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いのちびとメルマガ(87号)

九九回裏切られてもいい、百回目を信じればいい
(いのちびと2019.11号より)
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Hさんの初赴任地は、田舎の小さな小学校だった。
「毎朝、下宿に子どもたちが迎えに来てくれて、一緒に登校、遊び、勉強する毎日。子どもの身近な存在であることを大切にしていました」
 
ある日、朗読資料として、坂村真民の詩「二度とない人生だから」を配った。翌日、ある女の子が「全部覚えてきた」と言った。
朗読させると、本当だった。
どうして覚えたのか?と聞くと、「だって、この詩は素晴らしいもの」と答えた。
「大人が決めつけてはいけない、子どもには無限の可能性があると教えてもらいました」

小学六年生の教え子たちが万引きをした。
「自分はしていない」と子どもたちは言い張った。
警察官が問い詰めると、「本当のことを言うか」と仲間同士で合図をして万引きしたことを認めた。
「一瞬、裏切られたと思いました。でも、九九回裏切られても百回目を信じればいい。教師としての信念にしました」

県の教育事務所長のとき、A市で生徒が自殺した。
急遽、A市の教育次長として、大混乱する教育行政を立て直した。ご遺族との心の和解には時間と誠意が必要だった。

教育長に就任したとき、生徒の命日にご遺族の家を訪問した。
マスコミの前で二時間、ただ話しを聴いた。
翌年、訪問したときに「これだけ苦しまれているご両親の願いは何でしょうか」と尋ねた。
「市長に仏壇で手を合わせてほしい…」と話した。
ご遺族の言葉を信じて、直ぐに市長に直談判。十日後、市長とともに手を合わせて、和解への道を開いた。

「私は二回、流産で子どもを亡くしました。いのちの尊厳を考える、どう継承するか問いかけ続けました」
命日を「いのちの日」として、市内全学校で黙とうといのちの教育をすることを宣言した。
「ご遺族が生徒に切々とはお話ししてくれました。いのち=心の教育こそを続けなければいけません」

その後、全国に知られる教育長となった。
「『教師としては立派な人(主人としては?)』と妻に言われます(笑い)。与えられた時間=いのちを大切に、学び・楽しみ・恩返していきます」

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