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蠍の毒がめぐるころ

その刃が私に向かったとき

私はあなたにすべてを捧げた

あなたの顔が見えなかったのは

涙のせいだけだったのだろうか

もしかしたら私は

あなたのことを見ていなかったのかもしれない

すべてを捧げたつもりが

いのちはまだあった

あのとき願ったのは

あなたの心に残り続けること

罪悪感であなたを縛り続けること

そして私は呪いもかけた

私以外の女性を愛さぬように

私の愛は届かなかったから

他の誰かに殺されてしまうのなら

僕のこの手で終わりにしようと思った

僕をみてくれない君への

愛を受けとってくれない君への

最期のプレゼント

これなら君も気づいてくれるだろうか

僕が愛しているということを

心だけじゃなく

僕はいのちも奪えなかった

だけれど君の大切なものを

声を 奪ってしまった

もうあの声で

僕の名前を呼ぶことはない

姿を消したあなたは

今何を想っているのだろう

目の前にいたときに

もっとあなたの声を聴けばよかった

私の想いを言葉にすればよかった

あの手にもっと

触れておけばよかった

********

君の声を奪った手が

2度と君に触れないように

誰も知らない場所へ

遠くに行くことしかできなかった

恨まれてもなお

君を想いながら生きることを選んだ

死んでしまったら

忘れてしまうのだろうか

あなたを

君を

この想いを

もしもいつか巡り会えたなら

私は言葉で伝えよう

僕はこの手で伝えよう

それまではさようなら

その手が紡ぐ音が

記憶を呼び覚ます

かたく閉じた扉のカギを開く

喉が疼く

私がかけた呪いに絶望する

あなたをさした蠍の毒は

時を越えて私のもとにめぐる

私はあなたを見つけてしまった

私はあのときのあなたの愛に気づいてしまった

だけど今は愛してくれない

私が呪いをかけたから

あのとき

私の愛は届いてなかった

あなたの愛にも気づいてなかった

私は私を愛していなかったから

あなたは私という世界を移す鏡だった

愛されない私を創りだしていたのは私 

それがあなたの顔と愛を見えなくしていた

だけれど

時を越えて出逢えたから

私は愛を言葉にして伝えよう

まずは私

そして私である世界に

今はあるこの声で

私の愛を伝えよう

私に

世界に

宇宙に

いつかそれが

あなたに届くといいな

私からだと気づかなくても

あなたに愛が届きますように

愛しいあの手を包み込むように

聴こえなくても

名前を呼ぶよ

この声で

あなたの名前を

あのときの毒が私にめぐるころ

あなたを縛りつけた罪悪感は解ける

私はその毒を受け入れたから

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