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【初投稿】中国新聞の猪股です


縁もゆかりもない広島へ

 もう、何度驚かれただろう。「仙台からよう来んさったねぇ」。取材先で出身地の話題になると、反応はほぼ一様である。そして「広大(ひろだい=広島大学)出身なん?」と問われる。「いえ、大学は神奈川の方なんです」と返せば「ほえー」という感嘆の声を浴びる。

 すっかり慣れたやり取りに「うちの地元では『ひろだい』って言われたら弘前大、『やまだい』は山口大じゃなくて山形大、『ふくだい』は福山大じゃなくて福島大なんですよ」と付け加えれば、大抵、場が盛り上がる。広島の人々の温かさに触れ、早くも丸3年が経とうとしている。

 私の故郷は宮城県仙台市青葉区。中国新聞の本社がある広島市中区土橋町からは、直線距離で約860キロ離れている。編集局内には東北大出身の先輩はいるが、同郷の方が居るとは聞いていない。おそらく、社内で唯一のみちのく生まれ、みちのく育ちの記者である(では一番遠くから入社したのかと問われれば、残念、北海道や海外出身の先輩がいるのでベスト遠方賞は受賞できない)。

 取材相手のみならず、同僚からもしばしば問われる。「猪股君は縁もゆかりもないのに、どうして広島の中国新聞に入ったの」。最初は律義に答えていたが、最近は「まあ、ご縁があったからですかね」とぼかすようになった。就活中の諸々の事情はさておき、実際、1つ1つの現場で「ああ、この取材をするために自分は中国新聞に来たのだな」としみじみ思う。入社後3年を振り返ると多くの出会いと縁に支えれたと思うと同時に、今後も数え切れないつながりが生まれると思うとワクワクする。

語り足りないことがある

 在籍している福山市の備後本社での生活はまもなく3年目。長年の購読者には釈迦に説法のような話であるが、中国新聞は地方面が多い。例えば広島市内に届けられる紙面では「広島都市圏」、山口県内では「岩柳」「山口総合」といった、その地域でしか読めない「隠れ面」がある(隣圏であれば隠れていない場合もあるが)。支局の記者はその地方面にニュースを届けるのが主な仕事の1つとなる。備後本社であれば「福山・尾三面」。社内では「福尾(ふくび)」と呼んでいる。

 福尾面は広島市内や山口、島根県内に配られる紙面では読めない。デジタルビューアーを利用するか、取り寄せてもらうしかない。時折、福山市外から来訪した人を福山で取材したとき「新聞に載ったと聞いたけれど、載っていない」と電話が来る。申し訳ありません、福尾には載っているんです。

 この福尾面にしか載らない記事がある。「新風びんご」「ピープル」「びんごメール」である。

 「新風びんご」は、備後地方で活躍する若い世代を取り上げる、人にフォーカスしたコーナー。2014年1月に始まり、原則として毎週土曜の朝刊に掲載される。

 「ピープル」は世代を問わず、地域で活躍する人を取り上げる、新風びんごよりは短いコーナー。こちらは毎週火曜掲載。

 そして「びんごメール」は備後本社管内の記者がローテーションで書くコラム。日頃の取材で感じた事、備後地域の住民として思ったことを記者が書く。「びんごメール」の題によるコラムは2019年3月に始まった。

 こちらは大体、4カ月に1回、自分の番がやってくる。1回につき500字ほど。これが、私にとってもどかしい。 

 コラムに書きたい話は毎日あふれ出てくる。新型コロナウイルス禍の影響で福尾面がない期間もあったため、私は2021年3月に着任して以降、たった4回しかびんごメールを書けていない。こぼれ落ちてしまったエピソードは山ほどある。喜怒哀楽、艱難辛苦、一喜一憂…。福山、神石高原で体験したあらゆる感情を、できることなら届けたい。昨年末にようやくツイッターのアカウントを開設したものの、140字は非常に短く、刹那的感情でさえ全てを記すのは難しかった。結果、このnoteが誕生した。いわば「びんごメール拡張編」とでも言えるのだろうか。

よそ者として

 福山の人と話していると「ここらは何もないでしょ」と自虐的な街の評をしばしば聞く。福山を「何でもあるけど何にもない」と表現する人もいた。いやいや、そんなことはない。私は2年間福山市民として生きているが、全く飽きがないし、これから飽きが来る気配もないほど福山は楽しい街である。

 先述した「新風びんご」や「ピープル」の人選に長年困っていないのはその証左だと思う。魅力ある人がたくさん暮らしており、たそがれるのにロケーションがピッタリの芦田川があれば、瀬戸内の多島美を楽しめる鞆の浦がある。神石高原に行けば温泉もある。ゆっくりできるカフェはたくさんあるし、居酒屋もバーもそろっている。ご当地のサッカーチームは勢いがあり、最近は映画の撮影地としても話題が尽きない。それに、私が大好きな日本酒の酒蔵もある。とにかく、挙げ出せばキリがない。

 このnoteではそんなよそ者として感じた備後の魅力、支局記者として抱いた感慨を中心に記していきたい。これまでVoicyや動画でも紙面に載せきれないエピソードや風景を発信してきたが、noteでさらに細かい点をお伝えできれば幸いである。


最後にこっそり自己紹介

  • 誕生日:9月20日

  • 血液型:O型

  • 好きな食べ物:うどん

  • 好きな本:高野悦子「二十歳の原点」、三浦綾子「氷点」

  • 好きな漫画:「ハコヅメ」「ゴールデンカムイ」「クレヨンしんちゃん」そして、永田カビさんのエッセイ漫画

  • 好きな映画:「1987、ある闘いの真実」「ミザリー」

  • 特技:どこでも寝られること

  • 趣味:旅行とスーパー巡り


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【初投稿】中国新聞の猪股です|猪股修平 中国新聞記者