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3.19全日本プロレス後楽園大会雑感

【3.19全日本プロレス後楽園大会雑感】

久しぶりの全日本。
市瀬英俊「夜の虹を架ける」を読んで以降、全日本が見たい欲が高まってました。

三大タイトルマッチが効いたのか、後楽園ほぼフルハウス。素晴らしい。

▼6人タッグマッチ 30分1本勝負
[Evolution]青木篤志/佐藤光留(パンクラスMISSION)/○岡田佑介
9分38秒 逆エビ固め
●大森北斗/青柳亮生/田村男児

今に始まったことじゃないが全日本の若手はみんな「あすなろ戦士」感を持ってデビューしてくるのが素晴らしい。
それはそれとして、3人とも同姓のレスラーがいるのだから早く改名した方がいいと思う。

▼6人タッグマッチ 30分1本勝負
秋山準/○ウルティモ・ドラゴン(闘龍門MEXICO)/TAJIRI(フリー)
10分21秒 ラ・マヒストラル
●渕正信/大森隆男/ブラックめんそーれ

同行した柳澤さんが「素晴らしい!」と叫び中村さんが「これだけで5000円の元が取れます」と唸る渕劇場。
みんなが幸せになる世界。
ジスイズ全日本。拳はパー。

タッグマッチ 30分1本勝負
ヨシタツ(フリー)/●青柳優馬
10分21秒 バックドロップ→体固め
[Sweeper]崔領二(ランズエンド)/○ジェイク・リー

宮原の下にいる頃のジェイクは田上っぽかったがSweeper結成して以降は小橋っぽくなった。
自信ついてきた感がある。

▼6人タッグマッチ 30分1本勝負
ゼウス/KAI(フリー)/●丸山敦
11分17秒 エルボードロップ→踏みつけ式体固め
○ジョー・ドーリング/ディラン・ジェイムス/フランシスコ・アキラ(ICW)

デカくて強い外人がタッグを組んでいる、という点でジョーとジェイムスのタッグはジャイアント馬場の思想をちゃんと受け継いだ「全日本プロレス」を体現している。
すごいな。本人たちは馬場に会ってもいない世代なのに、ちゃんと全日本ぽい。
そこに若干うさんくさいアキラが入ってるのもいい。

ジョーがフィニッシュで冬木弘道のマッチョポーズを取ったのにハッとした。
今日は冬木弘道の16回目の命日だ。
ジョーはそのことを知ってたんだろうか。
それともただの偶然だろうか。

▼世界ジュニアヘビー級選手権試合 60分1本勝負
【王者/Sweeper】○岩本煌史
13分18秒 孤高の芸術→片エビ固め
【挑戦者】●鈴木鼓太郎(フリー)
※第50代王者が二度目の防衛に成功

このところ全日ジュニアは岩本の天下みたいになってるが、岩本がどういう点で優れているのか、今ひとつよくわからない。 
調整方のリーダーなのかなとも思う。KUSHIDAみたいなものか。
 
途中まで鼓太郎が技量で圧倒して、おいおいこれまずいんじゃないの、ってところで鼓太郎が技をミスって、そこからは岩本がペースを握る試合。
徹底的にローリングエルボーを狙う鼓太郎と、鼓太郎の回転に合わせて徹底的に背負い巻き投げ(「孤高の芸術」という技名らしい)を狙う岩本の攻防が素晴らしかった。
そして孤高の芸術はダメージを与えつつ一瞬で丸め込む、どちらかといえば押さえ込み技なんだなと見てて思う。
確かにピシッと決まったらなかなか返せないわあれは。

▼世界タッグ選手権試合 60分1本勝負
【王者組】関本大介(大日本)/●岡林裕二(大日本)
26分48秒 ジャイアントスラム→片エビ固め
【挑戦者組/暴走大巨人】諏訪魔/○石川修司
※第84代王者組が二度目の防衛に失敗。暴走大巨人が第85代王者組へ

プロレスを見てるとたまに
「すごかった。
 いやすごかった。
 すごかった…」
としか出てこない試合に当たるが、まさしくこの試合がそうだった。
デカい男たちがぶつけあう力と力。
みなぎる気迫。
ほとばしる気合い。
死にそうな肉体的事故。
今年見た中では文句なくベストバウト。
こんな試合が目の前で見られることに感謝したくなるというか。
隣の柳澤さんがずっと「すげー!」「面白いー!」と言ってました。

