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緊急事態の意思決定を蝕む平和主義

1954年版では、海上保安庁協力のテロップしかなかったが、2016年版は、ラストに三自衛隊の各方面基地が事細かにテロップ。これが、この寓話の背景を象徴している。主役は自衛隊とそれを使う政策実行者(官僚)と科学者のチーム。


一番のテーマは、地震と原発(戦争の隠喩)。「この国はスクラップ・アンド・ビルドで立ち上がってきた」「(コントロールできれば夢の生命体である)ゴジラとこれからも共存するしかない」との後半の台詞に象徴される。
日本の意志決定にからんで、多国籍軍の枠組みやアメリカの強権がきっちり描かれるのも、1954年版と比べて隔世の感。東インド会社以来の多国籍企業の、軍隊版が多国籍軍なのだから、そこでどう日本の意志を反映していくかなのだ。


ゴジラのフリーズに、官僚チームと共同で、放射線量も顧みず取り組む自衛隊のシーンからは、実際若手官僚と官房で仕事をし、3.11の時には、福島の原発で放水をやった経験を語ってくれたある若い自衛官を想起。若手官僚たちは、どこまでが現実の政策決定で、どこからがフィクションかを議論したという。


一番頭を切り替えるべきは、平時と違う論理や決断が必要とされる時とは、どういうものかを認識していない(しないように教育されてきた)国民なのかも知れない。たった一人の避難し遅れた人間がいるおかげで、一旦出したゴジラへの攻撃命令を取りやめ、結果被害を大きくしていく首相の判断のシーンに、それを一番感じた。

庵野秀明チームが今度は「ウルトラマン」を撮るという。1966年版は、沖縄が寓意の中にあった。さて今回はどうなるのか?

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