父でありCEOであったヴィム・ジェターク

13話でのラウダの様子を見て、改めて見返すとヴィム・ジェタークが父でありCEOとして、息子はじめ従業員たちを守ろうと頑張っていたことが見えてきた

俺だけの戦いと、兄さんだけの戦いじゃない

ラウダも言っていたように、3話の再戦はグエルだけの戦いじゃなかったのだ、むしろそう考えていたのはグエルだけだったかもしれない

「これは社用だ」と言ったが、事実4話で決闘の負けから融資の打ち切りが持ち上がった。決闘は子どもの遊びじゃない、会社の威信をかけたプロモーションの場なのだ
ミオリネだって(株)ガンダム宣伝のために利用したではないか

ちゃんと説明していたヴィム

「このスタッフもダリルバルデも、お前を勝たせるために俺が集めたのだ」と、ヴィムはちゃんと説明している
確かに「戦うのはお前だが、その結果が会社の人間全部にかかってくるんだぞ」と事細かに説明はしなかったものの「子供のプライドが入る余地はない」とも言っている、1から10まで説明しないと分からないのなら、それはグエルの問題の方も大きかろう

それでも矛先は「魔女」だった

そんな息子が勝手して負けてしまい、スポンサーにそれで詰められてもヴィムは怒りを「魔女めが」と息子には向けなかった
12話での「探したんだぞ」で明確になったが、この頃からちゃんと息子への愛情や信頼は垣間見せていた

それは実は1話から見せていて、第一次デリング暗殺計画でもヴィムは息子が決闘に負けた、と聞いてもポカンとしていた。グエルのパイロットとしての腕を認めていたから、負けたということが即座に理解できなかったのだろう
まして「相手は誰だ、グラスレーか、ペイルか」と、負けた相手が同格の御三家であろうと思っているのも、グエルの腕を信頼しているからだし、ここでもまた、負けた息子に対し怒りの矛先を向けてはいない

確かにその後息子を殴っているが、その後のと合わせてどちらも「けじめ」である。暴力の是非は話の焦点ではないのでここでは問わない、やったことの「結果」がどうなるか、それを理解しろという説教だったということ

また、息子の勝利を信用できなかったから暗殺しようとした、と考える向きもあるようだが、その前の会議でヴィムがデリングを睨んでいた
あれは「そうだ、潰れろ」とパルネオ社を切り捨てたように、いつデリングの気まぐれでホルダー制度が覆るかわからない、それを危惧しての行動であり、息子への不信は多分関係ない

「結果のみが真実」の意味

決闘の口上にある「結果のみが真実」
その実汚い手を使ったり不利な条件を押し付けたり、一番ひどいのは「決闘の結果を無効とする」結果のみが真実、の真実を捻じ曲げる行為

が、それこそがまさに「結果のみが真実」だからだ、その真実に基づいて会社の経営が著しく左右される「結果」になる、ホルダーの地位もかかってない私闘に近い野良試合(決闘)ならヴィムも好きにさせただろう、最早グエルの、ホルダーとしての試合は「お前だけの決闘じゃないということが何故わからん」なのだ

「信じてほしければガンダムを潰せ」ヴィムの言い分はここに集約している
勝ち負けの問題じゃない、なんて個人の話じゃない、何としてでも勝つことが必要で、勝ちすら手段であり目標は「信頼の回復」なのである

息子「を」見ていないのではなく息子「も」見ていた

息子は「自分を見て認めてほしい」と望んだが、父は息子のことも見てたし気にもかけていた
しかし彼はCEOでもあり息子はその後継者だ、息子のために甘い顔をしては示しがつかないし、息子の負けのせいで従業員を路頭に迷わせれば、結果として息子の評判が落ちて因果が返ってくる

愛人の子ラウダを迎え入れたあの設定画からも、ヴィムが思うより情にあふれた人物であったことが垣間見えるものがある

在りし日のジェターク家

そこから考えても、多分従業員も息子たち同様に大事にしたいと考えていたからこそ、それをないがしろにするようなグエルの勝手は許されないと厳しくなっていったのではないか

後継者問題は難しく、昔から優れた人物が優れた後継者を育てられるとは限らずに、日本だと秀吉が天下を取ったのに後継者問題で失敗し、徳川の天下に代わったことが有名な例で挙げられる
それはそれ、これはこれと、後継者に相応しい人物かどうか、或いは跡取りをそれにふさわしく育てられるかどうか、情にほだされずそれをやろうとしていたヴィムは、見据えた先がグエルとは違ったのだ

とは言えヴィムがその他の面でも経営者や父親として優秀な面を見せられてなかったので、12話で愛情を見せるまでは、彼が彼なりに頑張って息子を何とかしようとしていた、なんて見方考え方には、それ相応の年になった息子を持つ父親でもないと思い至らないかもしれない

下手なりに場数を踏んできたヴィムの手腕

13話でラウダは、プラントクエタ襲撃の報告会でやり玉に挙げられ、ヴィムもグエルが決闘に負けたことについて4話で責められていた
ラウダは下手に言い訳をしたせいでやり込められ、ぐうの音も出なかったが、ヴィムは言い訳はせずのらりくらりとかわし、リモート会議をいいことにかなり一方的に回線を切っただけとは言え対応した

さしてうまくもないがそれなりに場数を踏んでその場をおさめる術を学んでいる。そう考えると、父を嫌って蔑んでいたように見えたラウダも、結局グエルと同じように父の良い所も悪い所も受け継がずに来てしまった

教えなかった、ともいえるが「俺の仕事を学べ」と子会社出向を言い渡したように「見て学べ」主義だったのかもしれない

どれだけ頼りなく見えて、どれだけ拙くて、どれだけ汚い手段だったとしても、ヴィムは父から受け継いだジェターク・ヘビーマシーナリーをちゃんと存続させていた、息子たちはその点は認め、学んだ上で否定すべきは否定すべきだったと思う

いや、考えてみればペイルはわからんけど、それ以外は御三家皆同じ、親のやり方を否定してるけど、ちゃんと学んでないわ

グエルは「スレッタ・マーキュリーに進めていない」と言ったが、進むべきは父との問題であったのかもしれない

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