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『ロシア発 世界恐慌が始まる日 新たな戦勝国と敗戦国が決まる』極めて薄っぺらい未来予測(環境研究)

 タイトルから今後の経済を予測していると思い読んでみた。2022年4月30日に発売されたものなので、ロシアのウクライナ侵攻後すぐに書かれたもののようだ。既知の円安、オイルガス高、小麦高などの現在の状況が羅列されいるだけだった。日本はエネルギー自給のためSMR(小型原発)を工業団地やデータセンターの地下に設置すれば送電ロスも減るという高市早苗氏の意見も掲載されている。

 システム工学には、未来予測として以下の手法がある。

1)単純外挿法
2)扇形外挿法
3)デルファイ法
4)シナリオ・ライティング法
5)アスク・ジ・オーソリティー法
6)POSF法

 この本の未来予測方法は、4)のシナリオ・ライティング法とも思われるが、予測の前提をロシアの敗北としているので、ロシアと中国、イランなどが形成するG7に対抗したBRICSの分極化体制をシナリオに含めていない。シナリオはいくつか考えて、それぞれに合致する情報と反する情報を集めつつ、収斂させていく必要がある。

 スリーランカの例から中国の一帯一路などの対中債務に苦しむ国の破綻を恐慌としている。そして、ロシアの戦費は枯渇し、戦後賠償でエネルギーが没収される、と。中東にも政変が起き、日本はうまく立ち回ればサハリン1、サハリン2を手に入れることができるともしている。

 ロシアの歴史、ウクライナの歴史、その地の宗教、それぞれの性格、アメリカとイギリスの性格、大陸国(フランス、ドイツ)の性格などを含め、未来を予測する際に必要な情報量が著者の教養として蓄積されていない。したがって、極めて薄っぺらい未来予測となっている。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。