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豊島のはなし

「豊かな島」と書いて「てしま」と読む。
香川県高松港からジェット船で35分のこの島をご存知だろうか?
国立公園があり、アートが島中に溢れている本当に美しい島だ。

この豊島でユニクロ・GUの社員のみなさんと瀬戸内オリーブ基金ボランティアに2日間に渡って参加させていただいた。
学んだこと、私なりに感じたことをnoteに綴りたい。

なお、ここで綴る活動は全て、ユニクロ・GUの社員の皆さんと一緒に行っている。

瀬戸内オリーブ基金ボランティアとは?

瀬戸内海の美しい自然を守り、再生することを目指して2000年にスタートした活動。ユニクロ・GUでは、2001年より店頭での募金活動を行い、サポートを続けている。

主に、募金・植林活動・海のゴミを拾う活動などを行なっているらしい。


高松空港から高松港まで車で移動。さらにチャーター船に乗り換えて豊島へ向かう。
あまり時間がなかったため、船の中でヘアメイクをしてもらう。

船酔いするから「酔い止めを持っていかなきゃ」とあれほど気をつけていたのに忘れた。酔い止めを飲んでいないという気持ちだけで船酔いしそうになった。

島に着くと、社員さんがワゴン車で迎えに来てくださった。自然のままでガタガタした山道を通ったりして、アトラクション感覚の道が楽しかった。

島についてからの第一印象は、「自然豊かな素敵な島」だった。
綺麗な青い海、遮るものがない空、肺が足りないと感じるくらい美味しい空気、目に入る豊富な緑。

わたしはここが好きだと、島に足を踏み入れた瞬間に感じた。

しかし、この島には悲しい歴史がある。

オリーブ基金のきっかけにもなったこの歴史について、「豊島こころの資料館」で住民の安岐(あき)さんという方から教えていただく。

豊島事件。

1965年頃から土地を所有する業者によって国立公園の砂を採取し尽くすと、跡地に有害産業廃棄物処分場を計画、住民たちが猛反対。

そこで業者は「木屑、食品汚泥など無害な産廃を利用してミミズの養殖をする」と事業変更の申し出をして、香川県が1978年に事業許可を出してしまった。

「ここまでみんなで監視していたら業者も悪いことはできないだろう。」という県と、

「国立公園の美しい自然を簡単に壊してしまう業者が悪さをしないわけがない。」と警戒を強める住民

結果、業者はほどなくしてシュレッダーダスト、廃油などの有害廃棄物を持ち込み産廃の不法処理、野焼きを始めた。

資料館には運ばれたゴミの一部を剥ぎ取ったものが展示されている。

高さは3メートル位?
拡大すると、さまざまなゴミが。

よく見ると、金属の破片、パイプのようなもの、コードのようなもの、いろいろなゴミが土に混ぜられて捨てられていた。

写真では見ていたが、本物の展示を見ると想像以上の「ひどいゴミ」だった。

自分の住んでいる街に、これが91万3000トンもトラックで運び込まれる日々をただ見ていることしかできない悔しさを想像すると心が痛い。


安岐さんの「この中には豊島のものは一粒もない」という言葉が印象的だった。

安岐さんとユニクロ・GUの社員のみなさん

野焼きによる黒煙や煤が風向きによっては島全体を覆い、激しい悪臭を放ち、島には喘息の子どもが増えた。


6000回以上、会議を重ね、公民館のたたみがすり減るほど話し合いを行い、島民の方たちの戦いは始まった。

ここに書いたことは豊島事件のほんの一部の概要にしか過ぎない。書ききれないくらいの壮絶な戦いなのでぜひ詳しい経緯を調べてみてほしい。



処理しきれなくなった都会のゴミはこんな姿になってしまった。
資源は有限だし、自分達が捨てたものはどこかでなんらかの形で処理をされる。
捨てたゴミの先にも人はいて、誰かが処理をしなければならないのだ。


