田代さんトーマス感想

スクルージ始まる気がして個別感想書き始めたんだけど終わらないかもしれない(真顔)→一応かけた

アルヴィンに引っ張られてた気弱な弟分、ずるくて誠実でやさしい人。“人気作家トーマス・ウィーヴァー”としてあんなに綺麗な作り笑いができるのに、アルヴィンの前でだけ余裕がないのを隠さない、隠せないのかな、あれずっこいよねえ。憐れなほど誠実で。
3度目の「神の偉大な図書館」でアルヴィンに言い訳をしながらトーマスはスピーチをするときのあの綺麗な作り笑いを浮かべてて、でもアルヴィンのひと言で真顔になり、また笑顔を作り直して次の言葉を口にしてというのを繰り返してて(はじめてのさよならで平方さんのアルヴィンが同じようにトーマスの一言で作り笑顔を剥がされるのを繰り返していて悲鳴をあげた。似たもの同士じゃん。) あの場面でトーマスの表情見たの1度だけなんですが、アルヴィンの前で嘘を吐き続けられないの可哀想になあと思って見ていた。その言い訳が本心だと自分を騙せれば楽になれるのに、アルヴィンの前ではできないんだなあって。その誠実さで苦しくなるのは自分なのに。
なんとなくだけど田代さんのトーマスは生来こわがりで人見知りな男の子なのかなって印象がある。アルヴィンに手を引かれながらあちこち振り回されて、でも楽しいことや素晴らしいものを見つけてくるアルヴィンを心から信頼している男の子。トーマスはさ、「ベルが鳴るのは天使が翼をもらった合図だ!」(記憶は彼らが11歳の時だけどこの部分はまだ導入で、聞いてるトーマスは本屋を探検する子供じゃなくて弔辞を書いてる大人のはずなんですよ。)やパパの話を口にするアルヴィンの背中をわくわくした楽しそうな顔で見てるんですよね。アルヴィンの世界を誰よりも愛しているのはトーマスなんじゃないかと思う。
年を重ねるにつれ対外的にはトーマスがアルヴィンを守るようになるけど、トーマスが重大なことを決めるとき一番に頼るのはアルヴィンのままなんですよね。物語的にもそうなんですが、このペアはトーマスがアルヴィンに見せる推しの弱さがあるぶんこの2人の位置関係は「バタフライ」を挟んでくるりとひっくり返る印象を強く感じた。

「いじめっ子の悪党ども」で殴られてるアルヴィンを庇って割って入り、返せ、返せよ!って怒鳴りつけてるときはすごく強気に見えるのに、その後アルヴィンに「でも冗談抜きで、何考えてるんだよ」って聞くときは怒ってるというより困ってる感じ(「何考えてるんだよ」って言いながら声がきゅっと高くなるのが責めるより訴えかける調子に聞こえる。)「むかつくぴらぴら虫」でもあんまり余裕がない。
このときアルヴィンに言い聞かせてることを、トーマスは自分でもやってるんだろうと思う。努力して。普通の男が好きな雑誌に興味があるふりをして、本当に好きなことは心の奥にしまっておいて、目立たないようにみんなに合わせて、そのことにも気が付かれないように。
「アクション映画とカーレースとスープが好き」な女性と「素晴らしき哉、人生」とお話づくりが好きなトーマスは話が合う気はしない。雑誌の中も取り出したときにぱらぱらめくるくらいであんまり興味なさそうだし。

田代さんのトーマス見てると、トーマスにとって「大人になる」というのは虚勢を張ることだったんじゃないかって思う。
いじめっ子に舐められない強気な態度でいること。サラに何を言われても穏やかさを保って話し続けること。綺麗な笑顔と流暢な言葉でおべっかを振りまいて、"完璧な人間"を演じ続けること。何も書けないでいること、頼る相手も頼られる相手も失ったこと、アルヴィンへの後ろめたさ、そういう弱い部分を誰にも(自分にも)見せず、孤独から目を逸らし続けて、心のやわらかいところに触れられる前に相手に背を向けて突き放すこと。
ノイローゼにもなるわ。アルヴィン今すぐこのワーカーホリックをベッドに放り込め。

あとこれは解釈も何もなく純度100%の幻覚かつ個人的なヘキなんですがこのトーマス、ハンカチの出し方や姿勢がお育ちが良さそうなのに所々仕草がお行儀悪くてその落差がすごい可愛い。机に足乗っけたりとか、余裕がないときの舌打ち(それでも3度目の挑戦では一回もしない、本当に追い込まれると出てこない)とか、考えてるときの手慰みや書けない苛立ちでボールペンをかちかち鳴らしてるのとか。目を輝かせてるときと雰囲気ががらっと変わって、情が薄そうというかナーバスそうというか、そういう風に見えるんだよね…見えません…?パンフの表紙めくったところのお写真にどう見えるか絶対わかってらっしゃるでしょう!って爆笑した。長い定規を持ってほしい。そういう意図でなかったらすみません。

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