ヨーロッパと旅について②

日本に戻ってきて仕事をはじめて数年たったあたりから、再びヨーロッパにはよく訪れるようになった。

出張もあるけど、だいたいは個人で行っている。2009年くらいからで、最初はパリだった。会社の仲のいい同僚、仕事でイギリスに出張できていた友人との3人。

ホテルは高いので、パリ在住日本人掲示板で一時帰国する人とかのアパート短期貸しを探した。まだAirbnbとかのサービスがない頃で、今はほんとうに環境が整っているな、と思う。

Mさんというパリ在住の日本人のおばあさんからアパートを10日間で借りた。100平米で3ベッドルーム。全部で10万円を3人で割る。パリの相場を考えると信じられない値段だ。

これは人にもよるのだけど、期間とかチケットとか、条件が整えばヨーロッパに限らず、海外に出てしまったほうが東京で滞在しているよりもトータルで安く済む場合が結構ある。ぼくの場合も少しずつ体験を重ねて、この場合はこうすれば安上がりだ、とかがなんとなく身についてきたように思う。

このMさんとはこのあと、ヨーロッパを訪れるたびにお世話になった。滞在中にトラブルに遭った際には、助けてくれ、お金まで工面してもらったこともある。
今はご無沙汰しているが、お元気でいることを心から願っている。

同僚とは仕事・趣味その他あらゆる点で喜びを共有できることが多く、とても助かっていた。
ぼくらはともに大して仕事も好きではないほうだったし、そういう感覚を共有しながら、仕事に対する姿勢を常に反射できる相手、というのは大切だ。

イギリスにいた友人は女の子なのだが、彼女もあらゆる点で価値を共有することができた。
まあ、それを「友だち」というのだ。

パリに来ることについては、やっぱり音楽の影響が大きい。ぼくたちはフレンチエレクトロが流行った世代でもあったし、その後もたくさんのアーティストが次々にでてきてくれて、面白かった。
もちろん映画や文学、歴史や哲学についてもめぐりめぐって影響は受けているんだと思う。詳しくはわからないけど。

お決まりの観光をして、メニルモンタン(東京でいうと中野のようなところだ)にあるLa MaroquinerieというライブハウスでGeneral Elektriksのライブを見た。
チケット予約など一切せずに、その場で買えるだろうとたかをくくっていたのだけど、実際にはとっくに売り切れで、落胆していたのだけど、そこのカフェで本人と会ったので、「日本から来た」旨を伝えると、何かの理由をつけてタダで入れてくれた。そういう精神と行動力がある。なのでレコードとかをいくつか買った。

滞在の途中、ぼくは友人たちをパリに残し、ドイツのベルリンに行った。
ベルリンでは事前にパリでネット予約していた、東側にあるホテルに泊まった。確か1泊2500円くらい。

この当時、ベルリンはやっぱり安かったんだと思う。実際街にいて、物価の安さにすごく驚いた記憶がある。なぜベルリンに行ったのかと言えば、これも音楽の影響があったと思う。

Whitest Boy Aliveの「1517」という曲のストリートライブがベルリンにあるめがね店で行われて、その動画がすごく良かった。
楽曲ももちろんだけど、映像から伝わってくる街の雰囲気が本当にいい感じに思えて、この場に行ってみたいと思った。
そのめがね店にも行ってみたけど、当たり前だけどただめがねを売っているだけだった。

数日滞在した後、パリに戻り同僚と乾杯をした。
彼はカフェで本を一冊読み終えたんだという。それもすごくいいな、と思った。

おわり。

今思い出しながら、こうして書いていても、やっぱりぼく自身は本当にうれしい気持ちになる。
そして自分の幸運に驚き、感謝するようになっている。

旅行がこの世でいちばんの贅沢なのだ、とむかし母がよく言っていた。
それはやっぱり振り返って何度でも楽しめるからだと思う。

いつか、こうして過去を振り返ったときに幸せな気持ちになれるようなことを、今自分はやっているだろうか。
そういうことをたまに言われたり、本やネットで目にしたりする。

でも毎日そんなことを考える必要はないし、それはちょっと大変だ。ほとんどの確率で落ち込む気がするし。

なので、日々考えることはやめて、3カ月とか半年とかのまとまりで、自分の生活を振り返っていくくらいがちょうどいいのではないか、と思う。

そして、「ちょっと足りてないな」と思ったら、旅行に行くのがいいのだと思う。

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