『お嬢様がいないところで』頑張った

こんにちは。イノシシと申します。

肩の力の抜けたものを読みたいと思いまして、

『お嬢様がいないところで』鳳乃一真著 ポルタ文庫

にチャレンジしたところ、あまりにも、のめりこめなくて、投げだしたい気持ちと闘うのに大変苦労いたしました。頑張った。読みとおした自分を褒めよう。

これは、大財閥のお嬢様にお仕えする3人の使用人男性の日々の様子を描いた平凡な物語だそうです。少女漫画の執事モノが人気らしく、それと、今、はやりの水平思考を混ぜてみたら、面白くなるのではないの?という試みのようです。2巻も出ているので、それなりに人気があったようです。

『論理的思考力を鍛える33の思考実験』北村良子著 彩図社

を先に読んでいました。こちらはまさに解説書です。出だしのトロッコのエピソードは非常に面白かったものの、私が数学的思考に欠けるのか、後半の確率変動の話などがさっぱり理解できなかったので、もうすこし、柔らかい物語風に読んだら分かるのかなあと思っていたこともあり、表題の本を読むことになったのです。

数学的思考が得意な方は、『論理的思考力を鍛える33の思考実験』がおすすめです。

苦手な方も、テセウスの船の話は読んでほしいです。現実問題のいろんな場面で、「これって、テセウスの船が提起している疑問?」てことにぶつかります。

古くて、修理しまくられて、すっかり元々の部品が無くなった船と、オリジナルに忠実に再現された船とは、どちらが正しいテセウスの船なの?

話を、『お嬢様がいないところで』に戻します。やはり、私は、実験的な思考、水平的な思考が苦手すぎるようです。論理の展開についていくのがむつかしい。かつ、稚拙な文章が大嫌いなので、美しくない文章にぶつかる度に、イライラするという。ダブルパンチ。

大財閥の豪邸の中での物語のはずなのに、お屋敷に関しても、調度品、服飾に関しても、豪華絢爛さにうっとりできる部分が見当たらない。

編集者さん、これでよく、ゴーサイン出しましたね。ああ、おそらく、ティーンズ向けの本なのでしょうね。それにしても、それだからこそ、この文章力はないと思います。原案だけにして、もっと、文章の書ける方にリライトしていただけば良いのにと歯がゆい。コメディーなのは、分かるのだけれど、だからこそ、背景の細部をきちんと書き込んでこそ、登場人物が生き生きすると思うのですが。

例えば、鬼滅の刃だって、所詮、漫画と言えばそれまでですが、せりふ回しが、子供の理解を超えるような古典表現だったからこその、迫力だったと思うのです。

表面だけをなぞるような文章の中では、物語の中の、思考と思考のぶつかり合いも、楽しめませんでした。

楽しかったのは、三人が定番のお茶の時間にいただく、お茶菓子たちの表現だけでした。文章って、書き手が五感を稼働させていれば、読者に伝わりますよね。知っていて、触れて、見たものを書いていると伝わる。浅い知識で、実物を見たこともなく、香りを嗅いだこともないものを書いていると、ばれてしまう。

やはり、一流の文学者って素晴らしいし、稀有な存在なのだなあと、再認識する機会となりました。




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