企画のはなし①

この本の企画は、今年の4月初旬頃にスタートしました。

トイレットペーパーが足りなくなって、「オーバーシュート」「ロックダウン」みたいな言葉が出回って、そして、ちょっと前にマスクが各世帯に2枚配られることが発表された、ちょうどそんな頃。
まさに、本当に何が何だかわからない状態だった時で(実はいまもそうだけど)、不安と焦りみたいなものが、(特に東京では)充満していたような気がします。

そのことをうけて、ぼくは日記を書き始めていたのですが、それとともに、ぼんやりとこの企画についても文章にしはじめていました。

まずは、信頼している親しい編集者と友人に少し話をしてみて、反応と助言をいただきました。彼女たちにとても背中を押してもらえた。どうもありがとう。

もちろんこれだけの作家と、そして翻訳もあるので、コストや作業量の面を考えると、出版社とか、もう少し大きな組織に相談することも考えたのですが(実際かなり迷いました)、この企画はあまりにぼくの個人の意向が強すぎること(それに、ぼくが人の言うことを聞いて作る気が全然なかった)、なにより友人たちが中心になっているので、パーソナルな関係の雰囲気を大事にしたかった、というのが一番大きいかもしれません。
なので、ハードルは高くても、今回は個人でやってみることにしました。

5月に入って、一部の作家さんたちにも相談し、ジュリアさん、タムさん、シルビアさん、香山さんサイドから前向きな言葉をいただいて、進行することを決めました。

実はまだ、発表できていない作家がいるのですが、まもなく、お知らせできるかと思います。
参加作家、デザイナーなど関係するクリエイターについては、また別の機会に何か詳しく書きたいと思います。

ひとついえるのは、この本は採算がとれるかどうか、という面での成功よりも、日本で認知度がないけどすばらしい作家とか、日本語の出版物がないとか、こんな場所にこんな漫画家が!とか、そういうディスカバリー感、みたいな要素も大切にして作りたいと思っています。

そうそう、この本の企画段階に当たって、3.11の東日本大震災を反映してつくられたこの本のイメージがかなり頭にありました。

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March Was Made of Yarn
REFLECTIONS ON THE JAPANESE EARTHQUAKE, TSUNAMI, AND NUCLEAR MELTDOWN
Edited by Elmer Luke and David Karashima
Published by Vintage

東日本大震災で起きたこと、津波、原発をテーマにした日本の小説家たちによる短編集で、2012年に刊行されました。
当時は英語の練習もかねて買って少しずつ読んでいたのですが、数年ぶりにひっぱりだしました。

この本の持っている、カジュアルで柔らかくも、少し背筋が伸びるような、そんな雰囲気の一片でもだせたらうれしいな、と思っています。


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