あきさんの心に訴えかけられる説明に、社員のみなさんの中には、熱心にメモをとっている人や、涙を流して聞く人もいた。
話をきくと、何か私が島のためにできることはないだろうか?そんな気持ちになる。

囲み取材。

囲み取材でも、「島のために何ができると思いますか?」という質問をいただいたが、「島民の方々は、血の滲むような努力をして、できることは全てやってきたのだろう。今更わたしが何かしたいなんて、必死に戦ってきた島の人に失礼かもしれない。」これが正直な気持ちだった。

簡単に軽い言葉を並べたくないのに、語彙が出てこない。これを伝えるということがわたしができる微々たることなのに。メディアのみなさんを前にしてそんな気持ちだった。


安岐さんから話を聞く。

安岐さんは熱く豊島事件のことを語ってくれる。安岐さんの中の何かを削って話してくれているんじゃないか。そう思うくらい懸命に話してくださった。
お話が終わると、「寒くない?大丈夫かい?」と微笑んでくれた。安岐さんは、強さと優しさの両方を持ち合わせている方だ。

「あなたみたいに前に出る仕事の人に、豊島のことを伝えてほしい。」と言っていただけてグッときた。申し訳なさ抜きに、安心して発信できると思って。

ゴミが捨てられていたところ。

産廃特措法による国の財政支援は令和5年3月が期限で、県はそれまでに整地などの大がかりな工事を終了させるため、この日も急ピッチで作業がされていた。



ひととおり安岐さんの話を聞いた後、公民館に移動して岡山大学の嶋教授に明日の植林活動についての講義を聞く。

どうして植林をするのか?土を剥ぎ取ってしまうことがどれだけの破壊行為なのか?
改めて、壊すのは一瞬で戻るためにはものすごい労力と膨大な時間がかかることを知る。

1日目の活動はここまで。たくさん学び、強く感じることがたくさんあった。
しかし、この気持ちをどう表したらいいのか。自分が感じたことを言葉にし尽くせていない悔しさをたくさん感じた。

明日はいよいよ植林活動だ。


夜ご飯は、食堂101号室というご飯屋さんへ。


ゆるく可愛らしい。

古民家を改装した本当に素敵な雰囲気のお店だった。明るすぎない照明と、木の温もりで心がほかほかして実家に帰ったような落ち着きがあった。

入口の木の生い茂り方が素敵。


天ぷら、牡蠣のグラタン、炊き込みご飯、チーズケーキ、、、ひとつひとつ口に運ぶたびに「これ美味しいですね」とみんなで感嘆した。
話して、のんで、味わって。本当にいい時間だった。

こたつがまた、場を和ませた。

暖かい照明に目が休まる。


お店を出て空を見上げると星が空いっぱいに散りばめられていた。一個あたりの輝きが強くて、首がもげそうなくらいに見上げる。


写真を撮って「やっぱり上手く写らないですね笑」と話すが、こんなにも発達しているスマホのカメラでも肉眼に叶わないことに正直安心した。

たらふく食べて、宿泊は豊島エスポワールパークという宿泊施設へ。

どこからみてもいい景色。

部屋は木でできていて、中に入ると木のいい香りがぶわっと入ってくる。

神経が休まる香り

普段、ホテルに着くとなんだか寂しくて自然にテレビをつけてしまうが、ここにはテレビがない。
見ようと思えばスマホでいくらでもテレビは見られるが、不思議と寂しさを感じなかったので静かな空間を楽しんだ。

外の芝生で寝っ転がり、星を見る。街の静けさや暗さがとてもいい。

そういえば、音がなくて静かな空間って久々かもしれない。そんなことをふと思った。

部屋に戻ってスパイス紅茶を飲んであたたまり、森に包まれたような気持ちで23時には眠りについた。

朝を迎えるのが楽しみだと思った。


食堂101号室

豊島エスポワールパーク