石原慎太郎さんは卓越した直感力の人だった。

 石原慎太郎さんは卓越した直感力の人だった。いっけん乱暴な物言いをするので誤解されることが多かったが、ほんとうはとてもシャイな人だった。
 地球温暖化に対して強い危機感を抱いており、ディーゼル車の排ガス規制を、業界団体に対して及び腰の政府にしびれを切らし、いち早く東京都の条例で実施した。
 2016年東京五輪招致(招致活動は2009年)も、環境五輪を全面に打ち出して100ヘクタールの中央防波堤を植林して森をつくった。東京湾から流れ込む熱風をやわらげ都心のヒートアイランド現象を緩和させるためである。
 内向きに傾いている日本の若者に、世界の一流アスリートの筋肉の躍動感を眼前で感じられるようにしたい、そのために東京五輪を開催したいという切なる気持ちがあった。凡庸な政治家とは異なる文化国家建設の使命感の持ち主だった。
 石原さんは、この役人国家を東京からいっしょに変えよう、と頭を下げて僕に副知事就任を要請した。無警戒で素直になることができる、そこが石原さんの類いまれな魅力である。

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