演繹的アプローチと帰納的アプローチ

アクチュアリー試験の会計の過去問をみていると、理論問題の中で「演繹的アプローチ」「帰納的アプローチ」に関する問題は頻出となっています。当然に試験対策としてはそれぞれの定義を覚えておくことになると思います。

私がアクチュアリー試験の会計に最初に触れたときにはなんでこんな論点が何度も出るのだろうと不思議に思っていました。試験問題として曖昧な感じがして何かふわっとしているような気がしたんですよね。

でも、最近は何となく試験委員からのある種のメッセージがあるのかなと考え始めています。

企業会計基準は基本的に「実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められるところを要約しまもの」なので、帰納的アプローチによって成っていると考えます。

一方で、受験生は数学系の人が多く、定義や仮定に重きをおいて考えてることに長けていると思います。つまり、演繹的アプローチによる考え方が馴染みやすい人が中心となっています。そのため、帰納的アプローチに基づいた「実務でこのようにしているから」という理由はなかなか納得感が得られないことになっているのではないでしょうか。

例えば、200%定率法なんかだともやもやとしながら「そうすることになっている」と無理やり納得させているのかなぁと想像しています。

実務では様々な立場から考えて「折り合いをつける」必要があります。そこに演繹的アプローチを持ってきても、「折り合いをつける」ことはできないのです。

定義や仮定は大事なのは私もわかります。普段でも「それって定義は何?」って聞いてしまうこともあります。しかし、会計はその「折り合いをつける」ことから発展してきたんだということは、数学系を勉強してきた人にはよりしっかり伝える必要があると考えられているのかなと思います。

会計はビジネスの一つの表現方法でもあります。大きくいってしまうと、会計のみならずビジネスの実務の中では純粋に理屈だけではなく「折り合いをつける」ということがあるんだと、会計の試験問題を通じて数学系の人に伝えているのかなと私は考えています。

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