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アクチュアリー試験【会計】2018年問題1(2)

アクチュアリー試験は、まだまだ年度によって合格率のブレ幅が大きい試験です。比較的に簡単な年もあれば、難しく合格率が大きく下がる年もあります。
受験生の立場としては、当然に気になるところですが、必要以上に情報に振り回されるのは避けたいところです。

大切なこととしては、難しい年でも合格している人はいますし、やさしい年でも不合格になっている人はいます。
難易度にかかわらず、得点するべきところは確保して取りこぼしが無いように勉強を進めていくことが大事であると考えます。

【はじめに】

2018年度アクチュアリー試験の会計の解説の第2回目です。問題1(2)を取り上げます。
前回も書きましたが、主に読者の対象として、理系の学部出身でアクチュアリー試験を受験しているものの、会計の勉強をしてもしっくりきていないような人を想定しています。

教科書だけでは「なぜそうなるのか」がわかり難いことがあるのかもしれませんが、趣旨から考えることができれば納得感を持って考えることがます。
ここでは解説を通じて趣旨などの説明をしていきたいと考えています。
なお、解説にあたっては、2018年の試験ですので『財務会計講義 第19版』を参照しています。2019年試験の指定教科書は『財務会計講義 第20版』となりますので留意してください。(ほとんど影響はないですが)

また、当面は無料記事として公開しますが、一定期間経過後には有料記事にする予定としております。その点につきご了承ください。

【今回の問題】

【解説】

会社法における、株式会社の統治制度(機関設計)に関する問題です。

会社法改正によって2015年から採用可能となった監査等委員会設置会社では、3つの委員会のうち監査に関する委員会だけが取締役会の内部に設置され、この委員会が取締役代表取締役の職務の監査、および会計監査人の選任を行います。

ということで、答えは(J)会計監査人 となります。

株式会社の統治制度(機関設計)については、教科書では2ページ強の中にギュッと濃縮して記載されており、また、図表にまとめられています。
しかし、株式会社の統治制度(機関設計)はこういったものがある という説明にとどまっているため、受験生としては天下り式に丸暗記をせざるを得ないところもあるかと思います。

しかし、なぜこのような仕組みになっているかを理解したうえで覚えていくことが試験のみならず将来には役に立つのではないでしょうか。

【株式会社の統治制度(機関設計)】

会社法が具体的な仕組みとして用意しているものは、株式会社の種類(公開会社か非公開会社か、大会社か中小会社か)、および会社が選択する統治制度(機関設計)となります。
教科書で想定している会社は、大会社であり公開会社となります。

大会社であり公開会社が採用できる機関設計は、監査役会設置会社指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社ということになります。
ひとまず、これらについて教科書の図表をもとに整理しておけば試験においては十分です。

【公開会社/非公開会社】

会社は発行する株式について、広く流通させることを前提とするのか、それとも、株主を身内で固めることを前提とするのかを選択することができます。

非公開会社(株式譲渡制限会社)
発行するすべての種類の株式について、他人への譲渡に先立って会社の承認を要するという制限を会社である。

公開会社:
譲渡制限を課さない株式を少なくとも一種類以上発行している会社である。

家族経営の会社などで、会社にとって望ましくない人物や企業に株式を取得されてしまうと思うように経営ができなくなるおそれがあります。
そのようなことを避けるために、会社法では非公開会社という選択肢を設けています。

また、ここでいう公開会社は、取引所に上場している会社を指すものではありません。上場していなくとも、譲渡制限のない株式を発行しているならば公開会社となることに留意が必要です。

【大会社/中小会社】

会社法では、会社の規模を資本金負債の額によって、大会社とその他の会社に区分しています。

大会社
資本金5億円以上、または負債200億円以上の会社

中小会社
資本金5億円未満かつ負債200億円未満の会社

大会社においては、監査役会の監査以外に、会計監査人(公認会計士または監査法人)による会計監査を受けることが義務付けられています。

多くの会社では、通常、監査役は会計の専門家ではありません。
そのため、社会的に影響が大きいと考えられる一定の規模以上の大会社においては、会計監査の専門家による監査を義務付けることによって、より監査の実効性を高めています。

なお、教科書では中小会社と表現していますが、会社法上は中小会社という表現は用いていません。また、一般に、大会社や大企業、中小企業という表現が用いられることもあるため、この資本金と負債の額による判定を、会社法上の大会社と表現することもあります。

【監査等委員会設置会社の意義】

企業統治を行っていく上での一般的な機関設計として、監査役会設置会社が挙げられます。

監査役会取締役及び代表取締役の業務執行を監査します。

しかし、多くの会社では監査役は、社内での昇進ルートの一つとされており、監査役になるのは社内の者であることがほとんどでした。
そのため、取締役を監査しなければいけないはずの監査役とその対象である取締役との間には、過去の上司、部下関係などが存在するケースが少なくなく、馴れ合いが生じやすくなります。

そのため、監査役会設置会社ではガバナンスが上手く機能しないことがデメリットとして挙げられていました。

そこで、会社のガバナンスを強化していくため、新たに採用された機関設計が、指名委員会等設置会社です。

指名委員会等設置会社は、社外取締役を過半数とする3人以上の取締役で構成する監査・指名・報酬の3つの委員会を取締役会の内部に設け、監査役を廃止します。
会社の業務執行は、執行役および代表執行役を選任して担当させ、取締役会は執行役を監督する機能に集中します。

指名委員会等設置会社においては、会社の重要な意思決定を行う際に、社外の者が何らかの形で関与することになるので、ガバナンスが強化された機関設計であるというメリットがあります。

しかしながら、指名委員会等設置会社は各委員会に2人以上の社外取締役が必要となります。そのため、社外取締役を担う人材を確保するのに労力を要することとなり、また、外部監査役は閉鎖的な日本の企業の風土とは馴染みにくいこともあり、なかなか指名委員会等設置会社は採用しづらい機関設計でした。


そこで、監査役会設置会社指名委員会等設置会社の間を取るような形で、監査等委員会設置会社が考え出されました。

監査等委員会設置会社では、社外取締役を2人に抑えることができ、会社の実務的な負担を軽減しながら、ガバナンスの強化を図ることが出来ることとなります。

【演習問題】

(1) 企業が行う財務会計には、法律の規制に従って行われる会計と、それ以外の会計が存在する。法律制度の一環として、法規制に準拠して行われる会計を、とくに〔 ア 〕という。

(2) 会社法上の会計報告書は計算書類とよばれており、その作成と報告に際しては、会社法の関連条文のほか、そのもとで制定された「会社法施行規則」、「〔 イ 〕規則」および「電子公告規則」という3つの法務省令にも準拠しなければならない。

(3) 大会社では、監査役会の監査以外に、会計監査人による会計監査を受けることが義務付けられている。会計監査人の任期は〔 ウ 〕年である。

(4) 大会社たる公開会社が選択できる機関設計のうち、〔 エ 〕は社外取締役を過半数とする3人以上の取締役で構成する3つの委員会を設け、会社の業務執行は執行役および代表執行役を選任して担当させ、取締役会は執行役を監督する機能に集中する。

(5) 監査役会設置会社では、取締役の任期は原則として〔 オ 〕年、監査役の任期は原則として〔 カ 〕年である。

<解答>
(1) ア 制度会計
(2) イ 会社法計算
(3) ウ 1
(4) エ 指名委員会等設置会社
(5) オ 2  カ 4

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