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DDT12.5後楽園大会雑感




DDTシングル総当たりリーグ戦「D王グランプリ」決勝戦。
Bブロック竹下は順当にしても、Aブロック上野は意外だった。秋山と遠藤に勝ったのは見事。
なおこの大会はリニューアルした動画配信サービス「レッスルユニバース」旧会員からの継続契約特典チケットで見に行きました。
行ったら6500円の席だった。ありがとうございます。

渡瀬瑞基壮行試合とか、第2試合で雑に扱われる大仁田厚とか、佐々木と高尾のユニバーサル戦とかもありましたが、今日はメインの決勝戦についてだけ。

竹下と上野は高校の同級生ということで知られてるけど、今日流れた煽りVでプロレスラーとしては決してフラットな関係でないことが示される。

高校時代から運動部で注目されて、高校2年の夏にプロレスラーデビュー(それも武道館で)する竹下を同級生の上野勇希は「すごいな」と見ていたという。
当時の二人は格別仲が良かったわけでなく、二人で話したことはほとんどなかったけど、グループで一緒に行動することはままあった。

竹下「高校のクラスの中でいろんなグループがあるじゃないですか。勉強できるグループだったり、運動部のグループだったり、オタクのグループだったり。上野はやんちゃグループの隅っこにいた。高校で一番モテてましたね」

上野「(モテてた発言に)竹下はよくそれを言いますけどね、あいつはそういうのを超えて別格でしたよ。陸上の大会で記録出して、それでプロレスラーにもなって。別格で知られてましたよ」

高校卒業後は日体大に通いながらDDTでプロレスを続けてた竹下に対し、上野は寿司屋と自転車屋でアルバイトをかけもちしていた。
木曽レフェリーのブログによればこの自転車屋はサイクルベースあさひで、人当たりのよかった上野はここでもいろんな人に好かれるが本人は迷いの時期だったらしい。

竹下
「上野から連絡あって話したんですよ。『俺もタケみたいになりたい』って。『なればええやん』って。DDT受ければ、って」

上野はDDTのプロテストを受けた。「竹下紹介枠」でなく、一般受験で。

上野
「テストの時、志望動機は?ってみんな聞かれるんですけど、僕が『同級生がプロレスやってるのを見てプロレスラーになりたいと思いました。その同級生は竹下幸之介です』って言ったら、全員どよめきまして」

入門してきた上野に竹下はわざと距離を置いた。

竹下「あーこいつ(=上野)は竹下の友達だからうちにいられるんだな、って思われたら困るからですよ。デビューするまで、練習生時代は挨拶以外一言もしゃべらなかったですね」

上野「(竹下の真意は)それはわかってました。特別扱いされたくはなかったですし。けど、しばらくはずっと周りの人たちに『タケ友』って呼ばれてましたね」

上野は2016年10月にデビューした。
竹下はその5ヶ月前の2016年5月に最初のKO-Dチャンピオンになっている。
同級生とはいえ、天地の開きがあった。

上野はキャリア4年を迎えた2020年からタイトル戦線に絡むようになり、2020年1月にタッグチャンピオン、2020年11月にDDTユニバーサル王座のチャンピオンになる。

竹下
「上野はね、僕がなりたかったレスラーになったんですよ。僕はもともと『ジュニアヘビー級の選手だけどヘビー級にも勝つ』っていう選手になりたかったんです。けど僕は身体が大きくなりすぎてしまった。
それを上野が今やってるんですよ(秋山準に勝った試合が映像で流れる)」


以前は竹下のアドバイスに耳を傾けていた上野だったが、最近はよく意見が衝突するという。

竹下
「あいつは試合後に『どうだった?』ってすぐ聞きに来るんです。僕はそれに自分の思ったことをいろいろアドバイスしてたんですけど、あいつはどうやら違った文脈だったり解釈をしてたらしいんですね。
僕では考えもつかないようなことを考えてたりする。
上野勇希という選手をエデット(※プロレスゲーム『ファイヤープロレスリング』で0から新しい選手を作るモード)していくうちに、とんでもない選手になってしまった。
うわーなんて選手になっちまったんだこいつは、ですよ」

竹下と上野は一度だけ対戦している。2017年。
当時は格の差がはっきりある、竹下が胸を貸す試合だった。
当時の上野は一若手に過ぎなかった。

竹下
「上野は僕に憧れて入ってきた人間じゃないですか。それに負けるわけにはいかない。壁にならないと」

上野
「タケがいるから、頑張れたんですよ。目標でしたから。あいつが。
ようやく手が届くところまで来たのかな、って感じですね」



後楽園ホールで向かい合った二人を見ると、あらためて体格差が際立った。
187センチ105キロの竹下は筋肉質なのもあって見るからにガッチリしており、174センチ78キロの上野は締まった身体つきをしている。
内面的には「同級生対決」だったにしても、外見的には「ヘビー級vsジュニアヘビー級」になっていた。

しかし試合は一方的にならない。
フィジカルで勝る竹下が試合をリードするも、上野は竹下が攻勢になる直前で交わしていく。
中盤まではむしろ上野の試合だった。

それでも体格差が徐々に上野のスタミナを奪っていく。
終盤、竹下が怒涛の攻撃を加える。
上野をトップロープに乗せると自分もトップロープに登って雪崩式のジャーマンを見せ(飯伏光太か!)、バックを取り合う展開からクロイツ・ラスを出す(ケニー・オメガ!)。
『同級生対決』の枠に竹下はこっそりDDTレジェンドの技を入れていた。
それでも上野は肩を上げ、竹下に向かっていく。
フィニッシュを狙ったスープレックスを、変形チキンウィングフェースロックを返されるたび、竹下の表情には驚愕の色が浮かんだ。
それを見て初めて「あ、上野は竹下に並んだんだ」と理解した。

最後は秋山準を破ったプルスウルトラと胴締めの変形技。なりふりかまってないところに竹下の必死さが見てとれる。
しかし終わったあとの印象としては「竹下完勝」が残る。
上野は竹下の攻撃を時に受け、時に交わし粘ったけど、竹下ヤバい!という瞬間は少なかった。
かくして同級生対決第一章は竹下完勝、という順当な形で幕を閉じた。

試合終了直後、リングにエモーショナルな空気がまだ残る中、竹下は12/26代々木大会のタイトルマッチ挑戦者として大日本プロレスの岡林裕二を指名する。
岡林が出てきて、竹下に「ピッサリ!」とポーズとともに宣戦布告する。

観衆がリングの二人に気を取られる中、西側通路を上野が頭を押さえながらヨロヨロと引き上げていく。
激闘した上野に拍手を送るのはそれを間近で見ていた西側通路の観客だけだ。
いつか上野がリング上に残り、竹下がリング下を引き上げていく日は来るだろうか。
プロレスはいつでもエモーショナルで、厳しくて、そして優しい。



#D王GP2021   #ddtpro

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