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「DropKitのサンプルから展開してみよう②の前に」

今回は、サンプルでついている「四角形の名前」の展開を提案したかったんですが、その前にちょっと書かせてください。

このファイルは元々、「日常的でない図形の名前」がなかなか覚えられない子達がたくさんいるので、
気軽に
楽しんで
繰り返しができる課題があるといいなと思って作りました。

正方形、長方形でさえ、図形の単元が終わると怪しくなってしまう子、少なくないですよね。
「折り紙の形が正方形だよ」とよく声をかけますが、
「折り紙の形」という言葉の方が、
・4つの辺の長さが同じで
・角が全て直角
という形を思い出しやすいんですよね。
そのくらい、彼らにとって「正方形」は日常的ではない言葉なんだなと感じます。

とはいえ、多くの子どもたちは、いつの間にか覚えている基本語彙ではあります。
この辺りで、実は算数への取り組みに差が出やすいなと思っています。

「算数の国語問題」と、勝手にずっと言ってるんですが、
算数の語彙が問題になって、
問われていることがわからないということは、よく起こります。

「習ったでしょ」と出てくる言葉の意味がわからない。

「等しい」「対応する」「等分」「辺」「面」「頂点」まだまだあるけど、
算数としての思考をする前に書かれている言葉でつまづく子達は結構いるなあと感じています。
「計算はできるんだけど文章題が苦手で」
とか言われると、
「計算だけできてもねー」とか
揶揄する雰囲気になりがちだけど、
そもそもの語彙が入っていなくて文章題から関係を読み取れてないのかもと立ち止まってみる必要があるなと思っています。

ちょっと脱線しましたが・・・
なので、四角形の名前も、いろんな形で選んだり組み立てたりして覚えやすくなるといいなあと思って。

「これなんだ? 」のフォーマットで、名前の組み立てを
「どれかな?」のフォーマットで名前→形の選択を
「線つなぎ」のフォーマットで、名前・形・性質のマッチングを

こんなイメージで作っています。

もちろん、あくまでも「サンプル」ですので、これで十分というものではなく、「こんなことができますよ」の提案で。
必要に応じて作り替えて使えるところは使ってもらえればと思ってました。


ところが年末に、語気強めのクレームが入ります。
・正方形はひし形でもあり平行四辺形でもある
・この教材は間違っている
・早急に修正するべきだ
ということで、DropKitそのものの価値まで否定するような内容でした。

多分ここのことかなと思います。

でも、これだとわかりにくくないですかね?

私も30年以上算数教えてるんで、その程度のことは知ってます。
ただ、「それをどこで抑えていくか」は、子どもの実態によると思っています。
まずは形のイメージと名前をつなげていきたいときに、
細かい性質まで一緒には難しい子もいます。
もちろん、「最初からそこをきっちり区別した方が理解しやすい」子であれば、そういうものを作ればいいと思いますし、私もそうするでしょう。

でも、最初からそれを求められるとより混乱してしまう子もいるんじゃないかと思います。

もちろん、「ひし形はどれでしょう」という問題に正方形を選んだら不正解になってしまって納得できないという子がいたら、
「本当だね。この形もひし形の性質が全部入っているもんね」と言って、
そこも正解になるように一緒に編集をするとかは、とても大事なことだと思います。

実は線つなぎのとこは、最初入れようか迷ったんですよ。
でもサンプルだし、「こんなことができる」をみてもらうのに、
名前・形・言葉での説明を繋げることができるのを知ってもらっておくと、
それぞれの形の持つ性質の学習へのバリエーションが広がるかなと思って入れてました。

でも、それで不愉快な思いをされた方がおられたのであれば、
申し訳ないです。
井上の意図は上記のようなものですので、
ご理解いただければ幸いです。


ただ、DropKitはとても優秀な教材作成のアプリで、
それを、そこに入っている私の作ったサンプルのせいで否定されてしまうのは残念だなと思いました。

サンプルはあくまでもサンプルですので、
使わなくてはいけないものではありません。
使えないと思われれば使えるものを作っていただければ。
あくまで「こんなことができますよ」というだけのものですから。

私は長く教材の紹介をしてきているので、
「うちのクラスの子に使ったけどダメでした」
とかいわれるのは慣れっ子です。
むしろそれは当たり前で、
私は自分が一緒に学習している子のために作ったものを紹介しているので、
「あの子にはこれでは難しいかも」とか
「もっとこうなら彼と使えそう」とか
目の前の子に合わせた気づきで教材化してもらうことが大事だとお伝えしてきています。


今回のクレームの話を聞いて思い出したのが、
この本にも書いたエピソードです。

重いディスレクシアで、学習機会にも恵まれなかった智が、
大学で学んだ集大成の動画を公開したところ、
「英語の綴りが違う」と指摘されたことで彼が追い詰められ、
当時の大学の指導教官の発言で救われたエピソードが
「綴りが違いますに負けない」の章がありますので、
興味のある方はよかったらご覧ください。


気がつくと指摘したくなる
というのは、私たちのような仕事をしていると半ば職業病のようになっているところがありますが、
それが子どもや相手を追い詰めてしまうことがあることは、
忘れず自戒していきたいと思います。




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