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いのちびとメルマガ(102号)

『親の気持ち』
(いのちびと2020.7号より)

 Tさんからのメッセージです。
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 僕は元気な産声をあげて生まれた。しかし、二歳のときに身体に障がいがあると宣告され車椅子で生活している。両親は、一度はその現実に絶望しながらも、今日まで立派に育ててくれた。

 二十九年の月日が経ち、僕はパパになった。「オギャー!オギャー!」、元気な産声が聞こえたとき、僕は妻の横で号泣していた。妻が陣痛に耐えて命がけで出産しているときほど辛いものはなかった。大切な人が苦しんでいることほど、辛いことはないんだ。

 僕は何度も入院をした。本当に辛かったのは両親だ。「なんでこんな足で生きなきゃいけないんだ!」と両親へやり場の無い怒りをぶつけた。「足を取り替えることが出来るなら…替えてあげたいよ。…でもごめんね、それは父さんも母さんも出来ないんだ…」。こんなやりとりは何十回としてしまった。

 生まれてすぐに、先生から「ちょっと呼吸が弱くて…。大きな病院に入院させましょう」と告げられた。頭が真っ白になった。僕が病室を出るとそこにいたのは、担架に乗せられ酸素マスクをつけて救急車へ向かう我が子だった。

「障がいがあったらどうしよう?」。障がいがありながらも生き生きと活動している君なら、息子に障がいがあったっていいじゃないか!そう思う方もいるだろう。僕の正直な気持ちは、「出来れば無い方がいい」と理屈ではなくそう思ってしまう。それくらい僕らの二十九年間は簡単じゃ無かった。

 息子は、幸い命には別状は無かった。我が子が入院するのは、こんなに辛いことなんだってパパになってはじめてわかった。無事に退院した息子へのメッセージです。

「元気に泣きまくって、パパとママを幸せな睡眠不足に追いやっている君へ。もしかしたら病気や事故で障がい者になる未来が来るかも知れない。もしそうなっても安心してほしい。
 パパは二十九年もかかったけど、障がいのある身体と共に生きて、唯一無二の生き方に個性を宿らせることがどうやら出来たらしい。これはパパと関わってくれた全ての人たちのおかげなんだ。
 君が何者になろうと本気で愛すから、僕がおじいちゃん、おばあちゃんから教わったように、君の生き方に個性を宿してください。命を大切に」

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