『ラストニュース』(作・猪瀬直樹 画・弘兼憲史)第3話「勇敢な若者」 

 僕が『ラストニュース』を思いついたのは、いまから30年以上前になる。「ビッグコミックオリジナル」誌に連載されていた弘兼憲史さんの『人間交差点』(原作・矢島正雄)のファンだった。一度、弘兼さんといっしょに仕事をしたいな、と考えていたところ、『人間交差点』が終了した。

 こうして弘兼・猪瀬コンビによる『ラストニュース』が始まることになった。『人間交差点』のテーマをそのまま引き継ぐだけでなく、新しい切り口を加えたいと思った。日常生活のなかのさりげない心の動きをめぐるドラマであっても、舞台を影響力の大きいテレビ界にしてみたらどうだろう、と。

 そのころ、テレビにかぎらず、メディアはさまざまな課題をかかえていると感じており、なぜ日本ではきちんとした調査報道ができないのか、と不満もあった。

 そこでプレスオンブズマンの機能をもった番組を、フィクションのなかにつくってみようとの提案の意味を込め、この作品を書いた。

 『ラストニュース』は、だから一日の最後の11時59分からはじまる、予算のあまりつかない検証番組、プロデューサーが役員を説得してようやく獲得したという枠という設定で命名された。その日の自局でのニュースやワイドショーをチェックし、誤報や掘り下げが不充分であれば独自の取材で検証する。そこに僕の思いが込められている。

 メディアが国民の代弁者として権力と対峙しないで、弱者を踏みつぶすようであってはいけない。許されない。テレビ局は提供スポンサーの意見には敏感だけれど、誤報やプライバシー侵害などの報道被害者たちの声には鈍感になりやすい。そういう面でもメディアは内部に自浄作用のできるシステムを設けたらよい。





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