占いが好き

占いが好きです。

大学4年生の時、家族と仲が悪く、実家を出るかどうか真剣に悩んでいた。

あれは、たしか2015年の元旦だったと思う。

友人と梅田をぶらぶらしていたら、不動産屋の前を通った。店頭に張り出された物件情報をみながら、京都より安いんやなあ、なんて言っていたことを覚えている。

そのあと、梅田のお初天神に初詣に行った。

境内には、ネオンで作られたハート型のアーチがあったり、おみくじがガチャポンでひけたりと、まあ、「若者向け」にデコレートされた神社であった。

その片隅の、薄汚いテントの下に、その老婆は座っていた。テントの前には「占い 15分2000円」とだけ書いた愛想な札が立っていた。

その当時、私はひどい片思いの渦中にいて、友人が面白がって「お前と〇〇さんの未来を占ってもらおう」と私をテントの下に引っ張っていった。

老婆はどちらかというと小綺麗な格好をして、落ち着いた雰囲気の人だった。年齢は60代後半といったところか。

彼女は、私の生年月日を聞き、「若いねえ…」と言うと、なにやら数式のようなものを書き始めた。そして、一通りの計算が終わると、「で、なにが聞きたいの」と言った。

恋愛のことはオチにとっておくとして、ひとまず直近の就職活動について聞いておこうと思った。

「僕が向いてる職業ってなんですかね?」

すると、彼女は間髪入れず、

「あんた、家を出た方がいいよ」

と言われた。

わたしと友人は思わず顔を見合わせた。

まさしく私が一番悩んでいることそのものだ。

しかも、就職活動について聞いているにも関わらず、彼女はそう答えたのだ。

彼女は続けた。

「あなたはお母さんと相性が悪い。はやく実家を出た方がいい。あなたの転機は42歳でやってくる。いずれあなたは国を作る」

とにかく言葉のチカラが強い。なんだ、国を作るって?

しかしその時私は、その老婆のつくる雰囲気に完全に呑まれていた。私たちはただ頷くことしかできなかった。

恋愛に関しては、相手の生年月日を聞くと

「あ、別れるね。だって合わないと思ってるでしょ?」と、アッサリ言われた。そしてホントに別れた。

僕と友人の今後の関係について聴くと、

「二人とも寂しい星に生まれてるし、身を寄せ合って付かず離れずやるんじゃない?知らないけど」と、本当に興味なさそうに言った。その友人とは今でも付き合いがある。


私は別に、占いを信じよう、という話をしたいわけではない。

ただ、見知らぬ他人に自分の深い悩みを相談するのは、なかなか悪くない、と思う。

身近な人にはなかなか言えないことを打ち明けることが出来る。たとえそれに対する回答がピント外れだったとしても、それだけでガス抜きになる。

あなたも、誰にも言えない苦しみがあるのなら、街角の占い師に声をかけてみるのも悪くないかもしれない。




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