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論文を書く上での心構え+構成について ~IMRaDフォーマット~

はじめに知っておいてほしいこと

おそらくこの文章を読んでくださっている人の多くは、英語を母語としない方かと思います(私もそうです)。そんな方たちが英文ライティングを身に着けようとするときに、きちんとした目標設定をすることが大切だと思います。言い方を変えると、目標設定を誤るといつまでたっても論文投稿・論文発表というゴールにたどり着きません。

私たちは小説家ではありません。
だから、心の襞をなぞるような文章はいりません。

私たちは言語学者でもありません。
だから、細かい文法にとらわれる必要は(とりあえず)ありません。

私たちは疫学・公衆衛生学の研究者です。

小説家や言語学者ではなく、疫学・公衆衛生学の研究者である私たちが何に注意を向けるべきかと言われたら、文章の論理展開です。そこにきちんとしたロジックの一貫性があれば、あとは英文校閲とかネイティブの友人とかに任せればいい。Grammerlyとかに仕事をさせるのでもとりあえずはいいでしょう。

英語が苦手だから論文が書けないというのは、たいていの場合、うそです。論文が書けないボトルネックは英語(手段)ではなくて、届けるべき科学的知見(目的)がきちんと整っていないことがほとんどだと私は思います。

話がそれました。以下に示しているのは、私がCorresponding authorとして全面的に英語をなおした論文の校閲前の原稿です。

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英語としては間違っていないと思いますが、英文校閲に出すとこのくらい直されます。英語としての自然な文章、リズムがおそらく直っているのでしょう。でも、正直なはなし、修正履歴を外してどっちの方がいいのか当てろと言われても、わからない自信があります苦笑

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目指すべきゴールは?

これを読んでいる皆さんに目指していただきたいのは、「英文校閲業者がきちんとこちらが意図したとおりの意味にとってくれるくらいの英文で、論理展開が破綻していない論文をきちんと書く」ということです。逆に言うと、すごく凝った文章を書くことに時間を割くことは、論文出版というゴールからはどんどん離れていく行為だと思ってください。

なお、英文校閲業者は基本的に論文のロジック・構成は直してくれないことが一般的です。お化粧はしてくれますけど、整形手術はしてくれません! きちんとした構成の論文(トピックセンテンスをきちんと書いて、段落ごとのつながりがスムーズであること)を身につけましょう。

IMRaDフォーマット

疫学・公衆衛生学に限らず医学系の原著論文はIMRaDというフォーマットに沿って書かれていることが一般的です。Introduction(緒論)、Method(方法)、Results(結果)and Discussion(考察)という意味です。Short report(短報)などではUnstructuredな原稿であるときもありますが、まずはIMRaDにそって書き始めるのがいいでしょう。

IMRaDをもう少し細かく書きましょう。

Introduction
- General background:取り上げるトピックの重要性
- Related studies:先行研究
- Research gaps:先行研究の問題点
- Aims:目的
Methods
- Subjects/Materials:対象者
- Outcome:結果変数(被説明変数)
- Exposure:曝露(説明変数)
- Covariates:共変量
- Statistical analyses:統計解析
Results
- Table 1. Basic characteristics:対象者の基本属性
- Table 2. Results of a regression model:メインの解析結果
- Table 3. Sensitivity analysis:感度分析の結果の紹介
Discussion
- Summary of findings:本研究の結果のまとめ
- Comparison with previous studies:先行研究との比較
- Similar results:結果が一致している先行研究
- Different results:結果が一致しなかった先行研究とその解釈
- Strength:本研究の強み
- Limitations:本研究の限界(言い訳)
- Implications/Future directions:将来の方向性(あんまり書かない)
- Conclusion(別セクションとして独立させることも多い)

まとめ

いかがでしたでしょうか。目指すべきゴールの像が分かっていただけたら幸いです。それぞれのセクションで何をどう書くべきかについては次回以降書いていきます。

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https://note.mu/inoyo/n/nb4889da4b9ee

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