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いのちびとメルマガ(89号)

良いことをする空しさに、くじけない
(いのちびと2020.1号「いのちの授業15年」より)
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「いのちの授業」を始めるとき、「いのちの言葉」を多くの方からいただいた。

 鍵山秀三郎氏を訪ねると、私の話をじっと聞かれて言われた。
「鈴木さん、良いことをする空しさにくじけないでください」。
 私は意味が分からなかった。「良いことを百万回しても世の中は変わらない。始めはみんなが持ち上げてくれるが、直ぐに見向きもされなくなる。その空しさに、みんな止めてしまう。一途に十年続けてください、それが道になります」。何十年も、一人で掃除道を続けた鍵山氏の深い言葉だった。

 ある日、講師料について問い合わせがあった。
その人が「鈴木さんは、亡くなった娘さんのことを飯の種にしているんですね」と言った。言葉を失った。
 気落ちする私に友人が言った。「その通りです。だからいのちをかけてやっていますと、言ってやればいい!」。友人は中小企業の社長だった。自分が全てを背負い、歯を食いしばり生きて働いていた。私には、泥水をすすってもやり抜くとの覚悟ができていなかった。  

 ある中学校で「いのちの授業」をした。
 校長先生は、毎朝、ある不登校生徒の自宅を「おはよう、今日は行くか」と訪れていた。生徒はいつも起きてこなかった。時々、校長室に来るようになった。卒業前、「いのちの授業」の録画ビデオを生徒に渡した。「一回だけでいいから観てほしい」と。
 
 翌朝、自宅に行くと生徒が初めて出てきた。「先生、卒業式にいくから」。卒業式の日、校長室で卒業証書と録画ビデオを渡した。「ありがとうございます。大切にします」と生徒は言った。
「自宅に行くのを止めようと何度も思った。でも信じて良かった。今年で定年。教師冥利です」。校長先生は電話で話してくれた。

 空しさにくじけないために、覚悟すること、信じることを私は心に刻んだ。

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