【歌評】ウミユリ海底譚 / 猫又おかゆ(cover) / 2014年 / 作詞 n-buna
──『僕を殺しちゃった 期待の言葉とか
聞こえないように笑ってんの』──
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歌詞の引用部分は『』になっています。著作権違反とならないように慎重に書いていきます。
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2023年1月21日(土)。10時16分。
はい。こんにちは。【歌評】になります。カクヨム上では数分後には下書きに戻ってしまう記事になります。この記事を note で見ている方は、安心してください。恐らく note株式会社様の運営方針が変わらない限りは、記事として残り続けると思います。
超個人的な話を書くと、「また裏の文字数とか話数とかで読者とちぐはぐが生じるのか」と思ってしまいますが、朝からずっと『ウミユリ海底譚』が頭に残ってしまい、歌評でも書くかという気分になりました。
ここからが歌評です。
自由に書こうと思います。
まず、なぜ歌手が『猫又おかゆ(cover)』さんになっているかと言うと、『猫又おかゆ(cover)』でずっと聞いているからですね。更に言えば、Nightcore化して聴いています。テンポアップして、声を高くして聴くと、また更に別のイメージを持つことが出来るのでおすすめです。
私は、『ウミユリ海底譚』はサビよりも、サビ一歩手前の連続して同じテンポの歌詞が登場してくるところが好きです。
特に二回目のサビの手前の部分。
『今 心の奥 消える光が
君の背を掻き消した
触れる跡が 夢の続きが始まらない
僕はまだ忘れないのに
光に届く 波に揺らめく 夜の奥
僕の心に 君が手を振っただけ』
はい。ちょっと長いかもしれないけれど、あくまで引用、ということで。
作詞者の n-buna さんは、今ではヨルシカとしてメジャーデビューしていますが、ヨルシカという名前になる前から、『ウミユリ海底譚』は好きでした。何度も書いていますが、サビの一歩手前の、銃で撃たれるかのように言葉が紡がれていくあのテンポ感が好きでした。
n-buna さんは愛しい人に対して、諦めの気持ちというか、憧れの人に対して手が届かないまま別れてしまった、曲を創るのが得意というか、『ウミユリ海底譚』に関してはそのような、素直な感情が歌詞によく表れているかと思われます。
『今 心の奥 消える光が
君の背を掻き消した』
大人になっていく中で、純粋だった少年の心を忘れようとしていることを『消える光』と表現しています。徐々に好きだった人の姿を忘れていってしまう。追いかけたいと願う気持ち。君の背中を追いかけたいという気持ちが、自分の心の中で純粋な心の光が消えていくのと同時に、諦めていってしまう表現が上手く歌詞に出ています。
光の中で、君の背中だけを追いかけて行っていたのに。黒い闇の泡沫が包み込むようにして、君の背中が徐々に見えなくなっていく。
大人になる過程で、どうしようもない現実と諦めの気持ちが大きくなっていく。どうしても。どうしても、君の背中に追い付くことが出来ない。そして追いかけようとする『心の奥』の光が消えていく。諦めていく。
『触れる跡が 夢の続きが始まらない
僕はまだ忘れないのに
光に届く 波に揺らめく 夜の奥
僕の心に 君が手を振っただけ』
心の奥底では、もちろん君のことを忘れることはなく、必死に手を伸ばそうとする。必死に呼びかけようとする。何かが変わってほしいと、とにかく自分一人で足掻いてみる。『夢の続き』を追いかけようとする。しかし、手に入れたものは。
『僕の心に 君が手を振っただけ』
結局ひとりではどうしようも無かったことを赤裸々に書いています。ええ。どうしようもなかった。『夢』または空想。その中でひとりで足掻くものの、手に入れることも触れる事さえできやしなかった。そこで、冒頭の歌詞の気持ちのなかへと戻っていきます。
『僕を殺しちゃった 期待の言葉とか
聞こえないように笑ってんの』
YouTubeで音楽を投稿して脚光を浴び始めた、当時、ナブナさんは。周りから『期待の言葉』を延々と聞かされます。「すごいよ!」「頑張れよ!」「才能があるよ!」「天才だよ!」。しかし、そうやって周りの期待が大きくなればなるほど、「もっといい音楽を創らなければいけない」というプレッシャーに苛まれます。アスリートとか、オリンピック選手によくある、世間やマスコミからの過剰な期待ですね。それで、当時ナブナさんは、音楽を創るのを辞めたくなります。ナブナさん、というか、ヨルシカさんに名前が変わった後には、そんな心情をせつららに語った『だから僕は音楽を辞めた』という曲は多くの人が知っているでしょう。
『だから僕は音楽を辞めた』の歌詞に出てくる心情を、2014年に発表した『ウミユリ海底譚』の頃から既に持っていたことが伺えます。そうやって期待とか、プレッシャーとかに対して素直に歌詞に出来る人。それが今の『ヨルシカ』さんであり、『n-buna』さんだったり、当時の『ナブナ』さんなんじゃないのかなと思いました。
自分の心を正直に歌詞に送り込んでいく。有名になった後でもそれを変わらずにやっていく。なおかつ、メロディーラインなどは頭に残る天才的なメロディーラインを創ることができる。ここは文字だけのブログなので、ほぼ歌詞にしか注目できませんが、歌詞だって「売れる」かつ「正直」というのはそうそうの人ができるものではありません。もう作曲作業が終わってしまうのではないかと思うほど、追い詰められている歌詞を書いたりしますが、それでも今でも続いているので、やはり職人肌というか、淡々と仕事が出来る人なのだなあと思いました。
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