見出し画像

[雑感] 円安が止まらない

2024年4月29日(月)

日本が安穏とゴールデンウィーク前半の休日をむさぼっている間も、世界では外国為替取引が行われています。先週末の日銀政策会合の結果を受けてドル円レートが1ドル=155.5円から1ドル=158.35円まで3円ちかく円安が進みましたが、週が明けた今日も円の下落が止まりません。一時1ドル=160.3円まで円安が進みました。

もうこれはヒステリーとしか言いようがありません。
というのは、外国為替市場での円の取引規模は1日平均で200兆円もありますが、実態のある経済活動(貿易や出張、旅行など)を行うためにドル転する必要のある円は、1年間の取引量を合計しても200兆円に届くとは思えないからです。

データでそれを確認してみましょう。

財務省のウェブページから、国際収支統計のデータを持ってきました。主な項目の年間の収支をグラフ化したものが以下です。

1996年~2023年の日本の国際収支。縦軸の単位は億円
財務省ウェブサイトよりデータ取得

紫の折れ線が国際収支です。縦棒で示した貿易収支、サービス収支、第1次所得収支、金融収支及び第2次所得収支や資本移転収支を合計したものですが、ここ28年間、2013年を除きプラスです。なので年間を通して日本には資金が流入していることになります。

2023年についていえば日本の国際収支は46兆6,074億円でこの28年間で4番目に大きな数字です。円安の影響で第1次所得収支が円換算で膨らみ、割安な日本への直接投資や証券投資(いずれも金融収支に含まれる)が増加した影響でしょう。

貿易収支は輸出、輸入がそれぞれ100兆円、107兆円ほどで、輸入額の方が大きいため6.5兆円の赤字となっています。

金融収支は23兆円のプラスです。日本企業が海外企業を買収したり海外に設備投資したり、日本の個人が海外株を買ったりした金額より、外国企業が日本企業を買収したり日本に設備投資したり、外国人が日本株を買ったりした金額の方が多いということです。もともと外貨を持っていれば別ですが、そうでない限りは為替取引を伴うので、年間の取引を全部合算すれば、正味でいくらかは円買いが発生したと考えてよいでしょう。

仮に、日本の企業全部が、輸出の利益(円貨で受け取る契約もあるでしょうが、ドルやユーロなどの外貨が多いでしょう)を全部そのまま外貨で持っていたとしても、貿易に伴う円売り需要は輸入にかかった費用107兆円しかありません。

サービス収支はマイナス3兆円です。内訳がないので仮に貿易と同じ規模があったと(過大な)仮定をし、且つ受け取った外貨は円転しないとしても、円売り需要は100兆円程度です。

さらに、日本の企業や個人の全部が、第1次所得収支で受け取った海外利益(海外利益なのでドルやユーロなどの外貨で受け取ります)を円に両替せずに全部そのまま外貨で持っていて円買い需要が一切発生しなかったとしても、年間を通した円売り需要は高々200兆円程度です。


一方、外国為替市場での円の取引量は、最新のもの(2022年4月、国際決済銀行調査)で1日平均1兆2530億ドルでした(下記記事参照)。今の為替レート1ドル=160円で換算すれば、200兆4,800億円です。


1年間を通した実需の円売り規模が高々200兆円程度しかないのに、外国為替市場では1日平均で200兆円の円が飛び交っています。もちろん大きな会社が大きな取引をする日に大量の円売りが発生することはあるでしょう。でも平均すれば、売買代金200兆円の市場で、年間実需が200兆円。となれば、外国為替取引のほとんどが投機、ただのマネーゲームと考えられます。

実際、外国為替市場の取引の9割以上がFXなどの投機と言われています。


円安が止まらない今の外国為替市場は、円がもっと安くなるからと見込んだ空売り、金利スワップ狙いのFXのドル買い円売り、円が紙くずにならないうちに外貨買っておこうという焦りの買い、など、いつも以上の雑音が入った投機場になっているのでしょう。

マーケットなんてそんなもの、と言っていられればいいのですが、食料、エネルギーという必需品を海外に依存する日本にとって円安は有害でしかありません。政府、日銀は投機家が調子に乗らないようにうまく手綱を取ってくれないと困りますが、事ここに至っては、もう無理でしょう。


参考情報


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?