古書店文化

唐沢俊一氏が亡くなった。
どうやら、生前、周囲との関係が悪化していたらしくて、死を惜しむ声がないのは残念だ。
唐沢俊一氏の業績は、古書店文化を紹介したことだ。

ブックオフみたいなマニュアル化されたチェーン古書店が増える前は、古書店とは、店主がじぶんのコレクションを並べて売るものだった。

顧客が欲しいものではなくて、店主が売りたい物を売るんだから、繁盛するはずがない。古書店は、家族以外の店員を雇うこともできず、店主が飽きるか、店主の生活費が尽きるか、店主の寿命で潰れてしまうのだ。

商売をまるで考えていなくて、店主の趣味でやってる飲食店や美容室や骨董品屋や土産物屋だってあるが、古書店は売っているものが本で、情報を取り扱っているので、品揃えに店主の好みがモロに出ていた。

本を手に入れる利便性だけから考えたら、明るい清潔なブックオフとか、ヤフオクやメルカリの方がいいんだが、暗くて汚い古書店で買った本の方が記憶に残っていたりする。

古書店がただの小売商と違うのは、古物の買い入れもやっていたことだ。くだらない本を持ってくると、店主に怒られる。自分も体験して驚いた。

古書店とは、ただ本を売り買いするんではなくて、店主の好みとか、気難しい店主と客との関係性とか、二度と再版されないだろう希少本の骨董品的価値とかとセットだった。

唐沢俊一氏の死とともに、古書店文化も終わった。もう、再生することはない。


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