終盤、関本にバックを取られた諏訪魔が投げられまいとしてうつぶせのように体をマットに四つんばいになったところ、関本が「ふぬぬ!」とすごい表情でそれを持ち上げてしまい、諏訪魔が恐怖心に満ちた表情のまま投げられていく場面が忘れられない。
それと関本岡林の眉山に投げられそうになる諏訪魔を石川が手を握って阻止するところとか。
ヘビー級プロレスの完成形じゃないかなあ。天国の馬場が泣く気がする。

ほんとにこれみんなに見せたい。
2019年にこんな素晴らしいものが見られるって、奇跡みたいなことだから。
この組み合わせまたやってほしい。

▼三冠ヘビー級選手権試合 60分1本勝負
【王者/NEXTREAM】○宮原健斗
28分58秒 シャットダウン・スープレックスホールド
【挑戦者】●野村直矢
※第62代王者が三度目の防錆に成功

野村直矢三冠初挑戦。

私が全日本見に行くようになった5年くらい前、野村は第一試合で土方隆司とかにただやられるだけの若手だった。
そのうち野村はセミ前くらいの6人タッグに入れられるようになり、ひたすら諏訪魔とかジョーにやられる役だった。この期間は長かった。肉体的にもしんどかったと思う。
「野村辞めないといいな」といつも思ってた。

そのうち自分でフォールを取れるようになってきて、同じく叩き上げの若手である青柳優馬と組んでアジアタッグとかに出るようになった。
どちらかといえば青柳の方がチャンスは与えられていた。J-CUPに全日本代表で出たのは青柳だったし、DDTから竹下幸之介が出た時に突っかかったのも青柳だった。
野村はそんな青柳を横目に粛々と試合し、身体が大きくなってきたこともあってそのままヘビー級戦線に入った。

やがて全日本でユニットが再編されることになって、宙に浮いてた野村と青柳に宮原がすぐ声をかけたのは当然だった。そして宮原、ジェイク・リー、野村、青柳の四人でNEXTREAMというチームができる。
野村は少しずつ中堅どころにも勝てるようになり、去年のアジアタッグ戦で野村と青柳の二人が永田裕志&秋山準に勝った時は「ここまで来たか…」という思いを禁じ得なかったけど、ついに野村は三冠挑戦までやってきた。

若手の三冠初挑戦、というとどうしたって「頑張りました」で終わるのが普通なのだが「いつのまにこんなことができるようになっていたんだろう」と感心させる攻撃や切り返しを見せて館内を熱狂に巻き込んだ。
終盤には健介オフィス出身の宮原にノーザンライトボムを出したり、見事に「プロレス」をしていた。
まだ勝負所で動きが止まってしまったり、自信と経験の不足で空回りしてる部分もあったがそれを差し引いても野村のベストバウトだったと思う。

この試合で特に目立ったのが野村が宮原の「お約束」を可能な限り交わす/反撃するという展開で、シャットダウンをバタバタしてかわしたり、試合の流れを変えるヒザ(ブラックアウト)にカウンターでエルボーを入れたり、想像を超える流れだったので何回となく声が出た。
同時にこれを許してしまう宮原の異常なまでの懐の深さは何なのだろう、と感心した。
80年代にリック・フレアーが足四の字にいく場面でかけられてる側の若手選手がフレアーの尻を蹴ったら、その選手はもう試合に出れないだろう。
馬場の16文キックにカウンターでドロップキックを入れたらその選手はクビになるだろう。

しかし2019年の宮原健斗はチャンピオンでありながら若手にそれを許す。その上で「自分が上」を示す。すごいことだ。
丸藤あたりもそれを許したりする。
棚橋は「一回くらいならいいけど、何回もやったら許さないよ」というスタンスに見える。内藤は明確に許している。
このあたり興味深い。
世代的なものもあるのだろうか。

宮原は試合後のマイクで「ジェイクに続いて野村も俺の元から離れた。俺の人望の無さが浮き彫りになっている!」と語って笑いを取っていたが、こういうことを言えるのもなかなかすごい。
宮原はナルシストキャラが目立つが、それ以上に「懐の深さ」を持っている。

ジャイアント馬場が亡くなって20年経った。
武藤全日本時代には希薄になっていた「大きな体の男たちがぶつかり合う迫力こそがプロレスである」という「馬場思想」がまだ生きており、そして「NEO四天王プロレス」のような試合を宮原がしている。
今の全日本は非常に面白い。

#プロレス観戦記 #全日本プロレス #ajpw

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