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下町ロケットオトン

 僕は、岡山の田舎でこの世に生まれてきた。体重も大きい元気な子。父、母、姉、弟二人の四人兄弟。一応長男。実家にいないけど。

 その一家の主のオトンについて書いてみる。本人を目の前にしたら、オトンなんか言わないけど。みんなの前では、オトンにしときます。

 もうすぐ50歳になるけど、あんまりおなかは出てなくて、俺んち特有のぷりけつの持ち主。いろんなところで遺伝を感じることがある。同じところにほくろがあったり、プリけつだったり、お酒が好きだったり、顔のしわが多いところもオトンに似ているかな。

そんなオトンは、東京の大学をでて、実家の家業を継いだ。三代目。建築関係の仕事をしている。下町の町工場。いろんなものを作って、お客さんに届けたり、お寺の修繕工事とか、いろいろやってる。だから、一人暮らしの時の家具は、全部オトンのお手製のもの。周りの評判もいいからやっぱりプロなんだなって思う。オトンは、家業を継ぐために進学させられたのがとてもいやだったみたい。自分の好きなことをさせてもらえず、家業を継ぐという道をおじいちゃんに敷かれてたらしい。だから、自分の子供にはそうさせないという思いで、今まで好きなことを好きにやらせてもらった。高校選びも、学科選びもすべて俺を肯定してくれた。親としては、もう少し高い学校も行けるからそこに行ってほしいという思いもあっただろうけど、野球がしたくて、甲子園に行きたくて選んだ高校に一切反対しなかった。本当にありがたいと思う。就職に関しても、実家に帰ってきてほしい願望もあったようだが、俺がこれをしたいって言ったら何も言わなかった。本当にありがとう。

 そんなオトンは、涙もろい。年なのかわからんけど、俺が物心ついたころから、涙もろい。なんで泣いてるんってことはしょっちゅうだった。だから、ペットに対する愛情も深い。新しいかわいい猫に家族が夢中になってても、オトンは前の猫のほうをもっと気にするようになった気がする。やっぱ優しいんかな。確かに、優しかった。今思えば。昔は、厳しくて怖かった思い出がたくさんあるけど。たまにコンビニ連れて行ってくれて、好きなもの買ってくれたり、野球用品もほしいものをオトンは買ってくれてた。母さんには内緒なって言って。ほっこりするなあ。いいオトンを持ったなって、一人暮らしをして改めて気づいた。いろんなものを我慢して、子供たちに還元してくれてたオトンがシンプルにかっこいいなって思った。だから、子供がある程度巣立った時、自分の好きな車を買ってた。むちゃくちゃかっこいい。いかついけど。【マセラティ・クアトロポルテ】エンジン音えぐくて、近所迷惑やけど、こういう車にずっと乗りたかったらしい。乗れてよかったな。

そんなオトンの夢は、俺の記憶が正しければやけど、「現代の名工になること。」らしい。「現代の名工」とは、技能者の地位と技能水準の向上を図るために設けられた、卓越した技能者表彰制度に基づき、厚生労働大臣によって表彰された卓越した技能者(卓越技能者)の通称です。 表彰の対象となるのは、金属加工、機械器具組立・修理、衣服の仕立、大工などの職業を分類した全20部門の技能者です(ネットより)。建設業界における国民栄誉賞みたいなことなんかな。それをとりたいって昔言ってた気がする。その夢聞いたのが、オトンが40くらいの頃やから、シンプルにずっと目標をもって頑張り続けてるのってほんまにすごいことやなって思う。こんな町工場で出たら、とんでもないこと。下町から日本全国へ。世界へ。頑張れ親父。下町ロケットオトンがとるからかっこいいんやで。これから、おじいちゃんになってむちゃくちゃ甘くなると思うけど、そうなってるオトンも仕事頑張り続けてるんやろうな。

「いつまでもあると思うな親とカネ。」ほんまにその通りやね。いつまでもいると思ったらあかん。親孝行できるうちに親孝行しよう。ありがとうが言えるうちに伝えておこう。これからも、ひとりの大人として、オトンとして、男として、かっこいい姿見せてくれな。親父を超えるようないい男になることが一番の親孝行やと思ってるからわしも頑張るでな。おとんの息子でよかったってほんまに思ってるで。体に気を付けて酒はほどほどに。おかんと仲良くな。

おとんの未来に幸あれ。

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