ヨーロッパと旅について①

20代の頃、東ヨーロッパに数カ月いたことがある。
その記憶の中に、たぶん最もつまらないと思うような町にいた日々があって、でもこのときの生活を振りかえるときには、いつもその町でのことを思い出している。
これについて考えをまとめたいな、と思っていたから書いてみます。

そこはブルガリアの「ブラゴエフグラード」というちょっと言いにくい名前の町だ。
検索すればすぐわかると思うけど、本当に何も特徴がない。
都会でも全然なくて、かといってど田舎でもなくて、大学が2つ、公園が1つくらいあるだけのとても地味な町。

ぼくは電車の乗り換えに失敗して、この町に泊まることになって、そのまま2週間くらいいた。
何しろ観光地もないし、町も閑散としているからやることがない。でもずっとここにいたのはたぶん、疲れていたんだと思う。

毎日近くのカフェ(全然おしゃれとかじゃない、ポテチと雑なパンが2、3個置いてあるようなカフェスタンドって感じのところ)で本を読んだり、大学の机を借りて、日記を添削したりしていて過ごしていた。
当時はiPhoneとかもなかったから、ネットもしてなかった。テレビをつけたら小泉総理がでてきてちょっと驚いた。そんな日々だ。

おそらく全行程の中で最も地味でさえない毎日。
でも何年かたってから、この時の数か月間を思い出して、もう一度行きたいな、と思うのはいつもこの町だ。
当時はそんなふうには考えていなかった。「せっかく遠くにいるのに何してるんだろう」と思っていた。

なぜこの町でのことが記憶に残っているかというと、たぶん、これは生活だったからなんだと思う。
ほんの数週間でも、毎日同じところに通って、同じような注文をして、日が暮れて帰る、という生活だったからだ。

知らず知らずのうちに、そういうふうに思えていたことがうれしい。

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