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未経験からの飲食店開業物語68

中板橋「やきとん万備」では初来店の方からよくこんな言葉を聞きます。
「うまかったです!絶対また来ますよ」
お客さんの視線はマスター。

帰り際、店を出るとき
「ごちそうさま~ おいしかったです」
お客さんの視線はマスター。
そしてママ。

僕に視線がくることは10人のうち2,3人。
飲みながら僕と話をした人でも帰り際に僕に視線をくれる人は少ないです。

これは僕がホールを担当していようが焼き場を担当していようが変わりません。
「おいしかった」というお褒めの言葉はマスターのものになります。

「やきとん万備」はマスターのお店ですからそれで当然ですしそれでいいと思います。


昨日のこと。
前回の修行編で書いた超常連さんが来店。
手羽先を2本注文する常連さんです。


焼き場は僕でマスターはホールにいた。
常連さんは玉子サラダと煮込みでチビチビやってる。
俺が焼き場にいるから焼き物注文しないのか?
なんてネガティブな考えが頭をよぎる・・・・

来店から30分位した頃、焼き物の注文が。
「ISSHIE君のお勧めで5本焼いてよ」
キターーーーーーーーーーーーーーーヾ(♥ó㉨ò)ノ

それでは!と焼くものを選ぶ。

やきとん万備の焼き物は数種類の味付けが選べる。
塩、醤油、タレ、味噌ダレ
1人で3本以上の注文が入ったときは忙しいときは別として基本的に1,2本ずつ味の薄い物から焼いて出すようにしている。
部位によって若干変わることもあるけど味付けでいえば塩→醤油→タレ→味噌ダレの順。

この常連さんに選んだものは
タン塩、カシラ塩、ハラミ(スタミナ漬け)、とり皮タレ、シロ味噌
タンとカシラをまず出してハラミと皮を焼き台の上に。

常連さんの食べるスピードをチェックすると・・・
パクパクパク・・・・
早えぇ!
あっという間に2本完食。

皮とハラミはまだ焼きあがってない。
ちくしょう・・・もっとゆっくり食べるイメージだったから・・・
2本の串を食べ終わって飲み物をグイッとやってるときに次の串をベストな焼き具合で出したかった・・・・
ちょっとしてハラミを出して皮の表面をカリッと香ばしく焼き上げたかったから炭火を強く調整。
タレをつけてもう一度表面をカリっと焼きたい。
同時にシロに味噌ダレをつけて焼き台に。
こちらも表面がちょっとコゲる位に焼きたいから強火が丁度いい。

ハラミがなくなるころ皮をサッと出し最後の一本に神経を集中。
炭に落ちる肉汁の出具合で焼き加減をイメージし裏返す。
よし!丁度いい!

いつも手羽先を2本食べるこの常連さんは鳥好きであることを想像するのはたやすい。
大きめのポーションの皮を3口で食べてしまった・・・・

ちょっと待たせたが最後にベストな焼き加減でシロを出す。
「シロ味噌です。これで5本です」

黙ってシロを食べる常連さん。

この日は超~暇だった。
けど自分にとっては真剣勝負だった。

「お勘定して」
ママがお勘定をして常連さんが席を立った。
「ありがとうございます」とマスターとママ。
僕も続いて
「ありがとうございました」
ご来店ありがとうございました。
という気持ちと
勉強の為に焼かせてくれてありがとうございました。
という気持ちを込めて。

すると常連さんはマスターでもなくママでもなく自分のほうを向いて
「ごっそさん」ニコッ
と言って帰っていった。

泣いた。
心で泣いた
今度は「旨かったよ」と言ってもらえるように精進します。
そして毎日そんな言葉をもらえるような店を早くやりたい。
そう改めて思った日でした。

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