った。


最も私の情熱に火を付けたのは「帰宅問題」の存在である。

「帰宅問題」とはその日の授業終わりに問題が出題され、それを解けないと帰れないというイベントのことである。帰宅問題にはA問題とB問題があり、B問題は標準的な問題が五〜十題出題される。一方、A問題は難しい問題が一題だけ出題される。

数学が好きになった私はある程度たって塾内でも上位の存在になることができた。しかしながら、中々一位にはなれず、同じくバスケをしていたK中学のIや、大教大付属池田中学の二人組には勝ったり負けたりした。

もちろん数学は勝負する学問ではないのであるが、帰宅問題のA問題を最初に解いて颯爽と帰宅することに謎の格好良さを感じていた私は、A問題で出題される問題をいかに早く解くことができるか、上記ライバル達と勝負していたのである。

この切磋琢磨が私の数学力をどんどん向上させた。

更に、優秀と認められた生徒は「特Aコース」というものに所属することができ、土曜日?に難関高校の入試過去問題を初見で解くということをやっていた。

初めて参加したときに解いた東大寺学園の問題に全く歯が立たなくて悔しかった記憶と、いくらか後に挑戦したラサール高校の過去問で100点満点を取って先生を驚かせた記憶が残っている。

かんづめ状態での夏期講習・冬期講習も行われており、両方ともに参加した。印象深かったのが、お昼の時間に先生が部屋に来て

「勘違いするな。今は『お昼ご飯を食べてもいい時間』だ。右手が空いてるぞ。」

と左手におにぎり、右手に参考書で勉強をした。このときに出題された問題


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(上図)に補助線一本で解ける解法を見つけたことが嬉しかった(算数オリンピックの過去問?)。


このように中学生時代の私は塾で夢中になって数学を勉強した。そんな私の頭の中には、もはや「ゲームプログラマーになりたい」という文はなかった。


ちなみに、この時期読んだ中学数学の参考書でとても面白かったのが


小島寛之著、『解法のスーパーテクニック』、東京書籍、1989年


だ。この本で最も感動を覚えた問題は


小島寛之著、『キュートな数学名作問題集』、筑摩書房、2009年


に再録されている(一点で交わる三つの円の問題)。

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